シェスタ


ぽかぽかと陽射しが気持ち良い春の日。


仕事を終え一週間振りに帰ってきた我が家。

「帰ったぞ」

「―――」

何の物音もしない室内。

いつもなら玄関のドアを開けた瞬間、春の陽射しのように柔らかい笑顔が迎えてくれるのだが……。

久しぶりの帰宅だというのに彼女がいないとは、タイミングが悪すぎだ。

バージルは少しいらつきながらも寝室に足を運んだ。

「……」

「スゥ、スゥ……」

寝室に足を一本踏み入れた瞬間バージルの不機嫌そうな表情は柔らかいそれに変わる。

広いキングサイズのダブルベッドの真ん中では気持ち良さそうに昼寝をしている彼女たちの姿があった。

バージルは足音を立てないようにベッドサイドに近付いた。

―――――こんなに熟睡している彼女を見るのは久しぶりだな。

バージルの仕事はすべてにおいて不規則である。夜遅かったり、朝早かったり。

そんな不規則な生活の中でもいつも笑顔で出迎えてくれる彼女。

「すぅ―――…。」

無防備な寝顔がとても可愛いと思う。目をつむっているから普段見るより柔らかく見えるのだろうか?

「――――」

彼女の寝顔を見つめていると無性に触れたい衝動にかられてくる。

抱きしめて、キスをして……。

「そう言えば、しばらくご無沙汰だったな……」

彼女の頬に触れながらふと呟く。

ならば身体が気持ちが彼女を求めるのも当然のこと。

だが余りにも熟睡している彼女を起こししまうのも。

キスくらいしてもいいだろう。

身体の中を駆け巡る衝動を何とか抑えながら、バージルは彼女の唇にそっと自分の唇を重ねた。


温かくて、柔らかい……。


―――――溢れ出す想いはもうとまらなかった。

不知夜月