6.彼女と一緒にいられるなら私は

 なんで来たかったの? これはヒミコからの質問であった。有翔は「只の思いつきだよ」とあっけらかんと答える。思いつき、そう一言で片付いてしまった今回の行動だったが、彼女には目的があった。入り浸ることによって彼らの様子を伺っていた彼女。ヒーローでもない一般市民だが将来は一応ヒーロー志望だったのだ。なぜこの世にヴィランといわれる存在がいるのか、彼らは何を目的に動いているのか知りたいと思ってしまったのだ。
 この便利な世の中に何の不満があるのだろう、戦争が起こっているわけでもない。疫病が流行っている訳でもない。ただただ毎日朝日が上り夕日が沈んで夜がくる、平和な毎日ではないか。

「何がそんなに彼らを奮い立たせてるんだろ」
「なにか言った? 有翔ちゃん」
「ううん、何でもないよ」

 ヒミコと有翔は手を繋ぎながら炎が噴き出す市街地へと足を進めている途中だった。
ふと思った疑問が好奇心に変わり、今ここにいる。彼女は確かめたくてウズウズしていた。今日がどんなに危険な日なのか知る由もなかったのだ。彼女の隣にいる少女が指名手配犯であり、ヒーローから目をつけられていること、まさに今、囲まれていることも知るはずがなかった。それを知っているのはヒミコただ一人。彼女は有翔に気付かれないよう広角を上げる。

 
back両手で掴んで
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