バージル編 Act.2
「教室に戻るのか?」
そう言いながらダンテはナーナの隣を歩く。
ダンテとナーナ。
担任とクラス委員。
先生と生徒。
この二人もよく一緒にいる所を目撃されており、
『二人は付き合っているらしい』
と言う噂があるくらいだ。
ナーナにしてみると、ダンテが何かと付きまとってくる感じだ。
先生と生徒と言うよりは、兄妹みたいな関係だった。
「ねぇ先生」
「何だ?」
「……バー……ううん。何でもない」
バージルと言う単語を飲み込むナーナをダンテは見つめた。
ナーナがバージルに好意を持っているのは知っている。彼女が浮かない顔をしている時は、だいたいバージルが絡んでいる事が多い。
「バージルと何かあったのか?」
「!!」
ナーナの表情が変わる。やはり図星のようだ。
「何があった?」
「……残念ながら何もないです」
「その割には浮かない表情だよな?」
ダンテはナーナの頭にポンと手を置いた。温かい大きな掌が、ダンテのさりげない行為がナーナの心を軽くする。
「さっきね、バージル先生の所に明日の実験の準備の打ち合わせに行ったのだけど……」
ナーナは話し出す。気になっているバージルとアーカムの噂話を。
ダンテは話しを聞きながら、大笑いしていた。
「先生!?」
「悪い悪い」
お腹を抱えて笑っているダンテに何がそんなにおかしいのかと、ナーナは腹がたって仕方がない。
「バージルが男色かよ!!」
「だってそう言う噂なんだもん。アーカム先生が側にいても無表情だし、イヤなら態度に出すはずでしょう?」
態度に出さないってことは、一緒にいてもかまわないと言っているようなもの。
「ナーナそりゃ違うぜ?」
「違う?」
「あいつが無表情な時はだいたい困っている時で、あいつは男色なんかじゃない」
「えっ?」
ダンテの言葉にナーナの瞳が輝いた。
「それにな。男色なのはアーカムの野郎だ」
「……私が何か?」
突如二人の後ろから声がして驚いて振り向くと、アーカムが立っていた。
「「ア、アーカム先生!?」」
声を揃えて彼の名前を呼ぶふたり。
3人の間に冷たい空気が流れる。
「聞き違いなら良いのですが、私が男……」
「ああっ!!あんな所にバージルが!?」
アーカムの言葉を遮る様にダンテは声を出し、あらぬ方向を指を差す。
アーカムはバージルという言葉につられたのか、ダンテが指差した方を見た。
「(ナーナ、今だ!逃げるぞ!!)」
ダンテが素早くナーナを抱え上げる。
「(キャア━━!!どこ触っているのよ!!)」
「(我慢しろ!!)」
ダンテは風の様にアーカムの前から逃げ出した。
ひとり残されたアーカムはダンテに騙された事に気付き、苦笑いする。
赤と黄色のオッドアイが怪しく光ってた。
「ダンテ……」
廊下をナーナを抱えながら全速力で駆けていくダンテを、バージルは渋い表情で見つめていた。
何故いつもいつもダンテとナーナが絡んでいる場面に遭遇するのか……。
二人を見ると感じるこの胸の中のモヤモヤは……。
バージルはグッと拳を握りしめた。
ナーナは時間割と睨めっこをしてはため息をついていた。
「明日1時間目からアーカム先生の英語じゃん」
今日の出来事を思い出し顔をしかめる。
「サボっちゃおうかなあ」
だが明日はバージルの化学の実験の日でもある。
「でも明日はバージル先生の側に近寄れる絶好の機会なんだよね……」
ナーナは化学の教科書を見つめながら、いつしか眠りに落ちていた。