風柱とストーカー撃退訓練


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※ほんのりピンク注意



「いいかァ、なまえ。俺にはなァ、お前から離れる理由なんて微塵も存在しねェんだよ」


流れるような動作で肌蹴させられた隊服が私の身体をすり抜けていく。
肌寒さを感じる前に素肌を滑る熱い唇と掌に、思考能力まで一緒に溶かされていくような感覚に陥ってしまう。
実弥さんの言葉は私の耳に届いてはいるものの、与えられる刺激が強すぎて、彼の身体にしがみ付くことでしか応えられない。


「俺は鬼殺隊の風柱として、お前のウタの力は必要だと思ってる」

「…っ、ん、…!」

「けどなァ、それだけじゃねえ」


すごく大切な話をされている気がする。
それなのに、膝から腿へと伝っていく唇の甘美な感触に耐えるのが精一杯だった。
噛み殺したはずの声が漏れ出てしまいそうになり、まともな返事ができない。


「俺には、ただのひとりの男として……ただの不死川実弥として、お前が必要なんだ」


口元を覆って必死で抑えていた声の代わりに、溢れた涙がこめかみへと伝っていく。
掛けられた言葉の重みに思わず実弥さんの方へ視線を向けると、赤い舌が私の内腿を舐めあげたところだった。
視覚からも触覚からも強い刺激を受け、腰が大袈裟なほどに跳ねてしまう。

息も絶え絶えになりながら彼の名を呼べば、長い睫毛に縁取られた双眸に射抜かれる。
いいか、と短く投げかけられた問いに訳も分からないまま朦朧とした頭で頷くと、そのまま太腿の付け根にきつく吸い付かれた。
一点に濃く刻みつけるように同じ場所を幾度か強く吸われ、ちりちりとした微かな痛みが走っていく。

その痛みさえも快感として拾ってしまうのだから、自分は本当にどうしようもない女だと思った。


「…さ、ねみ、さん、」

「なまえ、お前は俺の女だ」


逃げられると思うなよォ、と低く囁かれ、背中にぞくりと甘い痺れが走る。
全てを曝け出した上で、何もかも承知の上で、それでも傍に置いてくださるというのならば、こんな私でも必要と言ってくださるのならば本望だ。

先程咲かせた紅い痕に愛おしそうに唇を寄せる実弥さんを見つめていると、再び視線がかち合う。
ぎらぎらと光る瞳に、これからされるであろう行為が容易に予想できてしまった。
実弥さんのつむじが見えるのと同時に慌てて待ったを掛けると、再び不機嫌そうな表情が顔を覗かせる。
決して嫌なわけではないのだが、できればお布団に行きたいです…と顔を覆って訴えると、漏れ出るような笑い声が聞こえてきた。

本当に仕方ねェ奴だなあお前は、と微笑みながら身体を抱き上げてくれる彼に、私は文字通り身も心も全てこの人に奪われていくのだろうと覚悟した。



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