08_お願い
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「何か困ったら連絡寄越せって言っただろォが。もっと早く相談しろォ阿呆」
「…すみません、」
「まァ言いづらかったんだろうけどなァ」
私が涙を堪えているのに気が付いていたのか、不死川さんはお茶を啜りながら視線を正面に戻していた。
こういった何気ない気遣いにまた彼の優しさをひしひしと感じ、余計に泣きそうになる。
不死川さんに倣って私も湯呑みを手に取り、涙ごと飲み込むようにお茶を喉に流し込んだ。
漸く気持ちが落ち着いたところで、私は思い切って口を開く。
「あの、不死川さん。手前勝手なお願いとは重々承知の上なのですが、折り入ってご相談があります。」
「なんだァ、仰々しい。遠慮なく言え」
ずっと考えていたことがある。
このまま水柱様を宥めて逃走し、逃走しては宥め…を繰り返していてもキリがない。
抜刀すれば隊律違反であるし、そもそも実力で敵うわけもない。
かと言って今のままでは完全に貞操の危機である。そこを諦める気も毛頭ない。
この前接吻を迫られたときに決意した。丸腰でも、強く抵抗する術を身に着けなければ。
「私に、近接格闘術を指導していただけないでしょうか」
「………あァ!?」
「上官相手に抜刀するわけにも行きませんし、かと言ってもう少し抵抗する術を身に着けなければこの前のようにせっ…あ、いえ」
「ちょっと待てェ、この前のように、何だ」
「ななななんでもありません…!」
失言に気づいて慌てて口を噤むも、不死川さんの眼光はギラリと光っていた。
言えェ…今日2回目の上官命令だァ、と言われてしまえば勿論逆らうことなどできず。
「その……せ、接吻を…迫られまして。未遂でしたが」
「殺してくる」
「お待ち下さいぃ!」
今度は不死川さんの腕を掴んで引き止めた。
相変わらずお顔に浮かぶ青筋はビキビキと静まらないが、何とか腰を落ち着けて話の続きを聞いていただく。
「私は剣術も未熟ですが、身体の使い方もまだまだ拙いです。単騎での切り込み力が乏しいので、討伐補佐にばかり回っているのです。鬼殺の剣士としてもう一段強くなるためにも、どうかご指南いただきたいのです。」
図々しい申し出というのは承知の上ですが、と付け加え、恐る恐る不死川さんの様子を伺った。
「いや、でも丁度良かった。俺もお前に頼みたいことがあってなァ」
「……? 私で不死川さんのお力になれることがあれば、何なりと」
「継子にならねェか、なまえ」
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