8.出口のない未来

「出会いのきっかけ? ただ自暴自棄だったことは覚えている。どうやって出会ったのかなんて覚えてない。私の個性がワープで、いつもみたいに適当にワープして遊んでた時にでも出会ったんだと思うよ、子供みたいな大人の彼に。はじめは拘束されて殺されそうになった。個性を使って逃げたけど、次の日何となく気になってもう一度行ったんだっけ。……そっからは覚えてないや。」

 有翔は嫌々話をしているようだった。一息で話して、そうしてすっかり無くなった酸素を吸い込んで何度かゆっくりと呼吸を繰り返す。学校ではない、子どもの声も聴こえないこの静かな部屋で彼女は冷静に話を続けていた。

「とりあえずたくさん通っている内に向こうが折れて、私が入り浸るようになって。そのうち、彼らが世間を騒がせている敵連合軍だと知った。けど、そんなことどうでも良かった。テレビできく敵連合軍とのイメージとはかけ離れていて、私が行けば嫌な顔せずにジュースを出してくれる人も、帰れと言う割りに本当に追い出そうとしない人も。宿題だって手伝ってくれたし、一緒に遊んでもくれた。こっそり彼らの言うお仕事について行った時も、私に向かってくるヒーローから助けてくれたのよ。もしかしたらヒーローより、よっぽどヒーローなんじゃないかって最近思うの。」

 そう言葉を漏らした彼女の瞳は澄んでいてそれらが全て真実であると語っていた。言葉うにも偽りの色が見つからない。彼女はゆっくりと一つ一つ思い出すように、相手に語りかけるように今までの経緯を語ることを止めない。しかし、目の前にいる人間はそんな彼女のことを何一つ信じようとしていなかった。

「君は騙されていたんじゃないのかい?」
「そんな、ことない」

 騙されていると彼らが有翔に問う。彼女は今の話をちゃんと聞いていたのかと食い気味に反論してしまう。その様子を問う人間とは別の人間がメモをした。彼女の言動全てが記録されていくこの空間。彼女が否定をしても彼らは言葉を止めない。

「彼らは敵だよ」
「違う!」

「彼らの拠点を教えてくれないか」
「死んでも言わない」

 彼らが目的を話した瞬間、有翔は「自分のせいだ」と舌打ちをした。今この現状を作ったのは紛れもない彼女自身だったのだ。いつも通りに、彼らの元へ行こうと個性を使った時にちょうど居合わせたヒーローに捕まえられてしまう。あまり人気のない場所で個性を使っていたのにも関わらずだ。きっと誰が通報したのだろう。

 目の前の人間・彼女を捕まえたヒーローが言うには、友人たちとの付き合いも悪く、夜遅くに帰ることも増えていた彼女の様子がおかしいとヒーロー事務所に依頼があったらしい。調査は数日行われていたようで、彼女が度々個性を使ってどこかに行っていることや、敵と共に現れること、それにより敵と内通しているという裏付けを集められていたと話した。そうとも知らずに数日、彼らの元へ通っていたのだ。有翔は「ごめん、死柄木さん。私ヘマしちゃったよ」と心の内で謝る。

 
back両手で掴んで
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