pizzaとダンテと私と 後編
「なんだよ一体!!」
残されたダンテは訳が分からなかった。
髪の毛からピザのソースがポタポタ落ちる。
「畜生!」
ダンテは傍にあった椅子を怒りを込めて蹴り飛ばした。
何だよ?
俺が何かしたか?
べたつく髪の毛。鼻につくチーズとピザソースとオリーブの匂い。
最悪の誕生日だ。
まさかこんな展開になるとは……。
溜め息をつくダンテ。
『サイテー!!』
ナーナの言葉が、泣きそうな表情が、頭から離れない。
ダンテは頭を振ると、階下に降りて行った。
とりあえずシャワーを浴び直さなければ。
BAR『Bull's Eye』。
「ん……メアリー」
ナーナは店内のソファーの上で夢の中。メアリーと呼ばれたオッドアイの女性は、溜め息をつき黒い髪を掻き上げた。
「マスター。ナーナが酔っちゃったの。少し寝かせてくれない?」
「構わないよ」
マスターは店の隅に置いている毛布を彼女に渡した。
「ナーナが酔うまで呑むなんて、珍しいな?」
マスターは何かあったのかと尋ねる。
毛布をかけながら、メアリーはマスターに事の次第を話した。
ダンテの事務所を飛び出したナーナは、友人であり幼なじみであるメアリーを店に呼び出し、泣きながら、愚痴りながら、かなりの量のカクテルをがぶ飲みしていた。
『Bull's Eye』は二人行きつけの店だった。
「可愛い話だ……」
マスターは笑う。
「初めての彼氏なのよ。だから……」
メアリーは眠っているナーナを見つめる。正直、素直に感情を出せるナーナが少し羨ましかった。
マスターにナーナを委ねると、メアリーは帰って行った。
バスルームから出て来たダンテは、再びキッチンへ向かう。喉を潤そうと冷蔵庫のドアを開けた。
「これは……」
冷蔵庫の中には、ダンテの大好物であるストロベリーサンデーが入っていた。
ダンテはそれを取出し、口に含む。
苺の甘い味が口一杯に広がる。
「旨い」
ダンテは周囲を見渡した。
未だ手をつけられてない料理。
床に無残に転がったサラダとサラダボウル。
飲みかけのグラス。
これだけの料理を用意するのに、どれ位の手間と時間がかかったのか?
ナーナとの付き合いはまだ短い。
ダンテの不規則な仕事のせいで、デートもままならない。
そんな中迎えた、誕生日というイベントは、二人の距離を縮めるのに、絶好の機会だ。
それなのに。
「やり過ぎた、か?」
たしかにオリーブは嫌いだ。匂いを嗅ぐのも、食べるのも御免だ。
だが、ナーナが一生懸命作ってくれた料理。
あの時はカッとして熱くなってしまった。
どう考えても悪いのは俺なのに。
「ナーナに謝るか」
ダンテは、空になったストロベリーサンデーのグラスをテーブルに置いた。
ダンテはメアリーと入れ違いに入って来た。
「畜生!マスターいつものくれ!!」
カウンターに座るダンテ。
赤いコートに二丁拳銃が印象的な銀色の髪。
「ダンテ、荒れてるな?」
マスターはいつものお酒をダンテに出す。
「女って、わかんねぇよ……」
ダンテは呟くと、グイッとジントニックを飲み干した。
あの後、ナーナを探して色々な所に足を運んだ。だが彼女は見つからなかった。
考えてみると自分はナーナの事を知らなかった。
ダンテの独り言を聞きながら、マスターの瞳は笑っていた。
「ん?マスター何笑っていやがる……」
マスターは店の奥を指差した。
「?」
ダンテは指差された方に視線を動かす。
奥のソファーに誰かが眠っているのが見えた。
ダンテは椅子を降りソファーの方に歩いて行く。
(ナーナ!? )
毛布に包まれてソファーの上で寝息を立てていたのはナーナだった。
何でここに彼女が?
ダンテは彼女を起こさないように、ソファーに座る。
頬には涙の跡が。
一人で泣いていたのだろうか。
ダンテはナーナの頬に触れた。
「ダン……テ……ばか……」
ナーナの寝言にダンテはドキッとする。
「驚ろかすなよ」
ナーナは寝返りをうつ。
ダンテはナーナの黒髪を優しく撫でた。
午前5時。
BAR『Bull's Eye』の看板の明かりが消える。閉店の時間だ。
だがマスターの姿はここにはなかった。
カウンターの上には鍵が置いてあるだけで。
店の外には『close』の看板がかけられていた。
ダンテは思う。
ナーナが目を覚ましたら、優しく抱きしめて昨日の事を謝ろう。
それから初めてのキスをして、
『愛している』と
この気持ちを伝えよう。
ナーナの事をたくさん知りたい。
時間をかけて、わかり合おうか。
不意にダンテは睡魔に襲われる。
俺が目を覚ましたら、きっと伝えよう……。
ダンテはナーナに寄り添い、深い眠りに落ちていった…。
Hereafter, the story of lovers will start.
---アトガキ---
大好きな管理人様からのキリ番リクエストのお話でした。 初々しい二人を書くのは楽しかったです。続きの裏夢があったりなかったり。