【24.二週間】
目を覚ますと東郷の顔がそこにあった。
「ラース気がついたか!!」
「東郷……俺は一体?」
「ここは三島財閥の軍病院だ。お前はナーナさんの件で頭首と対峙して、今までずっと昏睡状態だった」
「俺は、どれくらい眠っていたんだ?」
「二週間だ」
「二週間だと!?」
東郷の言葉に驚くラースだったが、彼の論理的な的確な説明に納得せざるをえなかった。
「くっ!!」
「無理をするなラース」
起き上がろうとして激しい痛みにラースは顔をしかめる。身体中が悲鳴を上げていた。
「すまない東郷」
東郷の手を借りて何とか上半身を起こす事が出来たラースは、
「ところでナーナさんは、頭首の所に戻っているのか?」
気掛かりなナーナの事を口にした。
情事の後シャワーから戻ってきたラースの目に映ったのは、乱れたシーツとソレの残骸だけ。ナーナの姿はそこになかった。
本当は、仁の元からナーナをさらってでも自分の物にしたかった。
身体が欲しかった。
心が欲しかった。
全てが欲しかった。
けれども、それはできなくて……。
抱かれながら、愛撫に濡れながら、ナーナは泣いていた。
もっと他にナーナを手に入れる方法はあったかもしれないが、ラースには時間がなかった。
結局、愛おしい女性を抱いた喜びの後に残ったのは、虚しさだけだった。
だからラースは情事後姿を消し、ナーナをわざと逃がしたのだった。
「ラース言いにくいんだが、ナーナさんは頭首の元には戻っていない」
「!!」
ラースの問い掛けに言いにくそうに口を開いた東郷だったが、続く言葉に眩暈すら覚えた。
「最悪な事に、三島一八の所にいるらしいんだ」
捕まったのか、自ら奴の所に行ったのかは分からないらしいが、これは確かな筋からの情報。
「なん……だって!!?」
頭を鈍器で殴られたような強い衝撃が身体に走る。
自分が引き起こした事柄が最悪の事態へと発展している事に、ラースは初めて痛みを感じた。
「頭首は、仁は動いてないのか!?」
「動きたくても動けない状況で、今は様子を見ているそうだ」
「くっ!!」
ラースは身体に繋がれていた医療器具を取り払うとベッドから飛び出した。
身体に走る激痛を堪えながら、壁に掛かっている私服に手を伸ばす。
「ラースっ!」
「止めるな東郷!!」
「今のお前の状態では死に行くようなものだ!?」
満身創痍。普通ならば足を腕を身体を動かす事など出来ない状態で、いくらラースが鍛えられているからといっても、かなりの激痛を感じているはずだ。
せめて傷が完治してからにして欲しい。
「お前に万が一の事があったら、アレはどうなる?決行は間もなくなんだぞ!?」
「それでも俺は行かなくてはならない。それがナーナさんを抱いた俺………うっ!!」
東郷の手刀がラースの首筋に振り下ろされる。いつもなら楽々避けられるそれだが満身創痍のラースはまともに喰らった。
「すまない、ラース」
「とう……ご……」
薄れゆく意識の中で東郷の辛そうな顔がやけに印象的だった。
不知夜月