色褪せない想いを貴方に�F ふたり*

肌寒さを感じナーナは目を覚ました。

見慣れない景色が広がっている。

一瞬自分が何も着ていない事に動揺するナーナであったが、彼女を包み込むバージルの身体に昨夜の事を思い出して赤くなった。

全く、神聖な教会で……。

ナーナが顔を上げると、バージルが見つめていた。

優しい色を帯びた青い瞳にナーナの胸がときめく。

「おはよう、ナーナ」

「バージル、おはよう」

自然と交わされるキス。

ナーナは幸せを噛み締めていた。


身支度を整えて礼拝堂から出る二人。

「眩しい」

太陽の光りが、雪に反射していた。

キラキラと輝いている。

真新しい雪の上に、誰の足跡もついていない。

「ふたり初めての協同作業です!」

ナーナは笑いながらバージルの手を引いて、雪の上を歩いた。

真っ白な雪の上に二人の足跡が残される。

「子供だな……」

そう言ってはみたものの、バージルの表情も笑っている。


二人はしばらく他愛のない遊びに熱中していた。


ナーナの白いドレスと白い雪が、太陽の光りを浴びて輝いている。

バージルは見失なわないように、ナーナの腕を掴もうとした。

その時だった。

身体を弓なりに屈め、ナーナは激しく咳き込んだ。

口を押さえる指の隙間から、真っ赤な液体が溢れ出してくる。

真っ赤な液体はナーナの白いドレスに真っ赤な華を咲かせていく。

そのままナーナは倒れこんだ。

真っ白いはずの雪が真っ赤に染まっていた。


………ナーナ!?


まるでスローモーションを見ているようだった。

「ナーナ?しっかりしろ!!」

バージルが抱き起こす。

息が荒い。身体が震えている。

「バー、ジ……ぐふっ!」

真っ赤な液体は留まる事を知らない。

次から次へと零れ落ちる。

「……ジル……ど……こ」

ナーナの手がバージルを探し宙をさ迷う。

「俺はここにいる!ナーナ!!」

目が見えないのか!?

バージルがその手を強く握る。

冷たい……。

明らかに低下しているナーナの体温。

「バ……ル……いる……の?」

細い指先が微かに動く。

「ここにいる!!」

「よか……った……」

ナーナは安堵した。

咳が治まったのか、呼吸は落ち着いてる。

「バージル、あなたに出会えて、幸せだった。……ありが、とう……」

「言うな!!」

確実に消えかけているナーナの命。

バージルにはどうする事も出来ない。

お礼の言葉など聞きたくない。

もっと側で、一緒に笑って、一緒に時間を過ごして欲しかった。

もっと我が儘を言って欲しかった。

「うふふ……。バージル、何だか眠くなってきたよ……」

ナーナが笑う。

優しく穏やかな表情が、最期の刻を告げていた。

「ナーナ、少し眠るか?」

バージルは溢れ出す感情を抑えながら言う。

「少し眠るね。おやすみなさい、バージル……」

ナーナはそう言ってゆっくり瞳を閉じた。

「ああ……おやすみ、ナーナ……」

バージルはナーナに最後のキスをした。

その顔は穏やかな表情だった。

……くっ……ぅ……。

バージルの瞳から、堪えきれずに涙が溢れ出す。

その声も、笑顔も、温もりも……。


もう聞く事も、見る事も、感じる事も出来ない。

「ナーナ――――!」


バージルの悲痛な叫びが虚しく響き渡った。


12月25日。クリスマス。

ナーナは愛する人の腕の中で、その短い生涯を終えた。

不知夜月