色褪せない想いを貴方に�E 聖夜
12月24日。クリスマスイブ。
朝から降っていた雪が、夜には街のあちらこちらに降り積もっていた。
街中が雪化粧している。
「ホワイトクリスマスだね」
バージルの腕の中でナーナははしゃいでいた。
「こら、あまり動くな!」
ナーナはバージルにお姫様抱っこをされている。
自分の足で歩く事すら、今の彼女には難しい。
二人は雪道を歩いていた。
吐く息は白い。
空気は澄んでいて、二人の頭上には満天の星空が広がっている。
「身体は大丈夫か?」
心配そうに訊ねるバージル。
「不思議な事に全然平気。空も飛べそうなくらい……」
その心配をよそにナーナは嬉しそうに笑う。
「……そうか」
ナーナが笑顔ならそれでいい。
バージルも笑った。
二人が辿り着いたのは古びた小さな教会だった。
「ここって、教会?」
「ああ……」
バージルは入口の扉を開けると中に入って行った。
錆びれてはいるが、厳粛な空気が漂っている。
その空間だけ世界が違った。
「バージルが来たい所って、教会?」
「そうだ」
バージルは短く答えると、ナーナを抱えたまま礼拝堂の中を歩いて行く。
荘厳な空気が礼拝堂の中を流れていた。
不意にバージルは、祭壇の前で足を止める。
「バージル?」
いつもと様子が違う。
心なしか緊張しているような感じに見えた。
「ナーナ、立てるか?」
「えっ、うん……」
バージルはナーナを床に下ろした。
バージルに支えられながらナーナは自分の足で立つ。
祭壇の上に飾られた聖女像が穏やかに微笑んでいた。
祭壇に飾られた蝋燭の炎が、風に揺れている。
「バージル、何か始まるの?」
バージルを見上げるナーナ。
バージルはナーナの額にキスをする。
クリスマスイブ。
無人の教会。
それはまるで……。
「バージル、どうして……」
戸惑うナーナ。
私は明日をも知れない身体。
それなのにどうして?
「順序が逆になってしまったが……」
バージルはナーナのコートを脱がした。
純白のドレスが現れる。
ナーナの白い肌にそれは映えていた。
バージルはナーナの頭に白いベールを被せる。
「綺麗だ……ナーナ」
二人向かい合う形で立つ。
バージルはナーナの姿に目を細めた。
その眼差しにナーナの体温が一気に上昇する。
恥ずかしくて俯いてしまった。
やっぱり今日のバージル変!!
胸の鼓動は早くなるばかり。
「ナーナ……」
名前を呼ばれ顔を上げると、バージルの優しい瞳がナーナを見つめていた。
「俺と結婚してくれ」
「バージル……私……」
「俺の全身全霊をかけて、お前の全てを守り、愛する事を誓う」
力強い決意に満ち溢れているバージルの瞳。
「……私で……いいの?」
いつ終わるか分からない命。
あなたの側にいる事は迷惑なのではないか?
日々そんな思いにかられていた。
自分ではない他の誰かがバージルの隣に相応しいのではないかと。
「残り少なくてもいい、お前の人生を、俺に預けてくれ」
バージルはポケットから指輪を取出し、ナーナの左手の薬指にはめる。
そしてもう一つの指輪を取出しナーナに持たせ……。
二人の左手の薬指には、エンゲージリングが光っていた。
「バージル……」
ナーナは涙が溢れて止まらなかった。
バージルはナーナの涙を指で拭う。
「愛しているナーナ」
バージルの唇がナーナの唇に重なった。
カラン……カラン……。
教会の鐘が鳴り響く。
二人を祝福するかのように、高らかに鳴り響く。
――――二人の厳かな儀式が始まる。