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「チョロ松くん、おはよう。待たせちゃった?」
「僕も今来たとこ、ろ」
おはようなんて言葉も、どこの店に行こうか、なんて提案もどこかに吹っ飛んだ事だけはわかった。いつもの花厳ちゃんの、いつものラフな格好ではなくて。黒い髪の毛が今日は襟足だけ下ろされている。揺らぐそれから覗く耳に白いイヤリング。同じく白いブラウスがほんのり眩しくて、ふわっと靡いたスカートに乗って何だか良い匂いがした。
「どこ行こっか」
はにかむ花厳ちゃんが花厳ちゃんではないような気さえした。
▽
「面白かったね」
「ウン」
氷さえ溶けてしまったドリンクをズズッと啜る。生ぬるい薄い甘みが少しだけ舌を濡らす。
いや、内容なんて全っ然覚えてない。だって隣に座ってる女の子から超絶良い匂いするんだよ?そりゃあさ、普段の花厳ちゃんも良い匂いするよ?でもさ、今日の花厳ちゃん何かつけてきてるのかな?女の子ー!って匂いするんだよ!ポップコーン一緒に食べようとかさ、もうマジでデートじゃん!
「チョロ松くん、どうかした?」
「エッ、あ、いや!つ、次どこ行こっか!」
「お腹減ってる?」
減ってるか減ってないか、鑑賞中にポップコーンを食べたか否かも覚えてないです。「お腹減ってないなら軽いものでいい?」いいです!
「ここからすぐの所に美味しいホットサンドがあるんだって」、と笑う花厳ちゃんの後頭部で髪留めがキラキラ光る。いつもの挟むだけのクリップじゃない。花厳ちゃんに促されるまま、花厳ちゃんの隣を歩く。ほんの少しのヒールのおかげで花厳ちゃんの頭がいつもより近い気がする。サラサラした黒髪が白いうなじを擽っているのに気付いて叫びだしたくなった。
「やった、並んでない!さすが平日。チョロ松くん何食べる?」
「ぼ、僕は……これで」
看板に書かれた人気一位の写真を指差すと花厳ちゃんがワゴンに近付き注文を済ませる。はっとして財布を取り出すとやんわりと制止された。
「さっきのお返し」
お返しって、ああ、映画だ。普通は男の方が出すものだと思うから二人分、そう。それ。あー、それね。紙袋とドリンクを受け取り空いたベンチに座る。
「美味しそうだよチョロ松くん!」
うんそうだね、美味しそうだね。呼ばなくても聞こえてるから大丈夫だよ。「チョロ松くんはこっちだね」と手渡された人気一位のやつは既にとろけたチーズがはみだしている。花厳ちゃんといえばオススメを頼んだらしく、「いただきます」と呟いてから花厳ちゃんらしくかぶり付いている。
「……美味しい!美味しいよチョロ松くん!」
「何入ってるの?」
「マシュマロチョコバナナだって。おひとつどうぞ」
「あ、じゃあ僕のもひとつ」
「いいの?ふふ、ありがと。半分こだ」
ん゛ん゛ッ。喉を強く鳴らした僕に花厳ちゃんは不思議そうにしながらもまたぱくっとホットサンドに齧りつく。色んな気持ちを押さえ込もうと僕もホットサンドにかぶり付くととろりとしたチーズが伸びた。
「うわ、美味しそう」
「ん、ん。美味しいよ」
「マシュマロも伸びるんだよ」
「……ほんとだ」
チョコレートのついた唇をぺろりと舐めた仕草に服の上から胸を押さえる。様子のおかしいであろう僕に「大丈夫?」と聞いてくれる花厳ちゃんに全力で否定する。
「」
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