逃げられると思うなよ ▼パンクハザード(連載IF)リク パンクハザードで同盟を組んだローと、錦えもんとモモの助を同乗させ、麦わらの一味は新たなる島ドレスローザを目指す。 「トラファルガーさんの部屋どうするの?」 「それなのよねー……流石にあいつらの部屋には入れられないし……」 「空き部屋があればいいけれど」 現在女子三人が話しているのは、トラファルガー達が寝食を共にする部屋についてだった。モモの助はヒノデ達と同じ部屋だからいいとして、錦えもんの方もサンジと仲が良いので同じ部屋でも問題は無いのだが、問題はローの方だった。 数時間一緒に居ただけだが、ローのテンションは麦わらの一味のメンバーとは大分異なる。ましてや一応同盟先の船長なので雑には扱えない。 男性陣の方はそんなこと気にしていないのか、むしろ気にもしないのか、各々好き勝手にやっているが、女性陣は違う。 三人が意見を出し合い、ローについて話し合っていると、ああ!! と、ナミが大声を上げる。 「確かヒノデの鍛冶場の先が空き部屋だったわよね。荷物どかして掃除すれば寝れるんじゃない?」 「確かにあったわね。そこで良いんじゃないかしら?」 「そうですね、あそこなら広いし、荷物もそんなに置いてないし……」 サニー号になった後、ヒノデ以外にも自分の特技や役割を全うできる部屋が幾つか増えたのだ。その中になにかあった時の為にと、空き部屋があったのだが、今がその部屋の使い時だ。 「それじゃあ、私掃除してきます! ナミとロビンさんは休んでてください、ロビンさんは怪我をしていますし、ナミは航路見てないとダメでしょ? 私今特にやる事ないし、掃除してきますよ」 「良いの? 荷物とかあるわよ?」 「大丈夫! 確かそんなに重い荷物無かったと思うし、一人でも運べるよ」 「じゃあ、お言葉に甘えて休ませてもらうわね、もし何か重い物があったら一緒に運ぶわ」 「ありがとうございます。その時はお願いします!」 ナミとロビンにそう声をかけると、ヒノデは掃除用具入れからバケツを二個と雑巾、箒を持って、空き部屋に急いだ。 空き部屋に入ると、そこには数個段ボールがあるだけで、想像していたより散らかってはいなかった。ヒノデは壁に箒を立てかけ、雑巾と雑巾を濯ぐ用の水と、雑巾がけを終わった後手を洗う水が入っているバケツを床に置くと、空き部屋に向かう前に女部屋に寄り、持ってきたエプロンを着けマスクをすると、よし! と言うガッツポーズと共に、段ボールを運び始める。 段ボールは軽い物しか入っていなかったのか、ヒノデでも簡単に持ち運びができ、ローが滞在するまでの間荷物は自分の鍛冶場に置いてい置こうと、自分の鍛冶場へと運び出した。 「あとは……。床の掃除しないと……」 壁に立てかけていた箒を手にすると、もう一息と自分位に言い聞かせ、床を掃きはじめる。舞う埃に時折咳をしながらも、床を掃き終えると、次はバケツの水で絞った雑巾をかけ始める。 木目に合わせて、念入りに掃除をしていてドアから入ってきた人物に気付くことは出来なかった。 「何してんだ」 「??!!!」 突然背後から聞こえてきた第三者の声に、悲鳴を上げそうになるが、背後の人物に口を塞がれて、それは叶わなかった。 「おれだ。いちいち大声を上げようとするな」 「プハッ! トラファルガーさん!? 驚かせないで下さい! 幽霊が入って来たかと……」 「誰が幽霊だ。気配に気づかないお前が悪い」 ローが手を離してくれたことで声が出せるようになって、一言も声をかけずに突然部屋に入ってきたローに抗議するが、一蹴されてしまう。 こういう人の抗議を聞かないのは、船長特有のものなのだろうか、一蹴されてしまった抗議に、これ以上言っても口では勝つことは出来ないだろうと悟ったのか、掃除の続きを始める。 その間ローは部屋を見回している。流石に自分が寝食を共にする部屋だから気になったのだろう。 その間にもヒノデはせっせと掃除を続けている。 元々自分より目線は遥かに低いが、それがさらに低くなって、地べたを這うように掃除しているのを見て怪しげな笑みを浮かべる。勿論ローに背を向けた形で雑巾をかけているヒノデには、ローがどんな表情をしているかなど分かるはずもなく、掃除を続けるだけである。 丁度壁際まで雑巾をかけ終え、マスクを外し、雑巾用のバケツで雑巾の汚れを洗い流し、手洗い用の水で綺麗に手を洗って、いざ立ち上がろうとした時、 ドンッと言う音共に、自分の顔の両横に自分を挟むようにしてローの両手が壁に置かれる。 「男と、ましてや他の船の船長と二人きりだって言うのに、随分無防備だな……ヒノデ」 後ろから突然吐息を感じるほど耳元の近くで話しかけられ、ヒノデは身震いすると、後ろを勢いよく振り返る。振り返った先に居たのは、鼻と鼻がくっ付きそうなほど近くにある怪しい笑みを浮かべたローの顔だった。しかも今、ローはヒノデと自分の名前を言わなかったか? 普段は『白刃屋』と呼ぶのに――、 色々な意味で今までとは違うローの行動と言動に、すぐに距離を取ろうと後ずさったが、後ろの壁のせいで数センチしか離れられず、あまり意味は成さなかった。その間にもヒノデの顔の横に両手をついたローは近づいてくる。 少しでも距離を取ろうと、真っ赤な顔のままローの胸を押すが、やはりそれも何の意味も成さない。 「あ、あの……!! 離れて、離れてください! 冗談が過ぎますよ……!!」 「冗談でこんなことすると思うのか?」 「ヒャッ、ヤ……!!」 先程よりも近く、むしろ耳に唇そのものをつけて囁きかけるローに、上ずった声が無意識に出てしまい、今まで自分でも聞いたことの無い声に、恥ずかしさから両手で口を塞ぎ、早くこの場が過ぎる事を願い両目をきつく閉じる。 それが余計にローの加虐心を煽るのか、尚も耳元に唇をつけて話しつづける。わざとらしく吐息交じりで話しているのが更に腹立たしい。 「男と二人きりになって何もされないなんてよく思えるな。そんなんじゃすぐに――――」 喰われるぞ。 そう言いながら、ガリッとあろうことかヒノデの耳を甘噛みしたのである。 流石にこれは予想外だったのか、いや、この状況自体予想外なのだが、噛まれた耳を両手で押さえながら、ローを振り切るように勢いよく立ち上がる。 が、立ち上がったヒノデに対して驚くこともせず、床に座ったままヒノデを見つめる。 「耳の感度、随分良いな。喋るたび体ビクついてたぞ?」 トントンと自分の耳を叩きながら、笑みを漏らすローに、ヒノデはワナワナと小刻みに体を震わせると、ローに背を向け一気に扉に向かって走り出すが、気が動転していたのか、扉が閉まっている事に気付かないで勢いよく顔面から扉に激突してしまう。 その様子に、ローはフフッと笑い声を漏らす。 「気が動転するほど良かったか? 白刃屋」 その言葉に、ぶつけた額を涙目で押さえながら、ヒノデは今度こそ扉を開け、閉める間際にローに捨て台詞を吐く。 「次こんな事したら……誰かに言いつけますからね!!」 そう言いながら、扉が壊れてしまいそうなほどの勢いで閉める。 ローはヒノデの最後の捨て台詞に、誰かって誰に言いつけるんだと、内心で毒づくと、先程の自分の両腕の間に居たヒノデを思い出す。 自分が一言一言耳元で話すたびに体を震わせ、両目をきつく閉じ、小さな体で必死に何かに耐えてる姿。男の加虐心を煽るには十分だ。 ローは何かを押さえつけるように片手で口元の笑みを隠す。 「あれならまだ、手に入れられる隙は山ほどあるなヒノデ」 まだ、自分の手中に収めることが可能な場所に居る少女に、ローは口の端を上げたのだった。 END TOP |