pizzaとダンテと私と 前編

穏やかな時間が流れていた。

ダンテとナーナが付き合い初めて、今日で三ヶ月。

スラムの花屋で働いていたナーナに、ダンテが一目惚れをしたのだ。

黒髪に、黒い瞳を持つ、日本人の女の子だ。

今日はダンテと知り合って、三ヶ月目突入&ダンテの誕生日である。

ナーナはダンテの家――『Devil May Cry』を開業する前の事務所――で、一人料理に奮闘していた。

ダンテの大好物である、ピザ、サラダ、ストロベリーサンデー等を用意していた。勿論全てナーナの手作り料理である。
ダンテは急な依頼で出かけており、夕方には帰って来る予定だった。

「我ながら、いい出来だわ!」
テーブルの上に並べた料理を見て、ナーナはその出来ばえに満足をした。

(早くダンテが帰ってこないかなあ)

これを見たら、ダンテはどんな表情をするのか?

そう考えるとダンテの帰りが一層待ち遠しいものになった。

バタン!

勢いよく事務所のドアが閉じられる音がしたので、ナーナは階下に降りて行った。
ちょうとダンテは二丁銃のホルスターを黒檀のデスクに置いた所だった。
「ナーナ?」
「おかえりなさい、ダンテ!」
ナーナダンテに抱きついた。
「おっ、どうした?急に積極的になって?」
ダンテは顔を綻ばせながら、ナーナを抱きしめた。

柔らかい身体。
ふわりと甘い香りが鼻をくすぐる。
ダンテはナーナの髪に顔を埋めた。
「いい匂いだ……」
「ダ、ダンテ」
「何もしないから、しばらくこのままでいさせてくれ」
「うん……」
ナーナはダンテの胸に、そっと顔を寄せた。

トクン、トクン……。

ダンテの規則正しい鼓動が聞こえる。
ナーナは瞳を閉じ、その音を聞いていた。

ナーナがすごく可愛い。
付き合って三ヶ月。
この俺が、まだ手も握っていないし、キスもしていない。プラトニックな関係だ。

それだけナーナは、ダンテにとって大切な存在だった。
今まで付き合った女性達とは違うほど。

「おっ!スゲェ〜!!」
バスルームから出て来たダンテは、頭をタオルで拭きながらキッチンにやって来た。
テーブルの上にズラリと並べられた料理にダンテは驚く。
「今日はダンテの誕生日でしょう?」
ナーナは苺のケーキをダンテに見せる。
「誕生日?……あっ、そっか!忘れてたな」
ダンテは指でクリームをすくいペロリと舐めた。
「もう、ダンテ!!」
ナーナはダンテからケーキを遠ざけた。

「HAPPY BIRTHDAY!ダンテ!!」

カチン……とグラスの触れ合う音が響く。二人は向かい合う形で座っていた。
「旨い!!」
ダンテは、用意された料理に舌鼓を打つ。皿の上の料理が瞬く間に空になる。
ナーナは美味しそうに食べるダンテの姿を、ニコニコしながら見ていた。
「本当に美味しいぜ!」
「ダンテに食べてもらいたくて、愛情込めて作ったから……」
「ナーナは、いいお嫁さんになるな!!」
「もう!ダンテ」
ナーナはかあっと赤くなった。

緩やかな、優しい時間が流れ行く。
だが、そんな優しい時間は長くは続かなかった……。

ダンテが大好物のピザを一切れ口に入れた。

それが全ての始まりだった。

「!?」
ダンテの表情が見る見る変わる。
「ダ、ダンテ!?」
ダンテの顔色に心配になるナーナ。
「ナーナ。何をピザに入れたんだ?」
初めて聞くダンテの低い声。
ピザを見ながらダンテはかなり不機嫌な表情をしている。
「オリーブなんだけど……」
「オリーブ?!」
ナーナの言葉に、ダンテは声を荒げた。更に機嫌が悪くなるダンテ。
「こんなの食えねぇよ!!」
吐き捨てるように言うと、ダンテは手にしていたピザをポイッと、ゴミ箱に投げ捨てた。
「何をするの!?」
ダンテの予期せぬ行動に、思わずナーナの語気が強くなる。
「オリーブは嫌いだ!」
「!!?」
ダンテの言葉に、態度に、ナーナは怒りが込み上げてくる。
「いくらオリーブが嫌いでも、ピザを捨てる事ないじゃない!!」
オリーブの箇所だけ取って食べるとかできるはず。

いきなり捨てるかなあ?
折角作ったのに!!!

「匂いが付いてるのが食えるか!?」

ブチッ!!

ナーナの中で何かが切れた。

「馬鹿!!」
予想もしないナーナの行動に、ダンテの反応が遅れる。

バシッ!!

ピザは気持ちをいい音を立てて、見事にダンテに命中した。

ダンテの銀色の髪が、顔が、ピザのソースと具とチーズまみれになる。
ナーナはさらに、サラダボウルをダンテに投げつけ、
「サイテー!!」
と言葉を投げ捨てると、事務所から出て行ってしまった。

不知夜月