風柱とストーカー撃退訓練


03_束の間の休息
..........


「………帰ったら待ち伏せてるとか、無いよね」


単独任務を終え、自宅に戻るか藤の花の家紋の家に立ち寄るか迷う。
然程手強い鬼ではなく、無事討伐を終えたが、問題はこの疲労感だ。
自宅までの距離はやや遠い。加えて、日中の水柱様の付きまとい行為。なんだかどっと疲れてしまい、自宅に戻るのも億劫で、やはり世話になることにした。


「んーーー………極楽だあ、」


自宅周辺を彷徨く男に警戒せず、ゆっくりと湯船に浸かることができたのはいつぶりだろうか。
水柱様に自宅が割れてしまった今、出来ることなら早々に引っ越したい。

隊士の中には邸宅を持たず、藤の花の家紋の家と蝶屋敷を行き来し(それもどうかと思うが)日々任務に没頭している者も少なくないと言う。

しかし鬼の出現頻度が落ちている今、連日で非番をもらうこともある。そんなときに彼らに迷惑を掛けるのもどうなのか。やはり家が無いのは不便になる…と思い至り、うーんと唸りながら、少し冷えた肩を湯船に沈めた。


「鬼狩様。お休みのところ申し訳ありません」


翌日に備え睡眠を取ろうとしていたところで、襖の外から声が掛けられた。

なんでも、甲の隊士率いる合同任務を終えた女性隊士たちが到着したとのこと。
最近順調に階級を上げてきた私の名を知っているとのことで、”自分たちは夜明け直ぐ出発する予定だから、是非みょうじさんに挨拶だけでもしたい”と申し出てくれたらしい。

なんだか気恥しいが、ありがたい話である。
女性隊士が少ない鬼殺隊で、女性ならではの悩み等を話せる友人ができたらいいなあと常日頃思っていた。
勿論、友達を作るために鬼殺隊にいる訳ではないが。

甲の先輩隊士には鍛錬についても相談してみても良いだろうか。
期待に胸を膨らませながら浴衣を直し、ひんやりとした廊下に歩みを進める。


「お疲れ様です。お待たせして申し訳ありま…せ、ん…」


呼び出された庭に降り立った瞬間、その張り詰めた空気に、ああ、そういうことか、と察した。



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