09_お願い返し
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あまりにも予想外なその言葉に、ぽかん、と口が開いてしまう。
「え、ええ!?流石にそこまで図々しいことはできません…!」
「いやいやいや聞けェ、お前のさっきの”相談”が無くても、俺は元々声掛けようと思ってたんだよ。」
何故私なんかに、確かに同じ呼吸だし、よく気にかけていただいていたという自覚はあるけれども、継子だなんて恐れ多い、まさか私が目の前で何度も涙を見せてしまったから、水柱様から一時的に保護する名目で仕方なく、などと、ぐるぐると色々な言葉が頭を駆け巡る。
「実力で選んでるに決まってんだろォ。俺は同情で継子迎えようと思うほど阿呆でもお人好しでもねェよ。」
「………声に出てました?」
「顔に出てる」
茶ァ飲んで落ち着け、と言われ、素直に湯呑みに口をつける。
水柱様には口に出しても伝わらないのに、不死川さんには口に出していないことも伝わってしまうのか…なんて余計な考えが浮かんでしまい、慌てて頭を振った。
「なまえは優秀な剣士だが、まだまだ成長白地がある。俺がお前をもっと強くしてやる。なまえのためにも、鬼殺隊のためにもな」
「鬼殺隊のため…?」
「確かに討伐体数はそこまでじゃねェが、補佐に関しての能力は抜きん出てるだろ。
前の合同任務でも思ったが、連携が巧い。判断力も悪くねェ。お前がいる任務は隊士の生存率も高い。お前みてェな隊士の成長は、鬼殺隊にとっても重要なんだ」
そうしたら同じ呼吸の俺が面倒見んのが筋だろォ、と言ってこちらを見据える不死川さんから、目が離せなくなった。
過剰評価ではないかと思いつつ、憧れの人にここまで真っ直ぐに褒めていただいて、胸がいっぱいになる。
こうして視界がぼやけるのは今日何度目だろうか。
「こっからは完全に後付けだけどよォ、お前も新しい住まいを探してるっつーし、丁度いい機会だろ。継子として俺の屋敷に来い。
継子になりゃ基本的には俺の同行だ。俺が一緒にいるときは冨岡の野郎も追っ払ってやれる。単独任務が入ったとしても、お前の帰り先は俺の屋敷だ。アイツなんぞ近付かせねェよ。
それでもこの話を断るってんなら、それなりの理由を示してもらわねェとなァ、なまえちゃんよォ」
視界を遮る雫が頬に走った瞬間、明日からは容赦なく稽古つけてやっから覚悟しろよォ、とニヤリと笑う不死川さんの顔がはっきりと見えた。
どこまでも優しく強いこの人に、私も笑顔で応えなくては。
「よろしくお願い致します、師範」
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