GAME ▼ロー:二年間の修行(連載IF)リク シャボンディ諸島にて、王下七武海の一人『バーソロミュー・クマ』の能力によって散り散りに飛ばされてしまったヒノデ達、麦わらの一味は、麦わらの一味の船長ルフィの新聞を使った伝言によって、二年後にシャボンディ諸島で逢おうと言う約束の元、それぞれが、その二年と言う間今まで以上に、力をつけようと、修行に身を投じていた。 勿論それは、ヒノデも同じわけで、ヒノデも自分に合った師匠と島の元、修行に励んでいた。 (疲れた……) 額に滲む汗を気にする暇もなく、ヒノデは足首まで伸びっぱなしの草原に、背中から寝ころんだ。 ヒノデに与えられた修行内容は、まず体力作りだった。今まで平穏な18年間を過ごしてきたヒノデの体力が、麦わらの一味より劣ってしまうのは仕方のないことだろう、そもそもヒノデの運動神経は元の世界から可もなく不可もなくなので、この世界であれば下手したらそこらの一般人より運動面では劣っているかもしれない。能力が無ければ、今頃命を落としていただろう。 そんなヒノデに課せられたのが、体力向上だった。そしてその修行内容こそが、三か月近くひたすら毎日筋トレをすると言うものだった。 そして現在、今日のノルマの距離を走り終え、草原に横たわっていると言う訳である。 すでに体は悲鳴を上げているが、シャボンディで起こったことを思い返せば、立ち止まっている暇などない。 極度の激しい運動をした体に鞭を打ち、次のノルマに移ろうとした時、海岸の方から自分を呼ぶ声が聞こえてくる。 その声に、ヒノデは急い滝のように流れる汗を拭くと、海岸まで再び走り出した。 海岸につくと、そこに居たのは、海賊の象徴、髑髏マークが描かれた黄色い潜水艦だった。 そして、その潜水艦の近くで海岸に立っている人物は、 「トラファルガーさん?! に、ベポちゃん!!」 「久しぶりヒノデ!!」 思わぬ人物との再会に、ヒノデを戸惑いと嬉しさが一気に襲う。 ロー達の傍に駆け寄ると、他の船員にも、ヒノデは挨拶すると、目の前の人物ローに話しかける。 「新世界に入ったんじゃ……」 「今から新世界に入る」 「あ、そうなんですか」 すでに『新世界』に入っていたと思っていたローが未だに、偉大なる航路の前半の海に居る事は、意外だったが、何か考えがあっての行動なのかもしれない、とヒノデは考える。 当のローはと言うと、今さっき走ってきたばかりで、前髪が持ち上がり、額が露わになっているヒノデを見る。額にはじんわり汗が滲んでいた。 どういう意図かは表情からは判断できないが、おもむろにヒノデの額に手を伸ばすと、じんわりと滲んでいた汗をその指で拭った。 「汗ぐらい拭いて来い」 「す、すいません……!!」 ローの言葉にヒノデは急いで額の汗を手の甲で拭うと、走ってきたことで持ち上がってしまった前髪を整え直す。 「すいません、汚い物触らせてしまって……」 「別に、おれが勝手にやったことだ。いちいち謝るな」 「えっと、その、ありがとうございます?」 「なんで疑問形なんだよ」 意外にも会話が成り立っている事に驚きつつも、ヒノデは最大な疑問を投げかけた。 「あ、あの、なんでトラファルガーさんはここに……?」 ヒノデの質問に、ローはなぜか顔を顰めると、ヒノデから視線を外し明後日の方向を見る。 「――これから新世界に入る。その前にお前のの間抜け面でも見て行こうかと思ってな」 「ま、間抜け面ですか……」 間抜け面と言う言葉に、ヒノデがショックを受け、自分の顔の輪郭を両手で覆っている時、ハートの海賊団の一味は、一様にニヤニヤと何やら笑みを浮かべていた。 その理由をローも知っているのか、ちっと舌打ちし、ヒノデに視線を向けた時、若干俯いているせいかポニーテールになっているヒノデの後頭部が見えた。 だが、その後頭部でポニーテールを形作っている緑色の髪紐を見て怪訝そうに眉間に皺を寄せる。 『緑色』それは麦わらの一味の船長ルフィに次いで、億越えルーキーとして数えられている『海賊狩りのゾロ』を思わせる色だった。 別に何色の髪紐だろうと、普段なら気にしない、だが、この緑色の髪紐だけはどうしても許せなかった。理由は、ロー自身にも分からなかったが、未だに間抜け面と言われてショックを受けているヒノデの二の腕を力任せに自分の方に引き寄せる。 勿論、ヒノデに足を踏ん張る余裕などなく、ローの胸の中にすっぽり納まってしまう。事故とは言え、抱き着いてしまっている状況に、すぐに離れようとするが、ローがそれを許さなかった。 自分から離れようとするヒノデの腰に左腕を回すと、空いている右手でヒノデが縛っている緑色の髪紐を解いたのである。 ローはヒノデの腰に左腕を回したまま、自分のポケットを探り、藍色の髪紐を取り出すと口にくわえ、腰に回して左手と、自由になっている右手を、ヒノデの後頭部に持っていく。 勿論後頭部に両手が回っているので、顔は体以上にローの体に密着していると言うより、ほぼローの胸に顔を埋めている状態だ。 「ト、ト、ト、トラファルガーさん!! はな、離して、離してくださいっ……!!!」 思いもよらない事態に、顔から湯気が出てしまうのではないかと言うくらい真っ赤にさせ、空いている両手でローの胸を押すが、ビクともしない。 ましてや、周りにはこの状況を見ているであろう、ハートの海賊団の船員が居る。ヒノデにとっては公開処刑をされている気分だ。だが、当のローは一切気にしていないのか、ヒノデの後頭部に持っていった両手で、何回もヒノデの髪を手櫛ですくと、高い位置に一本にまとめ始めた。 「あ、あ、あの!! トラファルガーさん!!」 「うるせぇ。黙れ。動くな。次動いたらバラすぞ」 「え、でも、あの……」 脅迫と言ってもいい言葉に、恐怖を覚えるが、他の海賊団……ましてや船長に抱きしめられているなど、異常な光景と言ってもいい。 だが、目の前のトラファルガーの言葉はおそらく本気だろう、冗談を言う性格にも見えない。羞恥心と恐怖に苛まれながら、仕方なくローがしている事が終わるまで、意味があるのかは分からないが、なるべくローに体を密着させない様に、両手で胸の前をガードしながら大人しく待っていると、頭上から、もういいぞ。と言う言葉と同時に後頭部から離された両手に、ヒノデは普段では考えられないほどの速さで、ローから離れる。 その顔は真っ赤に染め上がり、まるでトマトのようである。 ローはその表情に、満足気に笑みを浮かべると、船に向かって踵を返す。 「おれ達はもう行く。せいぜい死なないようにな。行くぞお前ら」 「アイアイキャプテン!! じゃあねヒノデ〜!!」 「え、ま、待って下さいトラファルガーさん!!」 何の説明もなしに自分の元から居なくなってしまおうとするローに、ヒノデは急いで駆け寄ると、ローの腕を掴む。 「えっと、か、髪紐返してください……」 「却下だ。新しい髪紐やったんだいらねェだろ」 「でも……」 「渡さねェ、それを使え。もし、それでも取り返したかったら新世界に取り返しに来い。そしたら返してやる」 「それって……」 ポカンとするヒノデに笑みを浮かべると、呆気にとられるヒノデを置いて、一人先に船に乗り込む。 ベポは呆気にとられているヒノデに近づくと、耳打ちする。 「また逢おうってことだと思うよ」 「やっぱり……」 それは、またど新世界で逢おうと言う、ローなりの不器用な約束だった。いくら二年後にシャボンディ諸島で逢おうと言っても、本当に全員集まれるかは定かではない。 そんな自分達が再び『麦わらの一味』として新世界に来るのを信じているだろうローの言葉に、ヒノデは恥ずかしげに笑みを浮かべると、先に潜水艦に乗ったローに声を張り上げる。 「必ず取り返しに行きます! 覚悟していて下さいね!!」 笑顔で自分にそう言うヒノデに、満足気に微かに口元に笑みを浮かべると、ローは潜水艦の内部に入って行った。他のクルーも口々にヒノデに別れの挨拶をして船に乗り込んだのだった。 「でも、船長その髪紐どうするんですか?」 船に乗り込んだクルーは先程ヒノデから奪った髪紐を無言で見るローに話しかける。ローはその言葉に不敵な笑みを浮かべると、こう答えた。 「ちゃんと返すつもりだ。ロロノア屋の目の前でな」 その言葉に、どれだけの意味が込められていたかは分からないが、ローの笑みから察するに、良い意味ではないだろう。 これから始まるであろう自分達の船長のゲームに、クルー達も不敵な笑みを浮かべる。 ターゲットは白刃のヒノデ。 自分達の船長に落ちるか、それとも海賊狩りに落ちるか、どちらの元に落ちるかを競うゲームの始まりの瞬間だった。 END TOP |