「酒を飲もう!!」
「……えぇ」
どうやらここ最近忙しかったようで、まともに休息も取れていなかったダンデがついにぶっ壊れてしまった。近くの店の袋を抱えて帰ってきたと思ったら、その中身は全部酒。まさかこれ全部飲むつもりか。
「疲れてるんだろ。明日せっかくの休みなんだから早く寝た方がいいんじゃないか?」
「いいや、飲む。これを飲んで快眠する」
「明日に残ったら意味無いぞ……」
お互い弱い訳では無い。むしろ強い方だと自覚している。しかしそれは脳が正常に働く状態の時に飲む量を制御しているからであって、今の決壊状態のダンデが飲んでしまってはまずいだろう。二日酔いまっしぐらだ。
しかしこうなった以上仕方ない。付き合ってやろうか。
と、諦めた自分を呪いたい。決して許すな。そいつは裏切り者だ。諦めた者には鉄槌を下せ。許してはならない。
「だから……どうしてぇ……この写真送られてきた時の俺がどんな気持ちだったか分かるか!!」
「いやその、ごめん、何もないって、キバナとはほんとに何も無いよ」
「他の男の名前を出すな!」
めんどくせ〜〜!! 悪酔いしてるダンデってこんなにめんどくさくなんのか〜〜!!ソファを背もたれに缶をぽんぽん開けていき、ダンデはもう2桁目にきている。さすがに飲みすぎだろう。目を離した隙には1本が空になっている。一気飲みしてるんじゃなかろうな、アル中になったりしたら俺はどうしようもないぞ。
ダンデが俺に見せる携帯の画面には俺とキバナのツーショット。この間ヌメルゴンと戯れた時に撮った写真だ。あいつ、なんでダンデに送るんだ。挑発のつもりか。俺からしたらいい迷惑だから本当に辞めて欲しい。そして本当にキバナとは何も無い。……俺は、何も無いつもりだ。
「ダンデ少し落ち着け、水飲もう? な?」
「嫌だ」
このワガママめ。いつもは俺の言うことはすんなり聞いてくれるというのに、さすがにこの状態で素直に聞き入れるわけなどない。自分の言いたいことを好きなだけ言っている。普段からこれくらい言いたいのなら言ってくれて構わないのに。こうしてぶっ壊れたダンデを見ると、いつもどれ程我慢しているのかが分かって寂しさを覚えた。
「……俺のなのに」
体育座りで俯き、力なく独り言を放っている。俺のなのに、俺の××なのに、と何度も何度も。そんなに言われると照れてしまい頬が赤くなるが、今は酒のせいだと誤魔化せるので良かった。
「俺の事、嫌いか?」
「嫌いじゃない。言ったことないだろ」
「じゃあ好き?」
「それ、は」
……なんだか、酔っ払ってるコイツに言うのは癪だ。どうせならちゃんと、起きてる時に、お互い意識がハッキリしてる時に、ちゃんと向き合って伝えたい。
「俺はもう、キミ以外じゃ満足できないのに」
涙が溢れてぽろりと零れているのが見えた。それを親指で掬い、火照った頬を掌で包む。冷たい缶を掴んでいた俺の手にビックリしたようで、肩をびくぅっと大きく跳ねさせるダンデ。かわいい。
「それは俺もおんなじ」
「君も?」
「うん」
……ダメだ、俺も少し酔っているようだ。これ以上はほんとに良くない。さっさと寝てもらわねば。
「…………ダンデ、口開けて」
「ぁ? ……んむ、ぅ」
テーブルの端に置いておいたコップいっぱいの水を思いっきり自分の口へ溜める。頬に手を添えたまま、無理やり上を向かせたダンデにキスをする。そして口内の水をゆっくり、零れないように流し込んだ。
「む、ふっ……!」
「んん、……っは、飲め、ゆっくり」
「っ、は……あ」
彼の喉仏が動き、ごくりと飲み込む音がした。まだ足りないだろうと水を口に含み、もう一度キスをする。
「ん……! っ、う」
「ふ……っあ、こら零すな」
「ぅあ……」
口内で舌を絡めながら水を送り込むが、ダンデの口の端からはぽたぽたと零れてしまったものが垂れていく。だいぶ酔いは覚めたのか、ぼーっとこちらを見上げるだけになった。そんな可愛い俺のダンデを胸に閉じ込め少し早まった心拍を聞かせながら耳元で囁く。
「目、閉じて」
「ん……」
「ゆっくりしような、ダンデ」
「……あ、××、」
「おやすみなさい」
「…………」
背中に回っていた彼の手が力なく滑り落ちた。どうやら眠ってくれたようだ。良かった、マジで良かった。やっと落ち着いてくれた……。そこら中に転がった缶を片付けることも今やってしまいたかったが、俺に身体を預けるコイツを放っておくのはあまりにも惜しく、優しく抱き上げて寝室へ向かった。
「あ゛〜〜くそ、頭いてぇ……」
「そ、その、すまない、ほんとに申し訳ない事をしてしまったようで……」
「いやいいよ。お前がなんともないなら」
翌朝、同じベッドで目を覚ました訳だが、なぜか二日酔いに悩まされることになったのは俺だけのようで。隣でぐしゃぐしゃの髪を掻きながら謝り続けるコイツは、顔こそ赤みを帯びているものの、体調的な問題はないようで安心した。それなら別に、どうでもいっか。
「朝食、俺が作ろうか。何食べたい?」
「………………ダンデ」
「えっっ」
「おまえがたべたい」
昨日、水を口移しした時なんかよりも顔を真っ赤にして手で表情を隠すように顔を覆った。ほんとに可愛らしい、俺のダンデ。