風柱とストーカー撃退訓練


51_花は死に歌う
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私の身体の内には"花"が巣食っている。
数百年前に顕現した"花"は鬼舞辻を殺さんとする強力な意思から生まれ、人間の肉体に根を張り、鬼に対抗する力を振るって来た。

苗床たる人間ーーウタウタイの身体が朽ちれば転生し、宿り、朽ち、また輪廻を辿る。
未だ果たされない悲願を追い、幾度も幾度も狂い咲く。
その"花"に、今まさに蝕まれている肉体が私だった。


「"花"の力を使ったウタは、特殊な音波によって人間の脳の未覚醒領域を無理矢理叩き起こすものです。あくまでも人間のまま、その能力を最大限に引き出す力。

鬼のように身体が再生したり、術が使えるようになるわけではありません。呼吸を使って身体能力を強化するように、ウタを使って身体能力を強化しているだけです。」


何もかも唐突な話ですよねぇ、と師範の顔を窺い見ると、本当になァと文句を付けながらも髪を梳いてくれる。
それが心地良くてたまらない。
本当はこの人に触れてもらえるような綺麗な存在ではないのに。


「……もうお気付きかと思いますが、ウタの力の真髄は、仲間を…他者をウタによって同時に複数強化できることにありました。」


それは即ち、人外の力を持った破壊の兵団を作り出せるということ。

歴代のウタウタイは鬼殺隊に迎え入れられていたものの、自ら刀を取ることはなく、隊士たちにウタを浴びせては鬼殺の補佐を行っていた。
当初はその力を強大さを持て囃され、ウタヒメなどと呼ばれていた時期もある。


「ですが勿論、力を手に入れるには対価が必要です。鬼となれば陽の下を歩けなくなるように。師範の稀血の力を使うためには傷を負い血を流すことが必要なように。」


普段は使用していない領域の力を無理矢理発揮させるということは、ウタを浴びた者の脳と肉体には多大な負荷が掛かる。
一時的に強さの限界を突破しても、その人の肉体を消耗させ寿命を縮めることに他ならない。
繰り返しウタを浴び、精神を破壊された隊士も大勢いた。


「後方支援と言えば聞こえは良いですが、安全な場所から隊士たちに身体を酷使させ死地に送り込む。それがウタウタイでした。…やがて反発する声が上がったのにも無理はありません」




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