大好きです

▼もしもサンジ寄りだったら…(連載IF)リク


 海賊になって数か月。
 サンジの彼女になって数日。
 ヒノデはキッチンに繋がる扉の前で、深呼吸をしていた。
 数日前に、麦わらの一味のコック、サンジと恋人になったはいいが、彼氏いない歴=年齢のヒノデは逆に恋人という事を意識しすぎて、サンジの事を避け始めていた。
 そんなヒノデと、避けられてショックを受けているサンジを見て、ナミとロビンがどうしたものかと考え、ヒノデにキッチンに行って来いと指示と言う名の、命令をしたのだった。
 だが、付き合い始めてからと言うもの、サンジを避けまくっていたヒノデからすれば、若干と言うより、だいぶ気まずい物がある。どうするべきかと、扉の前で右往左往していると、ヒノデが扉を開ける間に、内側から開けられてしまう。
 勿論中から姿を現したのは、サンジである。

「サ、サンジさん……」
「入るまで待ってようと思ったんだけど、なかなか入ってこないから」
「す、すみません……」
「いや、いいよ。中入る?」

 優しい声色で問いかけるサンジに、静かに頷くと、キッチンの中に入る。
 キッチンの中に入ると、昼食の準備をしていたのか、美味しそうな匂いが鼻孔をかすめる。椅子に座ろうかどうか迷っているヒノデを促す様に、サンジが椅子を引く。その手際の良さは流石サンジと言うべきだろう。
 サンジに促されるまま椅子に腰かけたヒノデの前に、すぐさま紅茶が注がれたティーカップが置かれる。

「あ、ありがとうございます」
「どういたしまして」

 目の前に置かれたティーカップに両手を添えると、口元に持っていく。
 その時ふと目の前を見ると、いつのまに座っていたのかサンジがテーブルに置いた片肘に顔を乗せ、ヒノデの方を向いていた。
 穏やかな瞳で自分を見るサンジに、ヒノデの頬が一気に赤く染まり始める。それをごまかすように、一気に紅茶を飲み干そうとしたが、勿論いれたての紅茶を冷ましもせず、一気に流し込めば、

「アツッ……!!!」
「ヒノデちゃん!!?」

 ティーカップを机の上に置いて、両手で口元を押さえるヒノデにサンジはすぐさま近づくと、コップに冷たい水を入れて、ヒノデに渡す。

「す、すみません……」
「いいよ。アイスティーの方が良かったね」

 苦笑いを浮かべて自分にそう問いかけるサンジに申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
 そんなヒノデの心情に気付いたのか、苦笑いを浮かべたまま再びキッチンの方に向い、未だに沈んでいるヒノデの元に近づくと、椅子に座っているヒノデに視線を合わせるように座り込む。

「ヒノデちゃん口開けて」
「へ?」

 サンジに促され、俯いていた顔を上げると、間抜けに開けられた口に氷が入れられる。
 手に持っていたせいか、若干溶けていた氷の滴がヒノデの唇についているのを見て、サンジが指先で拭う。サンジからしたら、ヒノデの唇に触れるチャンスを得て、内心歓喜しているが、やられた方、つまりヒノデからしたらたまったものではない。
 先程とは違う意味で両手で口元を押さえ、顔を真っ赤にすると、オロオロと顔を左右に彷徨わせる。
 だが、久しぶりに手に入れた二人きりの時間、ましてや付き合いだしてからと言うもの、なぜか付き合う前より一緒に居る時間どころか、視線すら合わせなくなってしまったヒノデに、痺れを切らすのは仕方のないことだったのかもしれない。
 サンジがヒノデの口元を隠している両手を優しくどかすと、自分の両手でヒノデの頬を包み込む。

「やっとおれの事見てくれたね」
「あ、えと……」
「おれの事ずっと避けてたみたいだから」
「あの、それは……違うんです!」

 サンジに両手で頬を包まれているのと、視線を外すことを許さないとでも言うように視線を自分から外さないサンジに、視線を逸らすことすらできない。
 だが、ここで逃げてしまったら、また同じことの繰り返しである。せっかくナミやロビンが作ってくれたチャンスだ。
 それに、好きな人と両想いになり、恋人同士になれたのだ。ヒノデにだってサンジと恋人らしい時間を過ごしたいとも思っている。
 意を決したように膝の上で両手を握り締めると、口を開く。

「違うんです。その、男の人と両想いになったり、付き合うのは初めてで、どうしていいか分からないんです……。でも、サンジさんの事はちゃんと……えっと」
「ちゃんと?」

 ニコニコと笑みを浮かべているサンジは、明らかに楽しんでいるように見える。
 その姿に、ヒノデは逃げられないことを知り、恥ずかしげに眉を八の字に下げるが、小さいながらもしっかりと想いを告げる。

「ちゃんと、その、好き……ですから……」

 その言葉を聞いたサンジは、立ち上がってヒノデを抱きしめる。
 勿論いきなり抱き着かれたヒノデは、顔から湯気が出るのではないかと言うくらい頬を真っ赤に染め上げる。だが、サンジのヒノデを抱きしめる力が緩む気配はない。

「良かった、やっぱり付き合えないなんて言われたらどうしようかと……」
「サンジさん……」

 自身なさげにサンジの口から出た言葉に、罪悪感で一杯になる。
 いつも自分の事を気遣って、これでもかと言うくらいの愛情を注いでくれるサンジに、自分は何をしていたんだろうと……。
 そう考えると、今度はヒノデがサンジの頬を両手で包み込む。

「ヒノデちゃん……?」
「…………」

 いきなりヒノデに頬を包まれたサンジは、まさかヒノデから自分に触れてくれるとは思っていなかったのか、ほんのり頬を赤く染めるが、驚くべきことはその後だった。

 チュ! と言う音を立てて、サンジの右頬に柔らかくて温かい唇が軽く触れる。
 勿論この場に居るのはサンジとヒノデしか居ない訳で……。

「あの、私、本当にサンジさんの事……大好きですから……!!」
「…………」
「あ、あのサンジさん……?」

 何の反応も示さないサンジに、顔の前で両手を左右に振った瞬間、
 バターン! と言う轟音を立てて、サンジが目をハートにしたまま、後ろに倒れ込んでしまったのである。意識はあると言えばあるのだが、違う世界に行ってしまっているので、ある意味無いともいえる。
 突然倒れてしまったサンジに、ヒノデが急いでチョッパーを呼びに行ったのは言うまでも無かったのだった。


END


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