風柱とストーカー撃退訓練


28_違うそうじゃない
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「ぐっ……なまえは接吻が下手だな。慣れていないのか。そんなところも可愛らしいな」

「さ、流石に今のは申し訳ありません…防衛本能です。失礼致しました。ですが不死川邸の敷地内に鼻血を垂らすのはご遠慮いただけますか」


水柱様がご自身の顔を抑える手からボタボタと赤い液体を垂らすのを眺めながら、ああ、出かける前に掃除しないとな…と考えていると、背後から肩を掴まれて勢いよくぐるんと振り向かされる。


「オイなまえ、今後野郎への頭突きは禁止だァァ…」

「ええっ」


師範の目がもの凄く血走っている。
これは今迄で一番怒らせてしまったかもしれない。
有無を言わせぬ圧を感じ、大人しく了承する。
玄関先を汚してしまったことは師範にとって結構な地雷だったのだろうか。

すぐ水で流しますね!と伝えて慌てて背を向けて屋敷内に戻れば、師範がぼそりとお前絶対ェ分かってねェだろ、と呟いたのを、なんとなく聞こえない振りをしてしまった。


ーーーーー


不穏な空気が流れる玄関先に急いで戻り、水柱様に鼻血を抑えるためのちり紙を差し出せばわざとらしくぎゅっと手を握られた。
間髪入れずに師範が水柱様をビターンと平手打ちする。


「師範、また鼻血が飛び散りましたよ」

「ソイツごと水ぶっかけて流せェ」

「ほら、水柱様避けてください」

「優しいななまえ。そんなに俺を愛してくれているのだな」

「………」

「……冷たい。怪我の後遺症で手元が狂ったのか?」


結果水柱様の足を無視して地面に落ちた血を流したのだが、恐ろしいほど前向きな変態には何も応えなかったらしい。
手首を見せてみろ、と懲りずにお触りを試みる水柱様に二度目の平手打ちを喰らわせた師範の青筋がビキビキと浮かぶ。


「てめェ何しに来やがった」

「なまえの顔を見に来た」

「帰れェ」

「お館様からお呼び出しを受けた。今夜、少し遠方の那田蜘蛛山へ向かうことになりそうだ。」

「聞いてねェからさっさと行け」

「なまえと抱擁してから行く」

「させねェ」

「する」

「殺す」

「する」

「しません。お引き取りください」


相変わらず照れ屋だな、ムフフと笑う水柱様の鳩尾に師範の本気の拳が入り、不毛な会話は強制終了された。

結局、しのぶ様も水柱様と共に本部へ向かわれるとのことで、機能回復訓練はカナヲと行うことになり、復帰許可はいただけず仕舞いだった。



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義勇さんをビンタする実弥さんが書きたくなった

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