バレンタインストーリー(三島一八)

―valentine story ―

【一八編】

2月13日。

二泊三日の出張から帰ってきた一八は、部屋に漂う甘ったるい匂いに顔を顰た。
「おい!何してる?」
「何って、明日はバレンタインデーですから、手作りチョコを作ってるんです」
ナーナの言葉通りダイニングテーブルの上には、何種類かの出来上がったチョコレートが置かれていた。
(……気にくわんな)
バレンタインの手作りチョコを楽しそうに作っているナーナ。
義理チョコだろうが何だろうが、他の人に彼女が作っているのは気に入らない。
「あっ!ち、ちょっと一八さん!?」
「ふん」
次の瞬間ナーナの作ったチョコレートは、一八の口に消えていた。
甘い物を好まない一八の行動に彼女は唖然とする。

だが、

「他の奴に作るな。お前は俺だけに作ればいい」
次に発せられた一八の言葉に、彼ナーナは嬉しくなって抱きついた。
「ヤキモチ、ですか?」
「うるさい!!」
こういう一八が可愛いくて、抱きしめられながら頬が緩むのを抑えることはできなかった。

明けて2月14日。

「お前、何故チョコをあいつらに配ってるんだ!?」
手作りチョコが一八の関係者に配られている。
「昨日作っていたチョコは、実は一八さん用だったのですよ」
「な!」
こうなる事を予想して、早めに義理チョコの準備を終わらせていたナーナ。
どうやら今回は彼女が一枚上手だったらしい。
「あ、それからこれ、仁くんの彼女さんからです」
「お前仁のも作ったのか!?」
「当たり前じゃないですか!!仁くんは一八さんの家族なんですよ!?」
「……お前の………ろう」
ナーナの言葉に珍しく口を濁す一八。
「はっきりと言ってくれなきゃ分かりません」
「……」
一八は身を屈め、ナーナの耳元に口を寄せた。

お前の家族でもあるだろう━━━━。


Happy Sweet Valentine!!

不知夜月