ダンテ編 Act.3
ダンダンダンッ!!
「ダンテ開けろ!!」
強い語気と共に激しくドアが叩かれた。今にもドアを壊しそうな勢いだ。
ダンテはハーッと溜息をつき、ナーナは慌てて起き上がり制服の乱れを直す。
「ドアは開いてるぜ」
頭をクシャクシャと掻きながら、ダンテはドアを開けた。
「ダンテ!!」
今にもダンテに飛びかからんばかりの形相のバージルがそこに立っていた。
「何か用かバージル?」
ダンテは不機嫌そうにバージルと対峙する。
「お前が嫌がる女生徒を無理矢理連れ去るのを見たのでな」
バージルはダンテを押し退けると、室内に足を踏み入れる。
彼は直ぐに床に座り込んでいるナーナに気が付いた。彼女の頬がほんのりと桜色に染まっているのをバージルは見逃さない。
「大丈夫か?」
「バ、バージル先生!?」
「ダンテの奴に何か変な事をされてないか?」
バージルは跪きナーナと視線の高さを合わせた。顔が近すぎてドキドキが止まらない。
近い、近すぎるよバージル先生!!
想いを寄せているバージルがこんなに近くにいて、自分だけを見ている。
青玉石色の綺麗な瞳に吸い込まれそうで、それだけでナーナは一杯一杯だった。
「どうした?何かされたのか」
憧れのバージ先生の顔がすぐ近くにあり、綺麗な蒼氷色の瞳が心配そうにナーナを見つめている。
「あ、あの……」
緊張の為か声が、言葉が、出せない。
バージルにはそんなナーナの様子が、ダンテに何かされたのではないかという疑念を持たせるには充分だった。
「おいダンテ!お前ナーナに何をしたんだ!?」
バージルは立ち上がりダンテを睨みつける。
「俺は何もしていない。減らず口のコイツに生活指導をしていただけだ!アンタが何をどう勘違いしているか分からないがな!!」
ダンテは苛立ちに拳をテーブルに叩き付けた。ナーナはその音に身体をビクッと震わせる。
二人の間に険悪な空気が流れ始めた。
「お前もバージルに何か言ってやってくれ」
ダンテは未だ床にペタンと座り込んでいるナーナに助けを求める。
確かにダンテ先生は私を押し倒して私の唇を奪った。でももとをただせば私が悪くてここに連れ込まれたのだし……。
ナーナは立ち上がりバージルを見上げた。
「……バ 、バージル先生」
「何だ?」
「私……その、ダンテ先生に生活指導されていただけで、何もされていません」
「………」
ナーナを見下ろすバージルの瞳が冷たかった。
「ダンテ先生には何もされていません」
バージルの冷たい蔑むような視線に一瞬怯んだナーナだったが、今はしっかりと顔を上げバージルを見つめている。
「では問うが、何故床に座り込んでいる?先程この部屋から凄い男がしたと言う証言があるが?」
バージルはダンテとナーナを交互に見遣る。
「それはだ、」
「それは、私が椅子から落ちた音です」
ダンテの言葉を遮りナーナはバージルに答えた。
「何故椅子から落ちなければならない?」
「ダンテ先生の言葉に驚いて、立ち上がろうとして椅子から落ちました」
ナーナは真っ直ぐにバージルを見つめる。
たいていの奴は俺の瞳に怯え、たじろぐ。だがこいつは違う。畏れず真っ直ぐ向かって来る。面白い女だ――――。
バージルはナーナの顎に手をかけた。
「バ、バージル先生!?」
「そもそもクラス委員までしている優等生のお前が、何をダンテに指導されていたのか知りたいものだ」
ナーナを見つめる瞳はうってかわって優しい瞳になっていた。
そんなバージルにナーナの胸は高鳴る。今までこんな表情のバージルは見た事がなかったからだ。
彼がいつも生徒に見せる表情はあまり変わらず、こんなにも優しい表情が出来るのかとナーナは思った。