青いあなた�D*

バージルの足元には血溜まりが出来ていた。
初めは優勢だった戦い。
しかし、『Crystal』と一体化した男にバージルは圧されていた。
「バージル!!」
ナーナは叫んでいた。
目の前で自分の為に傷つきながら戦っているバージル。初めて自分の無力さが悔しいと思う。
「バージル!!」
ナーナの瞳から涙が溢れ出した。
ひと滴、またひと滴。涙は頬を伝ってゆく。そしてひと滴の涙が、男の作り出した祭壇に零れ落ちた。

ガシャッ―――――!!

音を立てて鎖が、目に見えない何かが粉々に砕け散った。

「バージル!」
自由になったナーナはバージルの元へ駆け寄り、男とバージルの間に立った。
「……来……るな」
立っているのがやっとのバージル。
不敵に笑う男。
二人の間に立つナーナ。
「おやおや、よく脱出する事が出来ましたねナーナ?」
男はナーナが脱出する事を予想していたのか、微塵も驚いている様子はない。
「バージルは関係ないはずよ!」
ナーナは男をキッと睨む。
「ふん。気の強い所はマイアにそっくりだ」
男はナーナの顎に手をかけ自分の方を向かせた。
「離して!」
ナーナは男の手を強く振り払った。
「威勢はよし」
男は薄笑いしながら、電撃を帯びた剣を構える。
「お前は『Crystal』の封印を解く為に必要だった。これが何を意味しているのがわかるかな?」
男は一変無表情になる。
「私はお前を殺せるが、ナーナ、お前に私は殺せない!」
言い終わると同時に、男の剣がナーナに振り下ろされた。

ガシャン―――――!

剣はナーナまで届かなかった。
「くっ!!」
「バージル!?」
バージルの閻魔刀がぎりぎりの所で男の剣を受け止めていた。
「うっ!!」
その衝撃で、再生しかけていた腹部の傷口が裂ける。
だがバージルは、男の剣を押し返した。

腹部からの出血が止まらない。
再生治癒する力が追い付かない。

それでもバージルはナーナを守りながら男の攻撃を受け止める。
「バージル!!」
何も出来事ない自分は、かえって彼の足枷になっているのではないか?
目の前で男と戦うバージルは傷つきながらも男に立ち向かっている。
(私はどうすれば……!)
ふと床の隅に転がっている小型銃が目に入る。ナーナはそれを手に取った。
私と関わったばっかりにバージルを戦いに巻き込んでしまった。本来彼には関係のない戦いに。
と、その時だった。
頭の中に声無き声が響き渡る。

「                    」

自然と口から滑り出す言葉。ナーナの意志とは関係なく紡ぎ出される言葉。

カシャン―――――…!

男の手から剣が滑り落ちた。
「ぐっ……あ、あ……」
男が急に苦しみ出した。
「何が……?」
バージルはハッとナーナを見た。
ナーナの中に綺麗な女性がいた。長い黒髪と同色の瞳を持つどこかナーナに似ている。
ナーナはその女性と一体化し、何か呪文のようなものをを唱えていた。
その呪文に呼応するように男の身体に埋め込まれた『Crystal』が白く光り、それはまばゆい程の輝いている。
「ば、馬鹿な!!」
男は叫んだ。
『Crystal』が発する白い光に、男は悶え苦しんでいた。
バージルは、男の変化を見逃さなかった。今しか男を倒す機会はないと。
「おぉぉぉっ!」
バージルの強烈な斬激が男を斬りつけ、斬り上げ突き抜く。

『Crystal』の力を受けられない男は、バージルの卓越した剣技になすすべがない。

不知夜月