一年目のクリスマスイヴ(風間仁)
【一年目のクリスマスイヴ】
三島財閥頭首風間仁とナーナが付き合い始めて一年。
クリスマスイヴにちょうど一年の記念日を迎える。
『今年のクリスマスは、俺の部屋で過ごさないか?』
仁からの初めての誘いにナーナの鼓動は早くなる。
付き合い初めて一年。
ふたりにはキス以上の関係はなかった。
「…………」
洗面所の鏡の前でさっきからにらめっこを繰り返していた。
『これは私からのクリスマスプレゼントだよ』
初めてのお泊りだということを上司である李超狼に話したら、クリスマス休暇に入る前日にこれをプレゼントされた。
『必ず役立つよ』
その時は彼が何を言っているのかわからなかったが、今ならその意味がよくわかった。
「これ、あからさまだよね」
ピンク色のサテン生地のベビードール。可愛らしいさの中にセクシーさを感じさせる胸元の黒いフリル。そしてお揃いのショーツ。
気恥ずかしくて何度も何度も鏡とにらめっこしていた。
女性が長風呂なのは当たり前のことだと思うのだが、長すぎではないか?
お風呂に行ったきりなかなか戻ってこないナーナを仁は心配していた。
「……」
ナーナがお風呂に行ってから二時間は経っている。
風呂場で何かあって、倒れているのではないかと、考えれば考えるほど心配は増すばかり。
「ちょっと様子を見に行くか」
それでもけして覗くのではないと言い聞かせながら仁は風呂場に向かった。
“コンコン……"
何度かドアをノックしてみるが、中から返事はない。
やっぱり何かあったのだと、仁はドアを開けた。
「!!!」
視線の先にナーナがいた。ピンク色のベビードール姿で、何度も何度も身体の向きを変えたりと鏡とにらめっこしている。
その姿が何だか可愛らしくて、仁はナーナに声をかけていた。
「風邪ひくぞ」
「じじじじん!?」
声をかけられたナーナは飛び上がらんばかりに驚き、まさかの見られていた恥ずかしさに、茹蛸のように真っ赤になった。
覗くつもりではなく心配したからだと弁解する仁の姿がおかしくてナーナは笑ってしまった。
あの後二人はなんとなくぎくしゃくとしながら寝室へと移動した。
寝室はキングサイズのベッドが置かれているだけの殺風景な部屋だった。
「笑うな」
「だって」
ナーナは枕を抱きしめながらベッドの上に座っており、仁はベッドの背にもたれ掛かるように座っていた。
「やれやれ」
仁はため息をつきながら改めてナーナを見つめた。
ピンク色のベビードールはナーナによく似合っている。
まだ恥ずかしいのか枕を抱いて隠しているのがいじらしい。
「あの、仁?」
「なんだ?」
「そんなに見られると恥ずかしいよ」
ナーナは俯き、枕をぎゅっと抱きしめる。彼女の耳は赤い。
「いまさら何を……」
仁はナーナの手から枕を取り上げると、自分の膝の上に彼女を座らせた。
至近距離で向かい合う二人。
「ずっとこうしてナーナに触れたかった」
「仁……」
ドクン、ドクンと胸の鼓動が早くなる。
「ナーナを抱いてしまったら、俺は今までのように接することができるのか自信がなかった」
仁は自分の気持ちを話す。
抱いてしまったら、ナーナに関わるありとあらゆる人に嫉妬してしまいどうなるのか怖かったのだと。
「こんなにも自分の独占欲が強いなんて思わなかった」
ナーナに出会い初めて知った自分の一面だった。
「正直に言うと仁にその気がないのは、私に色気がないからかなって思ってたんだよ」
仁の話しを受けてナーナも正直な気持ちを話し出す。
色気や女らしさというものが、果たして自分にそなわっているのか?
ナーナは悩んだ。
「ナーナ…」
「それにね、ほら私初めてだから、行為そのものに怖さもあって積極的になれなかったの」
全てを話し終わるとナーナははにかんだ。
愛おしいという気持ちが仁の心に溢れ出す。
「待たせたなナーナ」
「ん……」
俺も初めてだから━━━━。
耳元で囁かれた言葉。
そこから二人に言葉はいらなかった。