ピクニックしましょう
『Devil May Cry』にナーナが住み込んで三ヶ月が経った。住の双子との生活にようやく慣れてきた。
家主のダンテは親しみやすく、同居人のバージルは近寄りがたかった。
だからバージルが仕事でいない日は、正直ホッとする。
(こんなの駄目よね……)
見上げる空は雲一つない青空。
ナーナは溜め息をつくと、入口の掃き掃除を終えて中に入った。
「ナーナ、いるか?」
ダダダダ……ッと階段を勢いよく駆け降りてくるのは、『Devil May Cry』の家主ダンテだ。
「どうしたの?」
ナーナはその勢いに驚き後ずさる。
「いや、目が覚めたらどこにもいないからさ!」
ナーナの姿を見つけて、安心したようにダンテは笑う。
「その言い方だと、まるで私がダンテと一緒に寝てたみたいね」
ナーナもつられて笑った。
「なあナーナ?」
箸を止めダンテはナーナを見つめる。
二人は向かい合う形で食卓に座っていた。
「ダ、ダンテ?」
綺麗な青い瞳に見つめられ、ナーナはドキマギしてしまう。
「今日さ、何か予定ある?」
「今日?」
ナーナは壁にかけられているカレンダーを見つめた。今日は特に買い物の予定も、友人と遊ぶ約束もない。
「今日は一日空いてるよ」
ナーナのその言葉にダンテの瞳がキラリと光った。
「じゃあさ、どこかに出かけないか?」ダンテの予想外の言葉にナーナは驚いた表情をする。
「出かける?私がダンテと??」
「そう!たまには息抜きしなきゃ♪」
「ダンテ!」
ダンテの言葉に、ナーナの表情が笑顔になる。
「どこか行きたい所ある?」
ダンテの問いにナーナは即答だった。
「お天気がいいから、ピクニックに行きましょう!」
「ピクニックか〜なんかいいな」
母親が生きていた頃。
ダンテがまだ小さな頃。
バージルと3人でお弁当を持って……。
ふと懐かしい記憶が甦る。
「私行きたい場所があるの!」
一人で買い物に出た時に見つけた。
暖かくなったら、誰かと一緒に見たいなぁと思った場所。
「いいぜ!行き先はナーナに任せる!!」
今日はバージルがいない。
あいつも態度には出さないがナーナの事は気に入っている筈だ。
俺達は双子だから分かる。
少し俺がリードだな……。
「どうしたのダンテ?」
ナーナの声で現実に戻される。
「何でもない」
ダンテはそう言って笑うと、残っていたご飯を食べ始めた。
(……?変なダンテ?)
ナーナはそう思ったが口には出さず、自分も箸を動かし始めた。
ダンテがビックリする位、美味しいお弁当を作って。
ダンテとのピクニックが楽しみなナーナだった。
「忘れ物はないか?」
事務所のドアに鍵をかけながら、ダンテはナーナに訊ねた。
「大丈夫よ」
ナーナはニッコリと笑う。
手には少し大きめのバスケット。
ナーナには重そうで、ダンテはナーナの手からバスケットを取った。
人々はこぞって花見をして、桜に想いをはせる。
ナーナが日本を離れて3年。
何気なく見つけた桜の樹に懐かしさを感じた。
満開の時期に、大切な誰かと見たいとひそかに思っていた。
「満開の桜を見たかった……」
ナーナはそう言いかけて止めた。
ダンテに出かけないかと言われた時、真っ先に浮かんだのがこの場所。
「一緒に見るのが俺でよかったのか?」
不意にダンテが問いかける。
「どうしてそう思うの?」
ナーナは驚いてダンテを見た。
「本当は一緒に見たい誰かが……」
「違うよ!」
ダンテの言葉をナーナが遮った。
「ナーナ?」
「一緒に見たいと思ったのはダンテだよ?だからここに来た……!?」
ナーナは自分の言葉にハッとなる。
まるで告白してるみたいでポッと顔が赤くなった。
「可愛いなあ〜!」
ダンテは堪らずナーナを抱きしめた。
ナーナはダンテの腕の中にすっぽりと収まっている。
自分より頭一つ小さなナーナ。
肩もこんなに小さく、華奢な身体だ。
ナーナを守りたい……。
ダンテは心からそう思った。
「なあナーナ。俺のお願い聞いてくれる?」
抱きしめていた腕を緩めナーナを自分から離す。
「無理なお願いじゃなければ、いいかな……」
ナーナの言葉にダンテの瞳が輝く。
「ひざ枕してくれ」
ナーナの答えを聞く間もなく、ダンテはナーナの膝に頭を乗せる。
「ダ、ダンテ!?」
ナーナの戸惑いなどお構いなしだ。
「少し眠らせてくれな」
ダンテはそう言うと瞳を閉じた。
スゥ……スゥ……。
ダンテの寝息が聞こえてくる。
「可愛いなあ」
ナーナはクスリと笑った。
風に乗って桜の花びらが舞い落ちる。
ナーナは空を見上げた。
雲一つない青空が広がっていた。
昼下がり、気持ちのいい陽射しが二人を照らす。
あなたが目を覚ましたら……。
穏やかな優しい時間に、ナーナも身を委ねた。
---アトガキ---
キリ番でリクエスト頂いた夢です。ダンテ版Hand in handのつもりが別の話になりました。