新しい玩具

▼パンクハザード(連載IF)リク


 電伝虫の緊急信号を受け、パンクハザードに向かった麦わらの一味のヒノデは、今現在、七武海となったトラファルガー・ローに手首を掴まれ強制的にどこかに連行されていた。

「あ、あの……お久しぶりです……」
「…………」
(無視されちゃった……)

 無視されたことにショックを受けつつも、ナミ達の安否が気になる。確かさっき自分達はドーム状のサークルに入れられたはずだ。その瞬間いつの間にかヒノデはローの隣に移っており、ナミ達と離れていた。
 確か、先程の入り口の外には、海軍のスモーカー達が居たはずだ。皆は無事だろうか、特にナミは水着姿と言ってもいいほど、薄着だ。現在ヒノデは室内にいるから良いが、外の季節は冬だった。寒さに震えていないだろうか? と考えるが、今は一人きりになってしまった自分の身の安全を確保することの方が大事だろう。
 ヒノデを逃がさないとでも言うように手首を掴みながら目の前を歩くローに、先程無視されてしまったが、意を決し再び話しかける。

「トラファルガーさんは七武海になったんですね……」
「……」
「あ、あの……」
「黙れ、シーザーに見つかる」
「シーザー……?」
「話すなって言ったよな?」
「す、すいません……」

 こちらを向いてはいないが、声だけでイラついているのが分かる。これ以上話しかけるのは、ヒノデは自分にとっても有益にはならないだろうと判断すると、ローに手首を引かれ、黙ってその後を付いて行く。
 数分様々な機会が置かれている廊下を歩いていると、鈍重な扉の前に着く。

「入れ」
「え……」
「ちっ……」

 一回目の言葉で部屋に入らなかったヒノデにイラついたのか、ローは掴んでいるヒノデの手首を自分の方に引き、無理矢理部屋の中に放り込む。
 いきなり手首を引かれた痛みと共に、肩が外れそうなほどの痛みが走るが、いつまでも肩の痛みに気を取られている場合ではなかった。次に来るのは、固い床に体を強打する痛みだと思っていたが、ヒノデを襲ったのは、ふかふかのソファー特有の柔らかさだった。
 どうやら、ソファーに倒れるのを想定して部屋に投げ飛ばしたらしい。
 すぐに仰向けに寝そべったままのソファーから起き上がろうとしたヒノデだったが、それは叶わなかった。

「今すぐ答えろ、なんでお前らがここに居る」

 ローがソファーに仰向けで倒れているヒノデの上に覆いかぶさる形で、ヒノデの首元に右手をかけてきたのだ。いつでもお前を殺せると言う意思表示だろう。
 流石にこの状況でときめくなどという、斜め上の思考回路をヒノデは持ち合わせていない。

「答えろ、何が目的でここ、パンクハザードに来た」
「あ、あの……それは」

 流石に首元に手をかけられながら話すのは、緊張の度合いが違う。言葉一つでも間違えれば、殺されてしまうかもしれないこの状況に、声が震える。

「で、電伝虫にきんきゅ、緊急信号が入って……それで、こ、ここに……」
「緊急信号?」
「はい……。さむ、らいに斬られたって……」
「あいつか……」

 心当たりがあるのか、ローは顔を顰めると、ヒノデの首元から手を離すが、いまだヒノデに覆いかぶさったままである。
 一応は、命の危険がなくなったことに対して、胸をなで下ろすが、所謂押し倒されている状況と言うのは、頂けない。自分の顔が赤くなっていくのを感じる。

「あ、あの……出来れば、退いて頂きたいんですが……」
「……なんでだ?」
「いえ、その……恥ずかしいので……」

 その言葉に、ローは一瞬何かを考え込む仕草をすると、うっすら口元に笑みを浮かべる。

「恥ずかしい、ね……」

 すると、何を考えたのか、ヒノデの首元に顔をうずめると、グイッと服の襟部分を片手ではだけさせると、

「イッ……!!! イタイ、イタイ、イタイです! トラファルガーさん……!!!」

 首筋に思いっきり噛み付いたのである。
 自分の首筋に噛み付いているローを引き剥がそうと、痛みに悶えながら、ローの肩に手をかけ、引き剥がそうとするが、いつの間にかローは、ヒノデの後頭部と腰に手を回し、逃げられない様にしていた。
 その上、いくらローが細身とはいえ、体格差はかなりのものだ、力で引きはがすことは出来ない。じんわりと広がる首筋の痛みに、恥ずかしさも相まって、目に涙が溜まり始める。
 数秒して、満足したのか、ヒノデの首元から顔を離すと、満足気に笑みを浮かべる。

「今回はこれでおれの別荘に無断で入った事は許してやる」

 そう言うと、ローはヒノデの体の上から体を離して立ち上がる。ヒノデもローに続くようにソファーから体を起こすと、顔を真っ赤にしたまま、急いではだけた服の襟元を直す。
 ローは未だにソファーの上に座って、顔を真っ赤にしながら自分を涙目で睨みつける、ヒノデに視線を向ける。
 ヒノデは恥ずかしさからか、それとも怒りからか、震える手で襟元を握る。その時手の隙間から見えた、白い肌に残った自分の歯形を見て、ローは口元に笑みを浮かべる。

「シーザーはお前に興味を持ってる。おれが合図するまでここの部屋を出るな。分かったな」
「え、ちょ、あの……!!」
「質問は受けつけねェ、お前をシーザーの玩具にするのは気に入らねェだけだ」

 そう言うと、ローは未だに顔を真っ赤にして戸惑っているヒノデを置いて、部屋を出て行った。
 廊下を進みながらローは先程の事を考える。
 怯えたり、真っ赤になったり、吃驚したり、怒ったり、コロコロ変わる表情。そして自分が付けた噛み痕、楽しくてたまらない。

「シーザーに渡す気もねェが、麦わら屋に返す気もねェよ」

 そう呟きながら笑みを浮かべるローの姿は、新しい玩具を手に入れた子供の様だった。


END


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