5.前途多難

「やっと終わった」

 学校が終わりました。転校生としてやってきた初日は全く授業を受けずにただひたすらこの世界の事を書き出す作業をしていた。報酬と言えば隣の女の子が今までのノートを見せてくれた事と、あとこの世界に関する記憶が全然ないこと。うん、記憶がないんです、殆ど。登場人物はだいたい把握してるし、ここが名探偵コナンとまじっく快斗の2つの世界が入り乱れてるってのは覚えてる。トリップする前の俺は原作もアニメも見ていたし、映画だって全シリーズ制覇していた。友達と熱く語りあうくらい好きだったのに何故!


「真緒ー、帰らないのー?」
「いま行くー!」

 園子に呼ばれて荷物を纏めながら考える。やっぱあれかな? 神様が邪魔な記憶は全部消しちゃえ方式で消したのかな? 余計なお世話ですバカヤロー。今んとこ記憶にあるのは、登場人物に、これから1年後にコナンが登場すること、あと大まかなストーリーだけ、はい、以上。


「(使えねー!!!)」
「なーに百面相してんだよ」

 バコンと新一クンの鞄が頭に当たった。あ、新一クンちょっといま邪魔。頭の整理追いつかないから放っておいてください、ごめんね。「なんでもない」とだけ言ってまた思考を巡らせる。記憶がないのはもう諦めるしかないとして、今から1年猶予があるって事だよな? 出来るだけ原作通りにして、尚且つ傍観者でいれる対策を1年プランでたてれば良いんじゃね?


「よし」

 そうと決まればさっさと家に帰って準備でもするか。帰宅部の新一クンと園子に用事があると言ってさっさと家に帰る。まずは自分の身の回りの整理から始めるとするか。


「ただいまー」

 帰ってブレザーを脱ぎ、ネクタイを緩めてから、部屋を漁る。さっきも考えてたけど、まずは身の回りで必要な物を揃えるべきだろう。実質1人暮らしって事になるから必要物資は全部揃えとくべきだよな? 幸いにもこの世界の俺はお小遣いかな、貯金をしっかりしていたみたいで、まぁ……あとは母さんが毎月送ってくれるらしい仕送りやら、あれだ。部屋から自分の通帳がいくつか出てきてしかも桁数がやばい。


「いち、じゅう、ひゃく、せん、まん、じゅうまん、ひゃく……え、うそだろ?!」

 こんな数字見たことないんだけど! とりあえずお金の心配はなくなったな。なら次は食材やら何やら買い物に行って、あとは優作さんの本も読んでおこうかな。結構役に立ちそうだし、何よりもあの優作さんの小説が読めるなんて、俺得でしかない。あとは、移動手段とか地理関係も把握しとかなきゃいけねーよな?


「やることばっかじゃねーか」

 リビングに行って食材を確認する。うん、まぁ、大丈夫そうだな。冷蔵庫の中身は充実していて、これなら取り急ぎ調達する必要もなさそうだった。それに基本的な家電物資は揃っているようだし、なんかバイクのキーも発見した。


「移動手段も完璧と」

 向こうの世界でもバイク乗ってたし良かった。リビングから出て買い物に行くべく玄関へ向かう。あ、そーいえば、俺の部屋の隣は何に使われてんだろう。好奇心で覗いてみることにしました。母さんの部屋だったらごめんね。ドアを開けて電気をつけてみればびっくり。


「なにこの部屋」

  え、何この部屋。クローゼット多くね?! 姿鏡もあるし、ウィッグ?! え、あ、化粧品?! まるで変装できそうなくらいの揃い具合。なにこれ母さんの趣味? それとも俺? 手に取った服は俺でも入りそうだった。いや、元々細身で女物も入るけどさぁ!


「んあ? どうなってんだ?」


(どーなってんの?!)(ピンポーン)(え)

 
back両手で掴んで
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