07

一日が長すぎる。時々遊びに来る人はいるけれどあまり話が通じない、よってほぼ眠って時間を過ごした。

「おはようございます、今日はお土産を持ってきましたよ」

朝かどうかは分からないが、彼がここに来るときは必ずおはようございますと言われる。ほぼ寝ているからだと思うが時間の感覚が狂うのでやめてほしい。それよりお土産、とは。薄暗い照明に照らされた男が引き摺っているのは、おそらく人だった。だんだん距離が近づくにつれて明らかになってくる人物、それは。

「雲雀さん……っ?」
「やはり親しいんですね。しかし残念ながら彼はもう用済みです」
「まさか貴方が?」
「ええ、一番強いといっても大したことはありませんでしたが」

意識を失っているらしい雲雀さんは、私の隣にどさりと音をたてて放り投げられた。

「雲雀さん、起きて、起きてくださいっ」
「安心してください、生きていますから。今は痛みで気を失っているだけですよ」
「どうして……どうして、こんな」
「……貴方には関係のないことです。早くマフィアなどとは縁を切って平穏な日常に戻ることをお勧めしますよ」

マフィア。ボンゴレファミリーのことだろうか。そんなことより今は傷だらけの雲雀さんの方が心配で、何度も呼びかけるが全く動かない。夢中になっていた私は、あの男が部屋から出て行ったことにも気付かないまま涙を流して叫び続けた。

「起きて……っ、返事してくださいよ、ひばりさん……」

段々私も疲弊し声が小さくなってくる。鼻水を啜って肩で涙を拭いた。どうしてこんなことになってしまうんだろう、やっぱり優しくなんてなかったんだ、なんで一瞬でも信用したんだろう、そんな後悔ばかりが募っていく。どれだけ呼んでも動かない彼に寄り添うように、そっと隣に寝転がった。

「ひばりさん……ごめんなさい」

ねえ雲雀さん、私を助けに来てくれたんですか?
それとも並中生を助けに来たんですか?
真意はわからないけど、前者だったら嬉しいなと思いながら目を閉じた。今は少しでも現実から逃避したかったのだ。


「……ねえ、……き……」
「んにゃ……」
「起きろ、縫部××」
「ひゃい!?」

聞きなれた声に起こされ、意識がはっきりと覚醒する。久しぶりに呼ばれたフルネーム、この声は間違いなく雲雀さんのものだ。よかった、目が覚めたんだ。嬉しさに叫びそうになるのを抑えて、小さな声で話しかけた。

「おはようございます雲雀さん」
「ん」

彼が私のほうへ投げたのは私の携帯電話。それを受け取って中を確認する。特に壊れたりはしていないようで安心したが、今はそれよりも大事なことがあるだろうに。

「ケガは大丈夫ですか?」
「なんともないよ」
「……そうですか」

強がりか、または本心か分からない。元々感情を表に出す人ではないためたとえ嘘だとしても知らないふりをするほうがいいのだろうか。意地というものも人間にはあるし。

「ここはどこなんでしょうね」
「さあね」
「……あの、言いたくなかったら言わなくていいんですけど。あの人……知り合いか何かですか?」
「違うよ。知らない、興味もない」

興味もないという割に随分と殺意に満ちた目をしている。あの雲雀さんが簡単に負けるとも思えない、なにかされたのかもしれないし恨みも募るか。母のことを知っているらしいあのオッドアイの彼は、いったい何なのか。目的がボンゴレであることしかわからない。

「私たち、どうしましょうね」
「……寝る」
「えっ、えっ!?」

横座りする私の太ももに彼の頭がぽふっと乗せられた。動揺する私など放って、心地よさそうに寝息を立て始めた雲雀さんの柔らかい髪を撫でる。この状況で眠れるなんてすごい人……でも寝るくらいしか娯楽がないのも事実。ポケットに裁縫道具はあるけれど、布なんてない。……こんな小さな針一本に殺傷能力があるわけないもんな。私にできることはここで助けを待つことくらいか。

「……沢田君たちかあ」

少し頼りないような、でもリボーンくんもいるし、雲雀さんも一目置いているし。今の望みはそこにしかない……か。特にやることもないため目を閉じてゆっくり呼吸をした。早くおうちに帰りたいような、雲雀さんがいてくれるならここでもいいような……なんて、くだらないことを考えているうちに私も意識を手放していた。