2.それぞれの恋愛事情其ノ壱
奈々は獅子丸に告白し、ふたりは付き合う事になった。
お互いに一目惚れだった。獅子丸からOKをもらった奈々は、空でも飛べそうなくらい幸せな気持ちで帰宅した。
早速母親であるナーナに報告をする。
「お母様聞いて下さい。私、彼氏ができました」
夕飯の用意をしている母親に奈々は話し掛けた。
「ひょっとして、獅子丸くんかしら?」
母親は驚いてくれるかとワクワクしてたのに、逆に私が驚かされた。
「どうして知っているの!?」
「豪毅さんから前にね」
「えっお父様が!?」
あの時父親と獅子丸は会ったから、もしかして……。
「それにしても、縁と言うのは不思議なものね。あなたと獅子丸くんなんて」
「ちょっとお母様?まるで獅子丸さんの事知っているみたいに言わないで」
「獅子丸くんではなく、彼のお父様の桃……いえ桃太郎さんの事ならよく知っていますよ」
「剣のおじ様を?」
何故よく知っているのか驚きさめやらぬうちに母親は理由を話した。
「この事は豪毅さんには内緒ですから。貴女の心に留めておいて下さいね」
そう前置きしてナーナは話しだす。
「獅子丸くんのお父様剣桃太郎さんと私は幼なじみなのよ」
互いの母親のお腹にいる時からの知り合いだと。
「え━━━━っ!!」
まさに事実は小説より奇なり。
「そして桃太郎さんは、私の初恋の人なのよ」
母親は40代である。3人子供がいるのに、しかも成人が2人。見た目はどう見ても20代にしか見えない。そんな母親が少女のように頬を染めた。
「だからお父様は、お母様が剣のおじ様とお話されるのを嫌がるんだ」
年に数回桃太郎は藤堂家を訪れる。奈々も彼には何回か会った事がある。
精悍な顔つき。父親・豪毅に負けず鍛え上げられた体躯。そして穏やかで優しい人柄。
たしか前の総理大臣だったような……。
二人が仲良く話しをしていると、父親の豪毅は面白くなさそうな顔をしているのを知っている。何故なんだろうと思っていたが、母親の言葉で納得した。
「お父様ってかなりやきもき焼き?」
「そうよ。貴女も覚悟しておきなさい」
「えー、そんなぁ」
「それにしてももし奈々が獅子丸くんと結婚したら、我が家には素敵な家族が出来るわね」
「お、お母様!!」
悪戯っぽく笑う母親は可愛いい。おっとりとしていて、男ならきっと守りたいと思うだろう。そしてこんな女性だから、きっと父親は惚れたんだなと思う。
「ところでお母様?おじ様と幼なじみ同士なら、どうして別々の道を選んだの?」
ふと沸き起こる疑問。
「そうね……」
「お母様?」
そう言ったきり口をつぐみ、ナーナは遠くを見つめた。
“ピンポ―ン”
玄関のインターホンが鳴り響く。
「あら。豪毅さんが帰ってらしたわ」
ナーナは慌てて玄関に迎えに出る。
結局母親は話してはくれなかった。
「なんだろうこのモヤモヤ感」
父親と母親は、どんな恋愛をしてきたのだろうか。そして剣のおじ様と母親は、どうして結ばれなかったのだろうか。
(もしおじ様とお母様が結ばれてたら、私と獅子丸さんは生まれていない)
獅子丸と奈々の出会いが、ひそやかに縁を結び付ける。
「人の出会いって何て不思議なの」
今度彼に会ったら話してみよう。不思議な縁の話しを。
そんな事を考えながら奈々は父親を出迎えた。