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業務終わり、戌亥のお好み焼き屋への道中。マサルの突然の言葉に面食らった。
「いきなりどーしたのマサル」
「いや、高田さんの事はイケメンって言うじゃないスか?でも一番仲良いのは柄崎さんとか加納さんでしょ?理想と実際付き合う男にギャップがあるタイプ?」
「マサルてめー俺達に喧嘩売ってんのか?」
「マサルは正直に言っただけでしょ」
お前らは特にイケメンではないのだから。そりゃあ高田はイケメンだよね。顔もだけど仕草とか気遣いがさすが元ホストらしくて。それに比べて柄崎達はバカだからね。比較のしようがないね。
「ホストとか行くんスか?」
「取り立てでしか行ったことないよ。高田の事は心からイケメンだと思うし、柄崎達とは幼馴染みだから」
「やっぱ高田さんが好み?」
「好みかって言われるとうーん?いや、高田マジで良い男よ?口説かれたらわかんないよ?」
「マサル、いい加減にしろよ。花厳さん困ってるだろ」
ほら、気遣いできるし。付き合うなら高田みたいなやつが良いだろうね、と言うとマサルが笑う。
「花厳さん今男いるんスか?」
「こらマサル。お前女性に対してズケズケ聞きすぎ」
「コイツ昔っから男ッ気無ェからな。バカだから」
「誰がバカだよ。お前こそモテない癖に」
「彼女くれーいるっつーの」
「いるのかよ!?初耳!え?どんな子?写真とかある?すごく見たい」
「どうせキャバの女だろ」
「お前はデブ専のやつのだろ」
やいのやいの言ってると前を行く社長が立ち止まった。必然的に皆の足が止まる。
「どうかしました?社長」
「うさぎに餌やってから行く」
「あ、ハイ」
「花厳、冷蔵庫にビールあと何本あった?」
「昨日飲んだからあと三本…………あ?」
「買っとくわ」
すたすた歩き出した社長の背中を見送る。と、同時に残された全員の視線がこちらに向かう。特に柄崎の眼光がヤバイ。
「……え?花厳さん、もしかして社長と」
「アッ、いや、はは?いやいや……」
「テメェ、一体どういう事だァ!!?アァ!!?」
「うわこっわ!!いや、社長!!お願い行かないで社長!!柄崎ヤバイから!!!」
「テメェ内容によっては沈めんぞ!!!」
「どこにだよバーカ!!お前が東京湾に沈んでこい!!」
▽
「あー、そう。知らなかったの?花厳ちゃんと丑嶋くん同棲してるンでしょ?」
戌亥はお好み焼きをコテで切り分けながらビールを煽る。柄崎に締め上げられた腕が痛い。そのあと一本背負いで返したので加納に止められた。めちゃくちゃ機嫌悪そうな柄崎に睨まれながら飲むビールの美味しくないこと。
「同棲だとォ……!?」
「だから何で柄崎がキレるんだよ……いいじゃん同棲。付き合ってるんならさ」
「…………いや付き合おうとかそういう話になった事はないんだけど」
「でも同棲しようって言ったのは丑嶋くんの方からでしょ。それもう付き合ってるから。自信持っていいよ花厳ちゃん。あの丑嶋くんだよ?」
まあ、はい。信頼してるからね。遊びで社員に、昔馴染みに手を出すような男ではないと知ってるからね。
「でも何か、ちょっと意外っスね。あの人女に興味なさそーだから」
「うん、興味はないだろうね。花厳ちゃん意外には。丑嶋くんも一筋だねぇ」
「まっ……て戌亥、柄崎の顔がヤバイし何か照れてきたから」
「花厳ちゃん昔からずっとモテてるから丑嶋くんも心配なんだよ」
ね?なんて戌亥の目が細められる。全部見透かしているような目は多分職業病だ。深く頷くと「大変だね」、と笑う。未だにちょくちょく連絡してくるあいつをどうにかしてほしいくらいだからね。
「お前は沈めるとしてよォ!社長も、何で俺に黙ってるんだよ……!」
「柄崎さんがそういう反応するからじゃないですか……?」
「うるせぇよ高田ァ!」
「社長がどっか適当な女と付き合ってる方が良かったか?」
「あぁ?……おう……いや、信用できねェし……」
「なら花厳が一番良いじゃねぇか」
加納の言葉に柄崎が立ち上がる。「ションベン」、と言いながらズカズカと行ってしまう。
「柄崎、社長の事大好きだからなぁー……何か悪い事したな」
「それだけじゃねえから大丈夫だ。色々複雑なんだよあいつも」
「そうそう。ホント大変だねぇ、花厳ちゃん」
高田も「あー」、と頷く。わかっていないのは私とマサルだけらしい。キョロキョロしてるの可愛いからたくさん食べなマサル。
「あれだけ怖くて厳しい人ッスから、どんな感じか気にはなりますね」
「それは俺も気になるな。丑嶋くんって家でどんな感じなの?」
「どう、って普通にうさぎと戯れて時々ゲームしてるけど」
「イメージと違いませんね……」
「マメで几帳面な丑嶋くんの事だから花厳ちゃんの事大事にしてるとは思うけど」
「……もうこの話いいでしょ。興味を持つな正直死ぬほど恥ずかしい」
項垂れると戌亥がからからと笑う。こいつわかっててやってるな。
「これは丑嶋くんからも聞きたいねぇー、話してくれるかな?」
「話さないでしょ社長だよ……」
「俺の見込みではそこそこ長い事付き合ってると思ってるんだけど、どう?そうだなー……花厳ちゃんが入社したくらい」
「戌亥やめて?お前の情報網すごいのはわかったからもうやめて?もうやだセクハラじゃん」
「花厳ちゃんが男だったらまだ根掘り葉掘り聞くんだけどな」
「はい私もお手洗い行きますー!!熱々のコテで唇ジュッとなれ!戌亥!」
▽
「からかいすぎだぞ戌亥」
「花厳ちゃん面白いからね。それに皆も気にはなるでしょ。あの丑嶋くんとあの花厳ちゃんだよ?なんかもう面白いよね。意外っちゃあ意外で、当然っちゃあ当然な感じが」
照れた顔可愛かったなあ、なんて思っていると店の入り口がガラリと開いた。暖簾を潜る大きな体躯。すごく良いタイミングで来た。
「やあ、丑嶋くんお疲れ」
「お疲れ戌亥」
「まー、とりあえず座りなよ。今丑嶋くんの話してたんだよ」
母が持ってきたビールをごくごくと飲む丑嶋くんを高田くん達が見つめる。やっぱり皆気になってるじゃない。
「花厳ちゃんと同棲の話」
「あぁ」
「どう?楽しい?」
「普通」
コテを手にお好み焼きを頬張る丑嶋くん。花厳ちゃんと違って全然動じてないのは彼らしい。
「あーっ、社長ォー!!」
戻ってきた柄崎が丑嶋くんの隣に座る。本当、丑嶋くんの事好きだなこいつ。
「聞きたい事だらけっスよォ!!もぉ!!何で言ってくれなかったンスか!?」
「お前がうるさいから」
「やっぱりじゃないですか」
「うるせェーぞ高田ァ!」
「花厳ちゃんに色々聞きたかったんだけど、逃げられちゃった。俺としては結構興味あるんだけど」
「ンなとこまで仕事してンじゃねェーぞ戌亥」
ま。教えてくれるとは思ってないけどね。
「花厳ちゃん、家ではどう?」
「うさぎに埋もれてる。いつもと何も変わンねーよ」
「社長の家のうさぎ多いですもんね。埋もれたい気持ちわかります」
「わかる。埋もれたい。埋もれてる花厳ちゃんも見てみたい。写真とかないの?」
「ない」
「うわっ揃ってる」
お手洗いから戻ってきた花厳ちゃんに丑嶋くんがチラリと視線を向ける。あー、これ、何事もないか確認したんだな。何だかんだ丑嶋くん独占欲強いからなぁ。
「聞きたかったらこいつに聞けよ」
「は!?まだ話続いてたの?もういいって!」
「じゃあまた今度根掘り葉掘り聞くね」
「聞くな!」
ぷんすかしながら丑嶋くんの隣に座る花厳ちゃん。加納の言う通り、花厳ちゃん以外で丑嶋くんの隣にいる事のできる女の子っていないだろう。なるべくしてなってる気がする。うん。
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