F6



目が覚めると高校生だった。

いやいやいや。花厳は思わず口にする。納期に間に合わせる為に徹夜して、そのまま納品してから家で即寝たはず。何もこんな、妙に高そうな制服を着て高級感溢れる建造物だらけのベンチには座らなかったはずなのだ。「もうお昼終わっちゃうから早くご飯食べたら」なんて言う友人らしき人物にも見覚えはない。


「いくら暖かいからって食べながら寝るー?また徹夜して服作ってたんでしょ」
「え、う、うん……」
「昨日も授業中寝てたし」


授業出てたんだ、というよりもどうやらお昼寝キャラを確立してしまっているらしい。もしかしたらこれ、夢かも。そうだ夢だ。そう思い始めてミニトマトをかじる。少しすっぱい。
あと十分しかないよ、と急かす友人が突然立ち上がった。


「ややややヤバイ!F6がいる!」
「F6?」
「ホラ!花厳あそこ!」


黄色い歓声があちこちから上がる。噴水の近くで、何人かの男子生徒の姿が見えた。赤や黄色、緑の派手な髪色。染めてるのかな、とも一種のコスプレかな、とも判断がつかない。遠目からわかる溢れんばかりのキラキラオーラに目が眩んだ。


「こ、こっちにくるよ!?どうしよ花厳!!」
「いや、そもそもF6って……」
「服ばっかり作ってるからもう!学校のアイドルじゃん神じゃん!」


キャアア、と声にならない叫び声を上げる友人の奧からF6なる人物達がたくさんの女子生徒を引き連れて歩いてくる。友人の言葉は正しいらしい。赤い髪の男子生徒が先頭に、黄色、緑、紫、桃、青。カラフルな彼等の顔は驚く程整いながらもとても似通っている。


「キャー!十四松くーん!」
「じゅっ……!?」


めちゃくちゃ聞き覚えのある名前を連呼される彼等は愛想良く手を振っている。おそ松くん、トド松くん、と至る方向から歓声が飛ぶ。確かに似た六人だけれど、何か、何もかも違うというか。こんな華々しいオーラを背負っているはずのない六人にやはり夢だと確信した。
疲れてるんだろうな、ともう一つミニトマトを口にする。ぷちっと口の中で弾けたすっぱさに目を細めると、青い髪の男子生徒と目が合った。
キリッとした眉と、ほんのり下がった目が大きく開かれる。着崩した制服からネックレスが見えた。
他の五人から外れ、突然こちらにツカツカと歩み寄ってきた彼に友人が「カラ松くん」と叫ぶ。カラ松くん?
彼は私の膝に当たるくらいの至近距離まで来ると鋭い目付きで睨むように見下ろしてくる。手元からミニトマトのヘタを落としてしまった。


「オイ」


声はそのままカラ松くんだ。随分様変わりしてるなあ、と返事もせずにポカンとしてると弁当を無造作に押し退けられぐいっと腕を引っ張られた。背も随分高くなっている。隣で同じくポカンとしている友人を見ると、更に強く腕を引かれた。


「えっ、あの」
「黙って俺について来い」
「ど、どこに?」
「黙ってろ」


カラ松くんだけどカラ松くんではないらしい。振り向き様に友人に説明と助けを求めたけれど、どこかから昼休みの終わりを告げるチャイムが響くだけだった。
腕を引く力は強いけれど痛くはない。いくつかの階段を上がるにつれて息も上がる私を気遣っているのかいないのか、半ば引きずられるように屋上まで来た。屋上も完璧なまでに整えられたガーデンだが昼休みも終わったので人気はない。着くや否やカラ松くんは屋上の扉を閉める。カチャ、と音がした。


「……あの?カラ松……くん?」


またもや手を掴まれ、綺麗に揃えられた芝生の上に連れられる。蔦の絡んだ屋根の下で青い髪の毛が暖かい風に吹かれる。睨むような表情に少し後退る。とても綺麗な顔には威圧感まである。夢の中だけど、もしかして何かしてしまったのだろうか。焦る私の顔にカラ松くんの手が伸びてきた。


「な、何?カラ松くん、どうし」


唇に当たった軽い衝撃に言葉と感情が追いつかなかった。顎を引かれ、そのままカラ松くんの顔がぶつかってきた。何が起こってるのか。離れようとすると手が後頭部へと移動してきた。もう一方の手が私の腰を拘束する。ぬるり、と舌が入ってきた。


「んッ……ん……!」


ちょっと待って。カラ松くんと呼ばれてはいたけれどカラ松くんではない。声や香水の匂いはそのままだけどこんなカラ松くんは知らない。抵抗しようとしても固い胸板が離そうとしない。力強い腕と、私の舌を絡めて上あごを擽る動きは正しくカラ松くんのものだ。呼吸もままならず、混乱してきた私に、カラ松くんは覆いかぶさってくる。のけ反るように抵抗するとそのまま芝生の上になだれ込んだ。ちゅ、ちゅっ、と何度か音を立てて離れていくカラ松くんの顔。濡れた唇を舐める仕種が酷く、カラ松くんに似ている。


「はぁっ、はあっ……!何するのカラ松くん……!」
「……お前、誰を見てた?」
「誰って……」
「十四松を見てたのか?」


質問というより確認するような口調。責め立てる謂れはないと思うけれど、カラ松くんは私の上からどいてくれない。


「十四松くんを見てたとしたら、どうなの?カラ松くん私……これ、何がどうなって」
「また寝ぼけた事言ってんのかマヌケ」
「……カラ松くんにしては口調が強いし」
「俺以外を見てたお前が悪い」
「え?」
「お前が誰のものなのか教えてやらなきゃな」


カラ松くんの手が胸元のリボンに伸びる。慣れた手つきで外されて、ブラウスのボタンに長い指が触れた。理解が追いつかない。一つ、二つ。三つ目を外されそうになって漸く思考が働いて、慌ててその手を制止した。


「な、何やってるの!どいて!」
「俺に指図すんな」
「指図とかっ、そんな……!」
「痛くされたくなきゃ大人しくしてろ」


両手を芝生に縫い付けられ、カラ松くんの顔が開けた私の胸元に埋まる。覗いていたブラのワイヤーを噛むとぐいっと上に押し上げられた。


「やっ……だ、やだっ」
「うるせえっつってんだろ」


ブラウスの上から、守るものの無くなった乳房を噛まれた。痛くはないその刺激に乳首がブラウスを小さく押し上げる。それを見てカラ松くんが低く笑った。


「今ので感じてんのか?花厳」


布越しに唇で挟まれたっぷりと唾液を乗せた舌で嬲られる。じれったい曖昧な愛撫にも何故か腰が跳ねてしまう。逃げようとして立てた踵をカラ松くんの脚が遮った。


「透けてるぜ。厭らしい女だな……」


唾液で濡れた白いブラウスは淡いピンク色になっている。一気に羞恥心が襲ってきて力を込めた両手に指が絡められる。抜け出そうとしても大きくて力強い手は解けてくれない。抵抗する私を鼻で笑ったカラ松くんは素肌に顔を埋めた。鼻先でブラウスを押し退け、今度は直に乳房を舐める。


「ひっ……!」
「物足りなかったろ?」
「い、やぁ……っ」


唇にしたように、ちゅっ、ちゅっ、と音を立てて乳首を吸い上げられる。木漏れ日に青い髪が光るように流れて、カラ松くんの髪もサラサラな事を思い出した。夢なら早く覚めてほしい。声も匂いも、仕種だって似ているけれどカラ松くんではない。ぎゅっと目を瞑った私の脚の間に固い膝が押し当てられた。


「ひゃっ、ぁ」


敏感な部分を無遠慮にぐりぐりと押し上げられて力が抜ける。それを見計らってか、両手を一まとめに掴みあげられ、スカートをたくし上げられた。ショーツの上から確かめるように長い指が何度か行き来して、一気に下ろされる。膝を通り、ローファーを慣れた手つきで脱がされ脚を開かされた。私の左足に跨がるカラ松くんは閉じようとする膝を拒む。生々しさにカラ松くんを見上げるとまたキスをされた。角度を変えながら舌を翻弄されどうしようもなくて流し込まれる唾液を飲み込むと、長い指がそこに入ってきた感覚。カラ松くんしか知らないそこを、解すように指が動かされる。お腹側を軽く引っ掻く指遣いがカラ松くんそのままで抑え切れない声が漏れた。


「ゃ、やあっ……!あっ、ぁ」
「嫌、とか言える立場か?すげー濡れてるぜ」
「わ、たし、何、っこれ」
「……あ?お前は俺のものだろ。花厳」
「い、や、カラ松くん……っ」
「……まだ嫌って言うのか?なら、体で思い出させてやる」


そう言って、指が無造作に引き抜かれる。自分でもわかるくらい濡れてるそこを見下ろしたカラ松くんが自身のベルトを外し始めた。背筋がぞっとして逃げようとした私を強く抱き竦めてくる。やだ、やだ。身動きならないまま言葉で抵抗すると脚を開くようにカラ松くんが割り込む。宛がわれた感触はよく知ったものだった。


「―――や、だやだやだ!や、ゃっ……!あっ、あ!」


ぐぬ、と押し込まれてくるカラ松くんの雄はいつものように私の粘膜を掻き分け、当たり前のように奥深くまで届いてくる。いつの間にか解放されていた両手でカラ松くんの肩を押したけれどやっぱりびくともしない。はあ、はあと大きな肩が意外にも上下していてカラ松くんの高い体温を感じた。


「く、力抜け。動くぜ」
「ま、って、抜いて」
「抜くわけねーだろっ」
「ひっ、ぁあっ!」


ずるりと引き抜かれて一気に奥を突き上げられ、目の前がちかちかとした。びくん、と私の脚が跳ねたのを皮切りに続けて突き上げられる。ああ。カラ松くんだ。この感覚はカラ松くんなのだ。姿も性格も違うのに私を求めて、愛してくれる感覚はそのままカラ松くんだ。


「うぅっ、あ、カラ松くんっ、カラ松くんっ」
「……っは、どうした」
「や、やあ、っん、カラ松、くん……っ」
「ああ。ちゃんといる。……怖いか?」
「こわ、いっ」
「俺にしがみつけ。何も考えるな」


低く囁かれて、カラ松くんのシャツを掻き抱くようにしがみつく。涙でぼやけた視界の中に黒い髪を汗で濡らしながらこちらを窺うカラ松くんがいて、切なくなって肩に顔を埋めると律動が速くなった。フッ、フッ、と獣じみた吐息が耳たぶを打つ。ぐちゃぐちゃに犯されて我慢できなくて襟から覗く首筋に歯を立てると、皮膚の下の血管がどくどくと脈打ってるのを感じた。


「っ、くそ、可愛い事すんじゃねえよっ」
「んッ!んぁ、あっ、あっ!」
「あぁ、堪らねえ……花厳、花厳……っ」


どっちの汗かわからない程に密着して、流れた涙も汗に混じってカラ松くんの顎を濡らす。それに気付いたのか、がつがつと動くのはやめずに唇を奪われた。舌先を絡め、深くまで味わい、熱い吐息まで吹き込まれて自分の中がぎゅうっと締め付けたのがわかった。


「んッ、は……!ふッ、中、ビクビクしてるぜ……わかりやすいな、お前……っ」
「あ、あっ、や、やぁっ……!そこ、や、いや、あっ」
「ここが良い、の間違いだろ?」


お腹側を引っ掛かれて胃の奥が熱くなる。そう。そこが、好き。カラ松くんにそこを突かれて引っ掛かれるのが好き。喉が勝手にカラ松くんの名前を呼ぶ。赤くなった目尻が柔らかく細められるのがカラ松くんそのものだった。


「ひっ、あ、ぁっ!カラ松くんっ、や、いやぁっ」
「く……っ、全部俺のものだ……目も耳も、この唇も、この体も、心も……ッ」
「はう、ぅっ、んん、あっ……!」
「は、はッ、く……!イく、くっ、花厳ッ」
「や、あ、ゃあ、っぁ―――ひゃあっぁっ、あ……っ!!」
「うッ、ぐ……っぁ!」
「あッ……!あっ、ぁ……っ」


奥深くで吐き出された熱さに背筋が大きく震える。達した余韻でまだびくつく私の体をきつく抱きしめたまま、カラ松くんは恍惚とした吐息を漏らしながら何度も睦言を呟いた。




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