青いあなた�C*
男の手には電撃を帯びた剣が握られている。それが戦いの合図だった。
「―――――!」
気合いとともに繰り出されたのはバージルの居合い切り。
神業ともいえる速度で踏み込むと同時に、正確無比な一撃を男に叩き込む。
「グワッ!」
男はまともにそれを喰らい弾き飛ばされた。バージルが更に強烈な殴打を繰り出すと、男はサンドバックのように叩きつけられた。
かなりの攻撃を受けたのにもかかわらず、男は笑っていた。
「さすが魔剣士スパーダの息子だ」
男はバージルの繰り出す拳を受け止めた。
「――――――!!」
バージルは小さな隙をつかれ、男の斬撃をまともに喰らう。
「ぐあっ……!」
体に電撃が走り、バージルはその場から動けなかった。
「クックック」
男は更に炎を纏った槍で、バージルの肩に腹に背中に槍を突き刺す。
「ぐは……ぁぐっ!」
バージルの口から鮮血が吐き出された。
内臓が焼けていくのがわかる。
焼け付く痛みが全身に広がる。
身動きの取れないバージルに、男は今度は小型銃を押し当てた。
「『Crystal』を持つ私は無敵!」
パン、パン!!
二発の銃声が空間に響いた。
「あ……ぐ、ぐあっ」
バージルは無様に地面に転がっていた。
至近距離からの銃弾の威力は凄まじい。
バージルの腹部には、どす黒い穴が空いていた。貫通している。
「いい声だ。苦しみに悶える姿は実にいい」
男は愉快そうにバージルを見下ろしている。
「……き、さ……ま」
バージルは立ち上がろうとする。
「しぶといですね?」
男はバージルに更に二発の銃弾を喰らわせた。
「――――――!!」
バージルは再びその場に崩れ落ちた。
目の前が真っ暗になる。
「おやすみなさい、英雄スパーダーの息子さん!」
男の電撃を帯びた剣が、振り下ろされた。
バージルは暗闇の中にいた。
何も見えず、何も聞こえない。
これが死ぬという事なのか?
体が冷たくなってゆく。
ふとナーナの声が聞こえた。
「ねぇバージル、桜って知ってる?」
「サクラ?」
「うん!日本では春になると、桜の木の下でお酒を飲んだり、歌ったり、みんなで桜を見るの!」
「花を見て酒を飲んで何が楽しいんだ?」
「日本人にとってね桜は大切なのよ?」
「そんなものか」
「バージルと満開の桜を日本で見て見たいなあ」
ナーナ……。
俺は何の為に此処に来たのか?
ナーナを助ける為に来たのではないか?
――――失いたくない!!
バージルの中のもう一つの血が目覚める。それは魔剣士スパーダの血。
体が熱い。
体に力が漲る。
傷がゆっくりと再生し始める。
バージルはユラリと立ち上がった。
全身からは青いオーラが立ちのぼっている。
「何!?」
男は驚き叫ぶ。
バージルは魔人化していた。
強大な力が体の奥から溢れてくる。
バージルの闘気が吹き荒れていた。
壁に天井に亀裂が走る。
廃墟の所々が軋んで悲鳴を上げている。
この建物全体が小刻みに震えていた。
「くっ……!」
男は、激しい揺れに立っているのがやっとだった。
バージルは、男に一歩一歩近付いて行く。
「『Crystal』を持つ私は無敵!!」
男は『Crystal』を自身の体に埋め込んだ。
「ぐぅ……うおぉ……!!!」
男の顔が苦痛に歪み、
ウオオオ〜〜〜〜〜〜!!!
男の咆哮が響き渡った。
そこにいたのは異形の者。もう男の面影はそこにはない。
ただ悪魔の力に固執した、醜い姿だった。
「貴様を倒し、スパーダーの血を捧げ、私は神になるのだ!!」
「愚かな!」
二つの強大な力がぶつかり合った。
ナーナは激しい衝撃に目を覚ました。
「えっ!?」
目の前に広がる光景に言葉を失う。
圧倒的な、それでいて荘厳な魔人同士の闘いだった。
「消えろ、バージル!」
男の電撃を帯びた剣が、唸りを上げて襲い来る。それを真っ向からバージルは受け止める
「甘いな!」
二つの剣が火花を散らしながらぶつかり合い、その強大な魔力に二人は弾き飛ばされる。
ナーナは固唾を飲んで二人の戦いを見ていた。
自由を奪われているナーナ。
手首を動かそうとすると、縛り付けている鎖が手首を痛め付ける。滲む赤色。
男の剣が、バージルの腹部に深々と突き刺さった。
「ぐっ……!!」
生暖かい、真っ赤な血が滴り落ちる。
その衝撃でバージルの魔人化は解けてしまった。
バージルの顔が苦痛に歪む。
男は笑いながら更に深く突き刺し、そして一気に引き抜いた。
「ぐっ……!ぐあ!」
バージルは、その場に崩れ落ちそうになる身体を、必死に堪えていた。