ずっと

――――2月14日。

今日は『バレンタインデー』
大切な人に大切な想いを伝える日。

今日俺は君に大切な事を伝える
君がどういう返事をするのか少し不安だ。
でもきちんと聞いて欲しい。
大切な君だから……。



今日はバレンタインデー。
女の子にとってはドキドキワクワクな一日。

ここスラムにある便利屋『Devil May Cry』でも、今日は朝から甘い香りが事務所内に漂っていた。

「何をしているのかな?」
「きゃあ!」
突然後ろから抱き着かれたナーナは驚きに小さな悲鳴を上げる。
「もうダンテ驚かさないで!!」
抱き着いてきたのは恋人であるダンテ。ここ『Devil May Cry』の主人である。
「悪い悪い」
全く悪びれた様子もなくダンテは笑っている。彼女から離れる様子はなかった。
「チョコレート?」
覗き込んだナーナの手元には茶色のブロックがある。
「うん!今日は2月14日でしょう?」
ナーナは慣れた手つきでチョコレートの塊を湯煎で溶かしていた。
「そうか、今日はバレンタインデーだ。確かナーナの国だと女性から男性にチョコレートを渡して愛の告白をする日だっけ?」
「そう本命チョコと義理チョコがあってね……」
ナーナは自分の国の風習をダンテに話した。
「貰う方もあげる方もタイヘンだな」
ダンテはナーナの話しに苦笑いしながら、スッと腕を伸ばし湯煎されているチョコレート指先に絡めるとそれをペロリと舐める。

――――――それは甘くて温かかった。

「も〜うダンテ!今食べたらダメ。後の楽しみが無くなるぞ?」
ナーナは身体にまわされていた彼の腕から抜け出しダンテと向かい合い、そして子供を諌めるようにダンテを注意した。

青い悪戯っ子の瞳がナーナの黒い瞳をじっと見つめる。

「仕方ない。今はこれで我慢するか」
「ん……」
チュッと軽いリップ音。
ダンテはナーナの唇を素早く奪っていた。
「……続きは夜のお楽しみにしておくよ」
「!!」
耳元でダンテに囁かれかあっと顔が赤く染まる。
「じゃあ仕事に行ってくる」
ダンテはもう一度ナーナに触れるだけのキスをした。
「それと、今日はナーナに話したい事があるからなるべく早く帰るよ」
「え?」
驚いてダンテを見上げる。だがダンテは照れくさいのか足早に出て行ってしまった。
「変なダンテ」
そう言いながらナーナは暫くその場から動けなかった。

今日は長い一日になりそうね……。

ダンテは仕事をいつも以上に早く終わらせある店に急いでいた。
現在の時刻は午後7時30分をまわっている。お目当ての店は午後8時には閉店してしまう。
バイクを勢いよく飛ばしていた。

午後7時50分。閉店10分前。

「間に合った!」
ダンテは勢いよくその店に入って行った。


そろそろダンテが帰って来る頃かな?

ナーナは最後のお皿を並べ終えた。
テーブルの上には沢山の料理が並んでいる。どれも自信作だ。仕上げにダンテの椅子の上に綺麗にラッピンした箱を置いた。

ダンテと出会って半年。思い起こせば今まで色々な事があった。

楽しい事も。
悲しい事も。
嬉しい事も。

そんな事を考えていると、不意に眠気が襲ってくる。
「ダンテ、まだかな……」
ナーナはそのままテーブルの上で眠ってしまった。

「ただいま」
それからすぐにダンテは帰って来た。
「ん?」
いつもならナーナがとびっきりの笑顔で迎えてくれるはずなのだが。
「ナーナ?」
不思議に思いながらも階段を上がり台所を覗くと、ナーナがテーブルの上で眠っている姿を見つけた。

用意されたいろとりどりの料理。これだけの量を一人で作っていたのだからきっと疲れたに違いない。
起こした方がいいのか、ダンテは躊躇した。
でも今日はナーナに話さなければならない事がある。
ダンテは悩んだ末ナーナを起こす決心をした。
「ナーナ帰ったぞ」
「!?」
耳元で囁けばナーナの身体がビクッと震える。
「ダン……テ?」
驚いて顔を上げるナーナの寝ぼけ眼がまた愛らしい。
「ただいま」
「あ……お帰りなさい……」
ダンテはナーナを抱きしめ額にキスをした。

愛おしさが溢れ出し止それは止まらなかった。

「うわぁ!!」
ダンテは強引にナーナ抱き抱えた。
「ちょっとダンテ!ご飯冷めちうよ!!」
「無理。今は飯よりナーナが食べたい」
ナーナの抗議を聞き入れず、ダンテはそそくさと寝室に運んだ。

「ぶうぶう」
口を尖らせているナーナに構わず、彼女をベットサイドに座らせる。
「あのねダンテ、いきなりこれはないでしょう?」
見るからにナーナの機嫌はが悪かった。
ダンテはそんなナーナを気にするわけでもなく、何を思ったのかナーナの前に片膝をついた。
「ダンテ?」
ダンテに見上げられている。一体何が起こったのかわからない。けれども彼の青い瞳から目が離せない。
「俺達が出会って半年が過ぎた」

……トクン……トクン……。

心臓が静かに騒ぎ出す。
こんな真剣なダンテは初めてだった。

「ナーナと出会って俺は人を愛するとはどういうことかを知った」
ダンテは綺麗にラッピングされた小箱を取り出しナーナに手渡す。
薄いピンク色の包装紙に赤いリボンがかけられていた。
「ナーナ、開けてみてくれないか?」
「あっ……うん……」
ドキドキは収まらず手は震えて上手く開けられない。
そんなナーナにダンテはそっと自分の手を重ねる。ダンテに手伝ってもらいながらようやくそれを開けることが出来た。
「!!」
出てきたのは指輪だった。ハートの形をした赤い宝石が真ん中に、両脇にはダイヤがあしらわれている指輪。
「これって!?」
ナーナは驚いてダンテを見た。
「これはこうするんだ……」
ダンテは指輪を手にすると、ナーナの左手の薬指にそれをはめる。
「よかった。サイズがピッタリだな!」
ナーナの薬指でそれは輝いていた。
「ダンテ!」
「ナーナ」
二人は見つめ合う。

「ナーナ。これからもずっと俺の側にいてくれないか?」

それはダンテからのプロポーズだった。

「私で……」
「うん?」
「本当に私でいいの?」
不安そうにダンテを見つめるナーナ。ダンテはナーナのおでこに自分のおでこをくっつけた。
「ナーナがいい。ナーナじゃなきゃダメなんだ」
「ダンテ!!」
触れ合う唇から伝わる想い。
それは優しいキス。
ナーナは涙が溢れて止まらなかった。

2月14日。聖バレンタインデー。

誰かの想いが叶う日。

この日は二人にとって忘れられない大切な日になった。

***

【おまけ】

「ねぇダンテ……夕食冷めるよ」
甘いムードもどこへやら。ふとナーナは現実に戻る。
「夕飯は後で食べればいい。今は……」
「……?」
「今はナーナを食べたいんだな」
そう言ってウインクをするダンテ。
既押し倒されているナーナ。

まあいいか。今はダンテの温もりに身を預けよう……。

身体に感じるダンテの温もりがとても心地好かった。



---アトガキ---
初めてのキリ番リクエストの作品です。
そしてサイトを始めて、初めて仲良くして頂いた管理人様への作品でした。

不知夜月