ダンテ編 Act.10

コンコンッ……。

保健室のドアをノックする音に、ふたりは慌てて離れた。
どうやら鍵は掛けられていないようだ。

「失礼いたします」
声と共に礼儀正しく保健室に入って来たのは、バージルだった。
「よおバージル。どうしたんだ?」
ダンテがひょいと顔を出す。
「ナーナが具合が悪くなったと、トリッシュから聞いたからな」
バージルはダンテの顔を見ると途端に不機嫌になった。
「何か頭痛がするらしくてさ」
ダンテはベットを指差す。
「……そうか」
バージルは短く答えると、ナーナの寝ているであろうベットへと足を向けた。

「ナーナ、大丈夫か?」
仕切りのカーテンを開けベットサイドに立ったバージルは、心配そうにナーナを見つめた。
「バージル先生すみません。その、ご迷惑をかけて……」
昨日の今日でやっぱりバージルの顔をまともに見る事が出来ずにいた。
「少し顔が赤いな……熱は?」
優しいバージルの表情にナーナの胸は罪悪感でいっぱいになる。
ダンテと話しをする為に授業をサボったのだから……。
「熱は……?」
バージルの問いかけに『ないです』と言おうとした次の瞬間、スッとバージルの顔が#近づいた。
いきなりの、どアップにナーナは固まっていた。
「(やっぱり昨日連れ回したのがいけなかったか?)」
バージルのおでこがナーナのおでこにくっつけられている。
「(ち、違います!)」
小声で会話するふたりの、聞き耳を立てるダンテ。
「(バージル先生……近い、近すぎます!!)」
「(そうか?)」
少し顔を動かせば唇が触れる距離。
(唇……?)
昨日の帰り道は寝ていた。あれは起こされる前だ。唇に微かに何かが触れたのを思い出した途端、心拍数がドッと上がるった。
(こんなに先生の顔が近いんじゃ、熱なくても体温が上がっちゃうよ!)
「少し熱があるな……」
バージルはナーナの心の声が聞こえるはずもなく、顔を離し呟いた。
「ダンテ。ナーナが熱があるみたいだぞ」
「マジか?」
バージルの言葉にダンテが飛んで来る。
実は仮病でしたとは言いにくい。

バージル先生が真剣に心配してくれてるから、本当に具合が悪くなってきたかも……。

胸の痛みを感じながらナーナは、ふたりを交互に見つめた。
「あの……大丈夫ですから……」
「無理はしない方がいい」
バージルはちらり時計を見た。
今は13:50。5時間目の授業終了まで40分をきっている。
「ナーナ。今から5時間目が終わるまでまだ時間がある。少し眠った方がいい」
優しいバージルの言葉に胸がトクン、と騒ぎ出す。ナーナはコクンと小さく頷いた。
「さて。ダンテはここにいるとナーナの睡眠の邪魔になりそうだ。だから俺と一緒に来てもらおう」
バージルはダンテに目で合図を送る。
ダンテその意味を理解していたが『へいへい』と気乗りしない返事をした。
「よく休むように」
「また後でな」
対象的な言葉を残し、ふたりは保健室から出て行った。

ひとり残されたナーナは天井を見つめ溜息をついた。
「びっくりした。いきなりなんだもん。バージル先生の……」
そっと額に手をあててみる。
何だかバージル先生が前より近い様な気がするのは気のせいだろうか?

確かに昨日の今日だけど……。

そんな事を考えているうち、ナーナはいつしか深い眠りに落ちていった。

不知夜月