わたしのおうじさま
幼い頃父親に連れられて行ったブリタニアの皇宮。そこで父親とはぐれ迷子になって泣いていたナーナに声をかけたのが12才のシュナイゼルだった。

「大丈夫。私といれば必ず君のお父さんは見つかる。だから安心して」

そう言って連れて来られたのは庭園。色とりどりの花や薔薇の花が此処彼処に咲き乱れている。
「おはなきれい!!」
ナーナは駆け出し花畑の中に座り込んだ。
「気に入ってもらえた?」
シュナイゼルもその隣に座りナーナを見守る。優しい風が二人の間をすり抜けてゆく。

「ところで、あなたはだあれ?」
お花摘みに夢中になっていたナーナ。ふと隣にいる柔らかな金髪の少年の事を思い出す。
「私はシュナイゼル。シュナイゼル・エル・ブリタニア 」
「しゅないぜる?ぶりたにあ?おうじさまみたいななまえだね」
そう言って笑うナーナの、お日様のようにキラキラした笑顔に、シュナイゼルも自然と優しい笑みになる。
「私は二番目の皇子だよ。だから安心してナーナ?」
「おうじさまはなぜわたしのなまえをしっているの?」
「ナーナのお父さんに教えてもらったんだ。素敵な名前だね。私は好きだな」
そう言ってシュナイゼルはナーナの小さな左手を取った
「?」
ナーナの左手の薬指に銀色の指輪がはめられる。まだ小さな少女の薬指にはぶかぶかで。
「これはなあに?」
「私の家の紋章が刻まれた特別な指輪だよ」
「もんしょう?とくべつ?」
「そう」
シュナイゼルはナーナの薬指から指輪を取ると、自分のつけていたネックレスを外した。それからチェーンを取りリングを通す。
「ナーナの薬指にこれがぴったりとはまるようになったら……」
「?」
シュナイゼルはリングを通したチェーンをナーナの首にかけ、幼い頬にキスをした。

ナーナ――――。

やがて父親のナーナを呼ぶ声で二人の時間は終わりを告げる。

「おうじさま、またあえる?」
「会えるよ。きっと」

ナーナの幼心に芽生えた気持ちは、この日から始まった。

シュナイゼルとナーナが再会したのは、それから10年後のこと。

ナーナはラウンズ ナイト オブ エイトに任命されていた ――――。

不知夜月