明日は一緒(風間仁)


【明日は一緒】

三島工業高等専門学校第3学年修学旅行が行われていた。
事前の班決めで一緒の班になった仁とナーナ。
互いに好意を持っている二人だが中々きっかけが掴めない。

『この絶好の機会モノにしないとな?』

仁は友人の言葉に後押しされるようにその日の夜行動に移した。

一日目の日程が終わり夕食後の自由時間、ナーナは仁に呼び出されていた。
ホテルのロビーにあるソファーに仁は座っていた。Tシャツにジーンズとラフな格好である。
(私服の風間くんもカッコイイな)
ナーナが仁に見とれていると、ロビーに居合わせた女生徒らは次々と仁に声をかけていく。
(……告白とか明後日の自由行動の誘いを受けているのかな?風間くんモテるなあ)
そう思うと胸がチクリと痛んだ。

「風間くんモテモテだね?」
女の子たちがいなくなったのを見計らって、ナーナは仁に近づき彼の隣に座る。
「あ、いや……」
ナーナの言葉に仁は困ったような表情をしていた。
「あの、話しって?」
「あのさ。明後日の自由行動なんだけど、一緒に回らないか?」
「えっ?」
思いがけない仁からの誘いにナーナの心臓はドキンと跳ねた。
「もちろん、七瀬が良ければだが……」
見つめる仁の瞳に鼓動はますます早くなった。

「どこに行ってたのよ?」
部屋に戻ると同室で親友の、関本凛が問い掛けてきた。
ナーナは、
「ちょっとね」
と短く答えると、自分のベッドに腰かけた。
「まあ良いわ。ところでさっきなんだけどね、」
「ん?」
「ナーナに話しがあるって、男子達が訪ねて来たんだよ」
5名程部屋に来て、対応が大変だったと凛はため息を付く。
「そんなに?まさか!?」
「あんたね、自分がどれだけモテるのか知りなさい!!」
信じられないと言った様子のナーナに、呆れたように凛は言葉を投げた。

「ところで凛は明後日はどうするの?」
しばらくの沈黙の後、先に言葉を発したのはナーナだった。
「もちろん真と一緒だよ。彼氏と過ごすのは当前!」
「だよね」
仁の友人である神谷真とナーナの友人である凛は恋人同士である。
「ところでさ、この修学旅行で結構カップル誕生してるよね」
「言われてみれば確かに……」
思い返してみると、『あの人が?』『あの人も!』というくらいカップルが目につく。
「あんたの好きな"風間くん"も、たくさんの女子から告白とかされてるみたいよ?」
「…………」
凛の言葉にさっきのロビーでの光景が思い出される。
「どうすんの?」
「うん、あのね……」
ナーナは頬を赤らめながら凛に話した。
さっき、風間くんから明後日の自由行動に誘われたと。
「ホントに?」
「うん」
頷くナーナに、凛の表情が変わった。
「よかったじゃない!!」
ナーナの恋を応援していた凛。嬉しくて、思わずナーナに抱きついた。
「ち、ちょっと凛!!」
「あっ!!明日お誘いの呼び出し断るの覚悟だね?」
戸惑うナーナをよそに凛は意地悪な笑いを浮かべていた。

修学旅行二日目の朝。
凛が言っていたように朝食を終えたナーナは同級生に呼び出されていた。
「七瀬明日の自由行動一緒に回らないか?」
これが三人目。誘ってもらって嬉しいのだが、既に明日の相手は決まっているので断らなくてはならない。
「ごめんなさい……」
ひたすら頭を下げて謝るしかなかった。

「七瀬また呼び出されてるぜ?ホントモテることで」
「……」
偶然通りかかった仁と真は、ナーナが男子生徒と一緒にいる所を目撃した。
恐らく明日の自由行動の誘いだろう。
ナーナはとても人気がある。可愛らしい癒し系の女性で、二年連続のミス三島高専に輝いている。ただ本人はかなり鈍感でありそういうことには気づいていない。

仁は今の光景を見ながら複雑な思いを抱いていた。
「仁どうするんだ?見ているだけじゃ駄目だぜ。……そういえばお前沢山の女子からの誘いはどうしたんだ?」
真は仁がナーナに好意を持っている事を知っている。そして恋人である凛からナーナも仁に好意を持っている事を聞いていた。
両想いの二人がなんとかなって欲しいと色々と世話を焼いていたのだ。
仁も真には色々と相談しているし頼りにもしている。
「誘われた女子とは全て断って、七瀬と明日の約束をしている」
「は?いつの間に!!」
仁が控え目に言うと真は驚いていた。
「昨日の夜の自由時間に七瀬と約束したんだ」
「やるな〜仁!なら安心だ。まずはステップ1クリアーだ!!」
嬉しそうに真は笑うと仁の肩をポンと叩いた。

ナーナの側から男子の姿が無くなったのを確認すると、仁と真は彼女の側に行った。

「よお七瀬。お前モテモテだな?」
「あ……神谷くんと、風間くん!?」
近づいてきた二人にナーナは驚く。今のを見られていたかと思うと何となくバツが悪い。
「七瀬、その……大丈夫か?」
仁が真の隣で申し訳ないような複雑な表情をしているのに気づいた。
これでは昨日の夜の立場が逆だと思ったナーナは、
「ありがとう風間くん。大丈夫だよ」
笑顔で答えるとそれから仁の服をギュッと摘み背伸びをして彼の耳元で囁いた。
「明日は風間くんと一緒だから」
「!!」
ナーナの言葉にみるみる顔が赤くなる。仁はそれを隠すように口元を手で覆う。
「!!」
そんな仁の様子にナーナも自分の行動に気付き顔を赤く染めた。
「お前ら、勝手にやってろ!!」
真の存在を感じていないかのような甘い雰囲気を漂わせている二人。
彼は溜め息をつきお手上げだと言わんばかりに手をひらひらさせながら行ってしまった。


互いに好意を持っていた二人が急速に親密度を増してゆく。
二日目の班行動を終える頃には誰がみても“お似合いのふたり”になっていた。


そして物語は続いてゆく━━━━。

不知夜月