色褪せない想いを貴方に�A 苛立ち


灰色の空から降りだした雨は、もう一週間も続いていた。

今は梅雨の時期だから仕方ないのかもしれない。

ナーナは窓の外を眺めていた。

「ナーナ。コーヒーを容れたぞ。今日はお前の好きな……」

「ほっといてよバージル!!」

ナーナはバージルの手を払い除ける。

ガシャンッ!!


コーヒーカップが音を立てて砕け散り、
床にコーヒーが広がっていった。

「ナーナ!」

「ほっといてよバージル!もうこれ以上私に関わらないで!!」

珍しくナーナは感情をあらわにする。

ナーナは勢いよく部屋を飛び出して行った。

バージルは砕け散ったコーヒーカッブを拾う。

ナーナの苛立ちは分からなくもない。

だからといって投げやりになるのもいけない。

「……辛抱か……」

バージルは窓の外を見つめた。


土砂降りの雨。

ナーナの身体を雨が濡らしていく。

バージルが悪いわけじゃないのに、何故辛くあたってしまうの?

今度再発したら、私はもう生きて戻って来れない……。

『先月より血小板の数が減少して白血球が増えています。このままだと次に発作を起こしたら、命に関わります』

医師の言葉が頭の中を反芻していた。

バージルはこのことを知らない。


ナーナはふらふらと公園のベンチに座った。

「私は、私はどうしたらいいの……バージル……」

涙が溢れて止まらない。

「ナーナ……」

全身びしょ濡れで、銀色の髪は雨によって下ろされている。

「よかった……すぐ見つかって……」

肩で大きく息をしているバージル。

「こんな雨の中傘もささないで……」

バージルは青いコートをナーナの頭から被せた。

「帰るぞ」

頭にポンと手を置く。


なんでそんなに優しいの……。

優しくしないでよ……。

「バージル!!」

ナーナはバージルに抱きつく。

バージルは優しく抱きしめた。

辛いのは自分ではない。
ナーナなんだ。

「ごめんなさいバージル」

彼の腕の中で泣きじゃくるナーナ。

「俺はずっとお前の側にいる」

バージルはナーナの背中を優しく撫でた。


命尽きるその日まで、俺はお前の側にいる……。

不知夜月