ダンテ編 Act.4
バージルと見つめ合いうっとりしているナーナを横目に、ダンテはチッと舌打ちをする。
ナーナがバージルに好意を持っているのは分かっていた。だが実際に表情や仕草などを目の当たりにすると、無性に腹が立ってくる。
彼女がバージルに好意を持っている事を話したら、どんな態度を取るのだろうかと。そんなしょうもない事さえ考えてしまう。
「俺には話せないような事なのか?」
「いえ、あっ、その……」
「ならば、話してくれ」
更にバージルの顔が近付いた。
(ちょっと近い!近すぎだよ!! )
ナーナはチラリと横目でダンテを見た。彼は何かを考え込んでいるみたいだったが、視線に気がついたのかニヤリと笑う。
「……」
ナーナの背中に冷たい汗が流れ落ちた。
(あの表情のダンテ先生は何かを企んでいて危険だよ)
「バージル。こいつの口からは言いにくいだろうから、代わりに俺が何を指導していたか教えてやるよ」
ダンテはそう言うと二人に近づき、バージルからナーナを引き離した。
「ちょっ、ちょっと先生!!」
「いいからお前は黙っていろ」
「きゃあ!!」
ダンテはナーナの腰に手をかけ、言葉と共に自分の方へ引き寄せた。
「コイツには……」
――――彼は一体何を言うのか?
ナーナはゴクリと唾を飲んだその時だった。
『お呼び出し致します。バージル先生至急職員室までお戻り下さい』
スピーカーからバージルを呼ぶアナウンスが流れた。
バージルは何かを思い出したのか、ハッとして時計を見る。
「俺とした事が、すっかり忘れていた」
そして独り言のように呟き、ダンテとナーナの顔を交互に見やった。
「今回は不本意だがこの辺りで失礼する」
バージルの言葉に正直ナーナはホッとしていた。
「しかし、日を改めてこの件については聞かせてもらう」
やはり納得いかないのか、バージルはそう二人に言い残し去って行った。
「フゥ……」
ナーナは脱力したかのように、力なく再び床に座り込んだ。
ダンテも溜息をつきながらドアを閉めると、ナーナの向かい側に胡座をかいて座った。床の上で向かい合う二人。
「ねぇダンテ先生……」
「何だ?」
「あの時、バージル先生に何を言おうとしたの?」
まっすぐにナーナはダンテを見つめる。
「さてね」
ダンテははぐらかす様に笑った。
それはまるで悪戯っ子の様な笑い顔で、不覚にもドキッとしてしまった。
「はぐらかさないでよ先生」
「別にはぐらかした訳じゃない。知らない方が良い事もあると思ってな」
「何それ」
のらりくらりとダンテはナーナをかわす。
「まあ、良いか言っても」
「え?」
次にダンテの口から飛び出した言葉に、ナーナは唖然とするしかなかった。
「お前には好きな奴がいて、その相手は俺だと言おうと思ってた」
ダンテの言葉にナーナは瞳をパチパチとさせていた。
「先生酷いよ!」
「ハッ!酷いだと!?」
「だって先生は、私がバージル先生を好きなのを知っていて……」
スッとダンテの顔が近付きナーナはクイと顎を持ち上げられた。
「ナーナが誰に好意を持っていようが俺には関係ねぇ」
「……っ」
ナーナはダンテから顔を背ける。見つめる彼の瞳が恐かった。
「俺はな、」
グィッと背けた顔を戻される。ダンテのその瞳から逃れる事は出来なかった。
……その瞳を恐いと思うのに、鼓動が早くなるのは何故?
「俺はナーナが好きなんだ」
更に近付くダンテの顔は恐いくらいに真剣だった。
「何で……ふざけないで、よ……」
「俺は真面目だ!!」
「んっ!?」
ダンテの唇がナーナの唇を強引に塞いだ。優しく触れるのではなく、強引に貪るようなキス。
「んんっ!!」
ダンテの舌が強引に捩じ込まれて口内を犯していく。歯列をなぞり強引に舌を掬い絡め合わせる。
「ん……ふぅ……」
二人の混じり合った唾液が口角から零れ落ちた。
初めて感じる痺れるような感覚にナーナは何も考えられなくなり、このまま流されてしまいそうだった。
「あ……ふ……」
ダンテの手が制服の上からナーナの胸に触れた。ゆっくりと優しく胸をまさぐる。
ナーナはその感覚にハッとして力いっぱいにダンテを押し退けた。
「嫌だ……先生……」
流されそうになる自分が怖くなり、ナーナは涙目でダンテを見つめた。
「ナーナ?」
そこにいたのは先生ではなく、一人の男性であるダンテだった。
「いや……」
ナーナは後ずさりながらドアノブに手をかける。
「先生……ごめんなさい……」
ナーナはそう言い残しドアを開けると、体育教官室から逃げるように飛び出した。
「ナーナっ!!」
ダンテはナーナを追い掛けようとしたが、足が動かなかった。
呆然とその場に、ただ立ち尽くすだけだった。