覚悟



この年齢まで恋愛の経験もなければ勿論セックスの経験がないというのは稀なのかもしれない。男とばかりつるんできたけれど、良い奴だなと感じてもその先には至らなかった。なのに何故丑嶋なんだろう。中学のあの時から、会ったのは少年院を出てからなのに。頻繁に会っていた柄崎や加納ではなく、何で丑嶋なんだろう。キスされたから?そんな押しに弱いのか私は。意識すると、っていうやつ?うーん。じっと丑嶋を見つめていると怪訝な顔をされた。顔がタイプ?そういうのは考えた事がない。じゃあ何だろう?

「どうした?」
「いや〜……」

じっと見つめていると同じくじっと見つめ返される。目付きが悪いのは中学生の頃からだ。あ。と声が出る。多分、この目が好きなんだ。誰にも媚びず、倒れない芯の通った体躯が好きなんだ。あー。ちゃんと好きなんだな私は。ずるずると芋づる式に好きなとこばかりが見え、好きなとこばかり思い出す。あー、そういやあのハンカチまだ現役だ。
終業間近になり柄崎と加納が戻ってきた。取り立てたお金を社長が数え、受け取る。時間になり、挨拶を軽く済ますと柄崎が飲みに誘い出す。

「今日は帰る」
「えーっ!?花厳は?」
「……私も」
「加納は?」
「俺も今日は用事がある」
「せっかくの金曜日だってのに付き合い悪ィぞ。仕方ねえ俺だけ行くかぁ……」

ブツブツ言いながら出ていく柄崎。どうせキャバだろ。加納も続いていく。
どうしよう。いやいや。でもな。いや。こういうのどうしたらいいんだろ。社長を見ると目が合った。

「言いたい事があるなら言え」
「あっ、の丑嶋」
「何」
「今日、泊まってもいい、ですか」

思わず目をそらす。言ってしまった。あー!もう。くっそ、顔が熱い。これ断られるとそれはそれでショックだな。でも、断ってくれた方が気が楽かもしれない。こんなに緊張するのっていつぶりだろう。突然、体のすぐそばに気配を感じて反射的に顔を上げると社長が私の顔を覗き込んでいた。

「腹決めたのか?」

眼鏡の下の眼差しが真剣で、頷く事しかできなかった。



「飯作ってやる」と言われて出されたご飯が結構美味しくて、やるなこいつと思いつつお風呂を借りて。道中、家に寄ってもらって持ってきたパジャマを着てソファの上で膝を抱える。浴室の方から丑嶋がシャワーを浴びているであろう音が聞こえてくる。待っててほしいとは言ったものの、私から抱いてほしいって言うのは何か。何かさ。あー。もう。気まずい。恥ずかしい。うさぎ達が足元で寛いでいる。可愛い。

「よしよし」

ソファに寝転がって下に手を伸ばし、小さな頭を撫でる。柔らかくて温かい。これは可愛い。少しでも気を紛らわそうとうさぎを愛でる。
子供ではないからセックスの知識はある。でも経験はない。いまいち想像ができなかった。誰かを好きになるなんて。はあ、と溜め息を溢した瞬間耳を引っ張られた。

「怖じ気づいたのか?」
「ンな事!な……い!」
「変な間だな」

ガシガシとタオルで濡れた髪を拭う丑嶋はどこか新鮮だ。眼鏡もない。当たり前か。

「眼鏡ないとあんまり見えないの?」
「文字は読めねェな」

どこかの誰かに殴られた後遺症らしい。それで済んで良かったと言うべきか否か。胡座をかいてうさぎを撫でる丑嶋の横顔が優しくてそれにすら、はあ、と溜め息が出た。

「嫌っつーンなら今の内だぞ」
「……丑嶋さぁ」
「ん?」
「何で私なの?手頃だから、とか言うなら今の内だよ」
「舐めてンのか」
「教えて」

ちょっと怖いから。私の手が少し震えた事に気付いたのだろう。丑嶋はうさぎを一頻り撫でるとソファに近付いてきた。表情はいつものように、鋭い。何故か腰が引けて起き上がろうとすると丑嶋は膝をついたままソファの背凭れに手をかける。逃げ道を閉ざされた。

「お前は知らねェだろうが」
「は、はい」
「中学の時からお前が好きだ」
「……えっ」

「マジか」、と呟けば「マジ」、と返ってくる。

「ハンカチ貸してくれたのも、見舞いに来てくれたのも、年少に入ってる時差し入れしてくれてたのもな」
「うん」
「ずっと好きだった」
「ちょっと待って照れるから」
「お前が教えろって言ったンだろ」
「面と向かって言われるとさ」
「花厳」
「うん?」
「抱くぞ。いいか?」

力強い眼差しと口調で言われ、心臓がぎゅっと拍動する。「よろしくお願いします」と噛みながら言えば鼻で笑われ、丑嶋の顔が近付いてくる。目を閉じると唇に熱い感触。体温高いな。お風呂上がりだからかな。頬に当たっている丑嶋の鼻先が角度を変えると舌が入ってきた。私の歯を割ってあっという間に舌を絡め取られる。厚い舌で上顎を舐められて腰が揺れたのを丑嶋は見逃さなかったようで、背中と膝の裏に腕を差し込まれ軽々と持ち上げられてしまった。これが噂に聞くお姫様抱っこか、と思っていると体勢を変えられ肩に担がれた。

「いや何でさ……」
「両手塞がってたらドア開けられねェだろ」
「それでも雰囲気とかさ……山賊に拐われてる気分」
「あながち間違ってないな」
「闇金だしね」

寝室に入るとすぐに照明が薄暗くなる。気が利く男だ。というか慣れてるのかな。丑嶋も風俗とか行くんだろうか。今まで彼女……はないのかな。ずっと少年院だったし。ううん。

「丑嶋初めて?」
「あ?聞いてどうすンだよ」
「いや別に、好奇心……」
「初めてだったら?」
「マジかよお前」
「さあな」
「え?どっち?中学生の時既に経験あった系?」
「うるせェよ」

ポイッとベッドの上に転がされてしまった。前と同じく丑嶋が乗っかってくる。何だか急激に緊張が強くなってきて掴んだ枕を丑嶋に取り上げられた。

「邪魔」
「心細いんだよ!察して!」
「縋り付きたいなら俺でいいだろ」
「なっ……にそれ男前な台詞……益々緊張してきた」
「雰囲気がどうのこうの言ってたやつの台詞かよ」

今度は遠慮なくガブッと噛みつかれる。丑嶋の犬歯が唇に当たる。こいつ私を殺す気なのかな。ぐぐっと強く押し付けられた唇とさも当然のように入ってきた舌に思わず丑嶋の肩を掴む。ふ、とふっくらとした唇が笑んだのが感覚でわかった。脇腹に丑嶋の手が添えられて、パジャマの中に侵入してきた。丑嶋の手の平ってちょっと固いんだなぁ。それはするすると上ってくる。肋に添えられて、指がブラをなぞって背中へと回る。肩を浮かすとすぐにホックが外れてしまった。やっぱり慣れてるのかな。舌を吸い上げられて声を漏らすと丑嶋の唇が私の顎を滑っていく。両手が私の脇から胸をぎゅっと押し上げてから、パジャマを引っ付かんだ。

「すげー心臓バクバクしてンな」
「するでしょ!」
「脱がしてやるよ」

大きな手がゆっくりと私のパジャマのボタンを外していく。そして私の手を取り、袖から抜く。その動作がとても優しくて目を瞑るとまたキスをされた。あっという間にパジャマが脱がされ、ブラを引き抜かれる。反射的に胸を隠そうとした両手に丑嶋の指が絡まり、シーツに押し付けられた。ちょっと待って恥ずかしい。力強いな!びくともしない。首筋に押し当てられた丑嶋の唇がくすぐったい。ちゅ、と音を立てながらゆっくり下がっていく。

「う」

小さな呻きでも丑嶋の耳には届いたらしい。私の胸元に唇を寄せる丑嶋と目が合う。酷く心臓が跳ねて身震いするととても緩慢に、べろりと乳首を舐められた。

「ふっ」

生温かい感触に声が出る。気持ち良いとか、まだよくわからないけれど丑嶋の舌にゾクゾクとしてしまう。赤ちゃんがするようなやつじゃない。丑嶋の膝を脚で挟むと更に愛撫を続けられる。舐められて吸われて、時々歯が当たる。変な感覚だ。暑い。丑嶋の手が私の背中に差し込まれて胸を突き出すように持ち上げられる。ちゅう。何だか息が苦しくなってきた。短く切り揃えられた髪に手を伸ばした瞬間、膝で脚の合間を押し上げられた。

「ひ、あっ」

声出た。また押し上げられる。あっ。体がびくっとしてしまう。止めてほしくて丑嶋の膝を強く挟むけれど、何度も押し上げられる。

「ちょ、丑嶋っ」
「何?」
「何、じゃない、やだっ」
「これ?」
「あっ、あ、や」

ぐりぐりと刺激されて逃げようとすると抱き締められた。こいつわざとだな。お腹の奥がもどかしい。熱い。私を左腕で抱き締めたまま、右手は私の肌を撫でながら下りていく。肋を擽って脇腹を通り、パジャマの奥の下着の中に侵入してきた。下腹部を撫でる丑嶋の手に何故だか安心してしまう。丑嶋の唇が右の瞼に当たる。擦り寄ると丑嶋の指が、伸びた。

「結構濡れてンな」
「待ってそういうの聞きたくない」
「ほら」
「ほら、じゃない、っ」

そこがぬるぬるとしているのはわかる。あーもう。そりゃ、好きな相手にこんなことされてたらそうなるでしょ。初めてだけどさ。恥ずかしい。

「顔真っ赤」
「うるさいな!アホ!バカ!いじわる!」
「そんな奴に惚れたのお前だろ」

言葉に詰まる。そうです。図星だ。じわっと涙が出てきてしまって丑嶋のシャツを握り締める。何か悔しいのに好きが勝って仕方ない。

「丑嶋」
「ン?」
「お、お願い。優しく、して」

「おう」、といつもの声色で耳を噛まれた。優しくしてって今言ったのに。反論する間もなく指が押し込まれる。うわ。待って。指まで大きい。

「いっ」

痛い。濡れてるのに痛みがある。丑嶋の指は図体と同じく大きくて長い。とても私じゃ触れないところまで触られている感覚。私が知らない私の場所。逃げそうな体を押さえ付けられて丑嶋の指をぎゅうっと締め付けてしまう。丑嶋、今どう思ってるんだろ。ああ、もう。酷く恥ずかしくて厚い胸板に顔を埋める。シャツから清潔な匂いがする。中を探るように丑嶋の指がゆっくりと動き始めた。ちょっと痛くて、でも何か。何だろう。変な感覚がする。熱を持ったような、それがじんわりと広がっていくような感覚。くっ、と指が曲げられてお腹側を擦られると腰が浮わつく。

「んんっ」

抜き差しされる事でごつごつとした指の節の形をはっきりと感じる。丑嶋の手のひらが熱い。息が上がるのは何故だろう。「丑嶋」、と呼ぶとこめかみに唇が当てられた。瞼を掠める髭がこそばゆい。ドキドキして苦しい。

「暑いな」
「う、んっ」

指が引き抜かれる。パジャマから抜かれた丑嶋の指が濡れていて本当に何か、申し訳なくなる。もどかしい感覚がお腹に残っていて脚を擦り合わせるとがばっとパジャマと下着を下ろされた。

「わ!?」
「うるせェよ」
「こっ、心の準備!」
「指突っ込まれた後に何言ってンの?」

それでもさ!?反論しようと開けた口を塞がれる。ぐぬぬ。素っ裸というのは心許ない。ちゅ、ちゅ、と二回程落とされた唇が離れていく。丑嶋の手が自らのシャツを脱ぎ捨てる。大きな体を厚い筋肉が覆っていて尚更大きく見える。薄暗くても筋肉質の影ははっきりとしている。うわ。恥ずかしい。めちゃくちゃ恥ずかしい。私とは随分違う体つきだ。

「続けるぞ」
「あ、うん……んんっ……!」

また指が挿入される。先程より抵抗なく、痛みもなく丑嶋の指の根本まで入ったらしい。濡れている音がしてまた丑嶋にすがり付く。隔たりのない体温に羞恥心と愛しさが込み上げる。中で蠢く指が時折どこかに触れて喉が鳴る。

「ふっ、んん……何、丑嶋、指……?」
「二本入ってる」
「せめて先に教えてくれないかな?っ、ん。あ、やっ、それ、やだ」

二本をばらばらに動かされる。尿意に似た感覚が走ってぞくぞくする。「どれなら良いンだよ」なんていじわるな言葉が聞こえたけれど気にしない。

「痛ェーか」
「いや、そんなに……っ、ん、ッ!」
「ここ?」
「あっ、やだ、やっ……んんっ!」

多分、一番敏感な部分を指で押し上げられる。強い刺激に声が出てしまう。一緒に浮く腰を丑嶋が脚で制してくる。酷い。その部分を執拗に丑嶋の指がまさぐってくる。息が弾む。二本入ってるせいで音が響く。感じた事のない何かがすぐそこまで迫ってきている。

「う、あっ……も、もういいって」
「まだだ」
「だ、って何か、んっ、待って丑嶋」
「もう待たねェ」
「あっ?ちょっ、と!」

指の腹でそこを強く押し上げられる。逃げ場のない激しい感覚に自分の爪先が丸まったのもわからなかった。

「うしっ、じま!」
「そのまま」
「あっ、あ……ッ!!」

目の前がチカチカした。生理反応で痙攣する体を強く抱き締められる。丑嶋の指が緩く動く度に押し殺せない声が漏れてしまう。あまりに強烈な、これはきっと気持ち良いという感覚で、それをどうにか落ち着かせたくて丑嶋の腕を掴んでやっと指が引き抜かれた。

「あっ……はあっ、は……」
「今の覚えとけよ」
「何、っ」

宛がわれたものに視線を落とす。いつの間にか丑嶋は自分のものに避妊具まで着けていたらしい。あまりにスムーズだ。やっぱり慣れてるのかな、なんて思うよりも宛がわれたものの大きさに震えた。指の比じゃない。

「いや、待って丑嶋。大きすぎる。死ぬ」
「死ぬかよ」
「入ると思う?」
「入るかどうかじゃなくて入れるンだよ」
「あー!怖い!そう言うだろうけど!」

ぐっと膝を開かれて丑嶋が自らの雄を良い位置に持ってくる。先程まで指が入っていたところに先端をぴったりと合わせられて、あとはもう丑嶋が腰を進めるだけだ。怖い。

「今更無理なんて言うなよ。覚悟決めたンだろ」
「決めたけどさ?……い、痛いかな?」
「多少はな」
「あー、そう……うん……丑嶋……」
「何?」
「好き。ちょっとくらい痛くても好き」

丑嶋の口角が上がる。大きな手のひらで汗ばんだ額を撫でられて丑嶋がのし掛かってくる。ぐっと進入してくるそれに私の肉を抉じ開けられるような、そんな。怖い。力を抜かないと尚更痛いだろう。でも強張ってしまう。丑嶋を見つめると両手で頬を包まれてキスをされた。厚い唇に食まれて、同じく厚い舌が入ってくる。怖さをごまかすために丑嶋の舌先を舐めると角度を変えられる。丑嶋の体が近くなると同時に押し進められる。苦しい。まだそんなに入ってないだろう。先端は入ったのかな。一瞬締め付けてしまい丑嶋の手がぴくりと反応した。そうだよね、痛いの、私だけじゃないかもしれない。丑嶋の腰に手を添えたら丑嶋の両手が背中に回った。また身動きができなくなった。ぐっと腰が進められる。あ。先端は入ったらしい。そのまま、まるで私の中が導くように丑嶋の雄がゆっくり入ってくる。指でさえ届かなかった奥深く。私、今丑嶋とセックスしてる。

「ふ、あッ……あっ」

痛くて苦しいのに指の時よりもゾクゾクと背中が震える。もっと押し込まれて、多分、一番奥まで届いた。丑嶋の大きいな。はあはあと肩で息をする私に丑嶋がまたキスをしてくる。もう、好き。それ。震える両手を握られてシーツに押し付けられた。手、大きい。ぎゅっと握られると痛いくらいだ。

「丑嶋ぁ……っ、入ったぁ……?」
「ああ」
「入るもんだね」
「涙出てる」
「痛いし苦しいんだけどさぁ」
「うん」
「何だろ、嬉しいとか幸せとか……そんな感じ」
「そうか」
「丑嶋、痛くない?」
「いや」

良かった。あとは、任せるよ丑嶋。好きにして。
そう言うととてもゆっくり、私の分泌液の力を借りながら丑嶋が前後し始める。先端付近の凹凸だとか、根本の方の太さだとかを薄い皮膜越しに感じる。ゆっくりだから丑嶋の血管が脈打っているのまでわかってしまって、それがとても人間らしくて丑嶋の手に指を絡める。少し汗ばんでいる。私だけじゃない。

「は、あっ……う」

視線を落とすと丑嶋の腹筋がゆったりと動いているのが見えて、その更に下で丑嶋の雄が私の中に出入りしているのが見えてしまっていつか興味本位で観たそういうものよりとても生々しく、力が入ってしまった。

「締めすぎ」
「ごめ、ん」
「さっきの場所に集中しろ」
「集中、って言ったって」
「ここだよ」

ぐっと押し上げられて息が詰まった。さっきの感覚が背骨に残っている。苦しいけど、何か。体が熱い。手を強く握り返すと頬に口付けられる。そのまま耳を甘噛みされ、耳朶を吸われる。くすぐったい。抽挿は相変わらず緩慢で、何度も頬に丑嶋の髭が当たった。丑嶋の鎖骨に頭を押し付けると合わさった手を撫でられる。ああ、優しくしてくれてるんだ。

「っんん……!」

瞬間、ぞくぞくと体の中心が震えた。少し腰を浮かせると丑嶋の雄がさっきのところに当たる。うわ。そんな私を押し潰すように丑嶋は尚もゆったりと動く。心臓と下腹部がきゅんとして、もっと濡れたのが自分でもわかった。まだ苦しくて痛いのに、もっとしてほしい。爪先で丑嶋の脚を擦ると奥深くまで滑り込んでくる

「あっ、ぁ……!」

多分私の中もそういう風に反応している。それに気付いているのであろう丑嶋の動きが僅かに速くなった。丑嶋がすぐ近く、まるで私の一部になったような。これ、あれだ。気持ち良いんだ。すごいなぁ初めてなのに。丑嶋が上手いのかな。上手いというか、やっぱりすごく優しくしてくれてるんだろうな。

「うし、丑嶋」
「うん」
「好き……っ」
「知ってる」

ふっと笑った顔にあまりにも胸が熱くなって目を瞑ると強く突き上げられた。腰が反る。痛くない。ぐいぐい押し上げられても、それがすごく強い刺激でも気持ち良い。

「あっ、はぁ……っん、んッ!」

丑嶋の左腕が仰け反って浮いてしまう腰に回された。逃げるつもりはないのに、逃がさないとでもいうように。解放された右手がもどかしくて肌に歯を立てると丑嶋がそれを遮るように掴んで、自らの首へと促してくる。同じく解放された左手と歯の痕がついた右手で丑嶋のうなじを撫でた。丑嶋の右手も私の後頭部を覆う。律動が益々速く、激しくなっていく。

「ひっ、ぁ!あっ、あ……っあ、やっ!」

穿たれるまま声を上げてしまう私を丑嶋はどう思っているだろう。うるさくないかな。ごめんね丑嶋。丑嶋の顔を窺うと熱の籠った瞳と目が合った。「声抑えるなよ」、とこめかみに唇を押し付けられる。エスパーか。抑えようにも抑えられないんだけどね。
一番気持ち良いところを何度も突き上げられて泣きそうになりながら縋りつく。こんなに苦しくて激しくて、気持ち良いものだと知らなかった。こんなに目の前の男が愛おしいなんて。何もかも全部、あげてもいいって思えてしまう。ああ、好き。

「丑っ、じまぁっ……!ごめ、も、あっ、あっ」
「ああ。いいよ。イけよ」
「うっ、あ、丑嶋も、一緒にっ、んっ!」
「心配すんな」

ふ、と丑嶋が笑った感覚がしてぎゅうっと抱き着くと強く抱き締め返してくれる。身動きが取れないくらいに太い両腕で体を固定されてしまって、与えられる快感を受け止めるしかなくて譫言のように好きだと伝えれば「俺も」、と囁かれた。

「や、イっく、あッーーーあっ、ぅあっぁっ、あ、〜〜ッ、んんっ……ッ!!!」

指でされた時よりも強烈な快感に身を震わせた直後に、わたしの中にいた丑嶋の雄もビクッと震えたのがわかった。あ、丑嶋もイった。は、と呼吸する間もなく尚も意地悪く緩く前後されて頭と目の前がチカチカした。

「あっぁ、や、やっ」
「ッ…………ふ、まだビクビクしてンな」
「動くの、やめて、ひっ、ぁっ」
「そんなに気持ち良い?」
「気持ちい、よかった、からぁ」

丑嶋が腰を引いていく。私の中からずるりと出ていく感覚にまた声が出てしまった。なぜなのか、元々自分の中にあったものとでもいうような寂しい感覚がして、目線を落とすと避妊具の先に精液が溜まっているのが見えた。丑嶋のやつだ。私の分泌液で濡れたそれを外し、縛ってゴミ箱へ入れた丑嶋の雄がまだ勃ち上がっている事に気付いてしまった。あれ、一度出したら終わりというか、萎えるのでは。丑嶋が再び避妊具の封を切る。嘘。あれ?

「丑嶋、え、あの」
「そんな面しなくてもまだ足りねェーよ」
「え?どういう顔してた……」
「またイかせてほしそうな顔」

ほら、と腕を取られ起こされて腰を掴まれる。宛がわれていたのは先程と同じく避妊具をつけた丑嶋の雄で、逃げる術も知らずにそのまま二回目が始まるのだった。





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