「ヴィヴィアン発進します!」
シュナイゼル旗艦『浮遊航空艦アヴァロン』からKMFが順次発進される。
「敵の新型にはステルス機能があるとのことだ。十分に注意して欲しい」
「「イエス。ユア ハイネス!」」
あの後甘い雰囲気をぶち壊すように、カノンからシュナイゼルへ緊急連絡が入った。
『エリア11近郊にて巨大な爆発と多数のKMFの存在が確認された』と。
ふたりは急ぎ総督府に戻った。
シュナイゼルは戦闘の指揮を。
ナーナらラウンズは迎撃を。
夜空に閃光が瞬いた。
『ブリタニアの絶対防御』の異名を持つナーナ。そのKMFは『ヴィヴィアン』といい、類を見ない特殊なKMFである。全方位型モニターを有し、複数の攻撃端末を同時に操作し敵機に向けて攻撃するいわゆる『オールレンジ攻撃』に特化している。
「絶対に許さないんだから!!」
シュナイゼルとの時間を邪魔されたナーナは、敵への攻撃がいつもより苛烈だった。
「ナーナやるね」
「こっちも負けていられない。破壊する」
旗艦アヴァロン前方で、エリア11に進入しようとする敵を排除するナーナ。
「……」
背部の白い翼がはためく。スラスターの役割と同時にそれは微量の粒子を飛ばして見えない敵を感知する。
「ジノの右下150メートルに3機」
「了解!」
「スザクは100メートル後退して3秒後に攻撃」
次々とステルスKMFを正確に攻撃してゆ
く。戦いの中で日付が変わった。
総督府に帰ってきた時には、夜が明けていた。
「いやあナーナ荒れていたね?」
「そう?いつも通りだと思うけど」
多少の私怨が入ったのは認めるけど。鋭いなジノ。
「普段ならあんな戦い方しないよナーナは」
「そうかな?」
人の戦闘をよく見ているなとスザクに感心する。
「無理、駄目」
心配してくれているのはアーニャ。
4人で仲良くドックから自室まで歩いていると、
「ローエングリン卿?」
「カノンさん」
途中カノンに呼び止められた。
「昨日お誕生日だったでしょう?プレゼント渡すの遅くなったわね」
そう言ってカノンは綺麗にラッピングされたプレゼントを差し出す。
「ありがとうございますカノンさん!」
「是非とも使い心地を教えてちょうだいね」
「はい!」
それはマルディーニ社の新作の化粧品一式だった。
「なあ、俺たちもお祝いしないか?」
「えっ?」
「いいけど、一休みしてからにしないか?」
「早めに食堂頼む?」
こうして昼から、1日遅れだった誕生日のお祝いを思いがけず仲間がしてくれた。自分はなんて幸せなのかとナーナは喜びを噛みしめていた。
シュナイゼルの執務室へと呼び出されたのは夕方だった。誕生日パーティーを終えて自室で寛いでいた時。
昨日のシュナイゼルとのことを考えるとどう顔を合わせたらいいのか分からない。
「失礼いたします」
執務室の中に入ると、窓際にシュナイゼルは立っていた。
「やあナーナ。昨日はお疲れ様。見事な戦いだったね」
「ありがとうございます」
穏やかな笑みに少し緊張がほどけた。シュナイゼルはカノンに目配せする。
「あの、ご用とは?」
「昨日の、」
「え?」
「昨日の続きをしようと思ってね」
そう言ってナーナの前に立つシュナイゼルの手には、抱えきれないほどの真っ赤な薔薇の花束があった。
ブリタニア本国のバラ園で育てている薔薇だよとナーナに手渡した。
いったい何本あるのだろうか?今までもらったことのない数の薔薇。
「赤い薔薇の花言葉は(あなたを)愛しています。108本の赤い薔薇の意味を知っているかい?」
「……プロポーズ、ですよね?」
18歳という恋に、結婚に憧れるお年頃。ミレイやクラスの女子たちと調べては想像していた。
「そう。君が18歳になるまで私は待った。それがローエングリン大公爵との約束だったから」
シュナイゼルは話す。ふたりが産まれる前に起きた出来事を。
ナーナの父親ローエングリン大公爵とシュナイゼルの母親は幼なじみで、ふたりは結婚の約束をしていた。しかしシュナイゼルの母親は神聖ブリタニア帝国第98代皇帝シャルル・ジ・ブリタニアに見初められ彼の第3夫人になる。それでも諦めきれなかったふたりは思った。自分たちが叶えられなかったことを子供に叶えさせれば良いのではないか、と。
ここまで歳の差が開いたのはローエングリン大公爵側に女児が産まれなかったから。
ようやくナーナが産まれたのは約束から12年が経っていた。
「あの日泣いていたナーナと出逢ったのは偶然じゃない。必然だった」
ナーナを紹介するという母親の言葉に一時帰省したシュナイゼル。はっきり言って面倒だと思っていた。親同士が勝手に決めたことなのに、自分には拒否権はないのか?
しかも紹介される娘はまだ3才だと。自分の意思さえ芽生えていない何も分からない幼子。
「シュナイゼル殿下はそれでよかったのですか?」
今さら訊いても仕方ないこと。でもナーナは知りたいと思った。
「ん?ああ、いくら親同士の約束と言っても私にだって選ぶ権利はあったってことかい?」
「はい」
「そうだね。けれども15年前にナーナと出会い、私は君の屈託のない笑顔に惹かれた。君がどのように成長してゆくのか見守りたいと思ったんだよ」
まさかナイトオブラウンズに任命されてるとは思わなかったけどね。
それから……とシュナイゼルは跪きナーナを見上げた。
「シュナイゼル殿下?」
薄紫色の瞳に真摯な光を宿し、シュナイゼルはナーナを見つめる。
彼から目が離せない。
「帝国宰相ではなく、第2皇子でもない。シュナイゼル・エル・ブリタニアの、私の妻になってくれませんかナーナ?」
「殿下……」
夢にまでみたシュナイゼルからのプロポーズに、ナーナの瞳からは涙が溢れだす。
ずっと待っていた言葉。驚きと嬉しさに
ポロポロとそれは、留まることを知らない。
こんなにも誰かをいとおしいと思う気持ちが自分の中にあったのだとシュナイゼルは気づく。ずっと自分は空っぽだと思っていたのだから。
「返事は訊かせてくれないのかいナーナ?」
覗き込むようにシュナイゼルはナーナを見つめた。
涙で頬を濡らしながらナーナは小声で『イエス』と一言だけ。それ以外の言葉は出なかった。
「ありがとうナーナ……」
いとおしいという思いを込めて。
愛しているという思いを込めて。
二人の唇がゆっくりと重なった
花束に込めた気持ち。それは、
全ての愛を貴女にささげよう――――。
---アトガキ---
KMFはナイトメアフレームの略。戦闘シーンいらなかったですね。まあでもみんなに祝ってもらえたし、プロポーズされたし。あれ?指輪、忘れました。
2019.01.31