青いあなた�F 完
あれから季節は巡り、俺は何度目の春を迎えたのだろうか。
ナーナの行方は全くわからなかった。
生きているのか、死んでいるのか。
ナーナと男に関する物は何一つ発見されなかった。
まるであの出来事が夢だったかのように……。
遺跡は跡形もなく、今はただの荒れ地になっている。
バージルは日本にいた。
あの出来事があった後ナーナの故郷に行ってみたいと思っていたのだがなかなか時間が取れなくて、ようやく今日それを実現したのだ。
季節は春。
至る所に桜の花が満開だ。
風が吹く度花びらが散る。
それはまるで花吹雪のように幻想的だ。
ライトアップされ夜空に映し出される桜は筆舌につくしがたい。
ナーナが言っていた日本人にとって桜は大切で特別だと言うことが分かるような気がした。
「ここは……?」
何か導かれるように、バージルはあるお寺にたどり着いた。
『閻魔寺』
親父の形見の刀と同じ名前を持つ寺。
何かあるのだろうか?
門を潜り中に入ると、小さな本堂があるだけの寂れたお寺だった。
だが寺の奥に咲き誇る桜の木には、見事な桜の花が咲き乱れていた。
シャン……シャン……。
夜風にのって鈴の音が何処からともなく聞こえてくる。ふと音のする方に視線を向けると、女性が一人、咲き誇る桜の木の下で舞を舞っていた。
彼女の動きに合わせて鈴が鳴る。
彼女が手を上げれば花びらが舞落ちる。
まるで桜の木と一体になっているかのように。
月の光が、幻想的な空間をそこに作り出している。
バージルは、しばらく女性の舞に見とれていた。
やがて舞が終わる。
バージルは拍手をしながら、ゆっくりと近づいて行った。
女性が振り向く。
そこにいたのは――――。
「ナーナ!?」
「!!」
二人の視線が交差する。
「バージル!?どうして……」
「桜の花が」
「えっ……?」
「桜の花が導いてくれたらしい」
バージルはナーナを抱きしめた。
あの日ナーナを手放した事を、ずっと後悔していた。
ようやく、ようやく見つけた!!
「お前が生きていて、本当によかった……」
「バージル、ごめんなさい……」
互いの温もりが、生きている事の喜びを感じさせる。
「ナーナ。お前がいつの間に俺の中で大切な女性になっていた」
「!!」
バージルはナーナの唇に自分の唇を重ねた。重ね合った唇に互いの想いを深く刻み付ける。
「愛している、ナーナ」
二人は何度も何度も唇を重ね合った。
一陣の風が桜の花びらを舞い散らす。
まるで二人を祝福するかのように、桜の花びらは舞っていた。
――――二人の時間がゆっくりと動き出す。
---アトガキ---
元題は Cherry Blossom. 主人公の名前を『サクラ』して桜とかけてました。
でも前のサイトでは公開が短かったので、ほとんど新作かな?