焦がれてる



「このバカ二人が一人に寄って集って大勢でリンチしたって聞いた時は絶交してた。マジで」
「本当あの時はすみませんでした社長」
「結局二人ともすごい事になってたね。社長、何したんですか?」
「電球咥えさせて殴った」
「えっぐ……うわ……自業自得だけどうわ……」
「社長達の地元荒れすぎでしょ……」
「花厳さんもヤンチャしてたンスか?」
「全然」
「よく友達続けてましたね」
「むしろ、友達でいてくれたのはこいつらだけだったから」

高田の言葉に花厳ちゃんが目を伏せた。柄崎と加納がゆっくりジョッキを傾け、黙る。地元の凄惨な事件の内の一つの、被害者なのだ。彼女が周囲から腫れ物に触るような扱いを受けている事は当時から知っていた。そりゃあ中々、関われないよね。普通。

「何だかんだ感謝してるし気に入ってるんだー、ね!柄崎、加納」
「おう感謝しろよォー?」
「うぇーいあざーっす!」
「軽いな」

ガチャン、とほとんど空のジョッキがぶつかる。柄崎は完全に出来上がってしまっているし、花厳ちゃんもだいぶ酔っているらしい。ずーっとへらへらしている。

「おばちゃん、会計お願い」
「もーっスかぁ?」
「美味かったです」
「マサルたくさん食べたねぇ、よしよし」
「よしよしはやめて下さいよォー」

丑嶋くんが立ち上がると皆が立ち上がる。気前よく支払いを済ませる丑嶋くんの傍らで花厳ちゃんが厨房に皿を運んでいく。

「おばさん、美味しかったよ!ごちそうさま!」
「はーい、また来てね!」

母の嬉しそうな顔。母さん、丑嶋くん達好きだからなぁ。たくさん食べてくれるしね。それも美味しそうに。じゃあまた、と軽く挨拶をして外に出る。あー、涼しい。結構飲んだなぁ。

「タクシーは?誰と誰?」
「俺と社長で」
「いや私はよ」
「お前なんか歩いて帰れ!」
「お前が歩いて帰れバーカバーカ」

マサルくんが高田くんに泊めてくれと言っているのを聞き流しながら、加納と花厳ちゃんがタクシーを止め始める。電話するよりも早い。フラフラの柄崎を抱える丑嶋くんに「頑張りなよ」、と声をかけると頷いた。

「……社長ォ〜……」
「ンだよ」
「……あいつの事、頼ンますよ……泣かさないで下さいよォ……」

おっ。ここは空気に徹しておこう。

「泣かさねーよ」
「俺あいつには幸せになってほしいンスよォ〜……お願いしますよ……泣かせたら俺、社長でも怒りますよ……」
「おう」

ぐう。あっ、寝た?柄崎これ絶対覚えてないやつだな。あーあ。

「……丑嶋くん、気をつけてね」
「あ?」
「皆、柄崎みたいに良い奴じゃないって事だよ」

丑嶋くんの視線が高田くんとマサルくんを見送る花厳ちゃんに向けられる。笑いながら大きく手を振る花厳ちゃんには纏わりつく輩も多い。実際すごい事だよ。そこまで執着されるのって。

「何かあったら教えて」
「今までのは?」
「あ?」
「はは、嘘。花厳ちゃんガード固いからね。今のところ大丈夫」

あっちが本気で手篭めにしようとしない限りは。

「柄崎ー、柄崎ー?加納と帰りなー?ほれほれ」
「……ンアッ、叩くなバカ」
「はいはいお疲れまた明日ね。加納ー!柄崎回収ー!」
「社長、花厳。また明日」
「お疲れ」
「はーい!じゃあねー」

加納の肩を借りながらフラフラとタクシーに乗り込んだ柄崎、吐かないといいけど。

「戌亥は?」
「俺もタクシー乗ってくから大丈夫。花厳ちゃん、丑嶋くんの事お願いね」
「うぃーす!任せとけ!ちゃんとお家まで送ります!」
「頼りないなぁ」

そういう意味じゃないんだけどな。まあ、楽しそうだからいいか。

「じゃあね、また」
「じゃあな」
「じゃあねー、戌亥!またご飯食べようねー!」

ご機嫌に手を振りながらタクシーに押し込まれた花厳ちゃんを見て、何だか腹も胸もいっぱいになった。




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