現代パロ




学校終わり、善逸と恋人のナマエは家で映画でも観ようかということになった。コンビニで買ったアイスを舐めながら、善逸の家を目指す。あまりの暑さにアイスどころか身体まで溶けてしまいそうだ、とか、涼しくなる映画が観たいね、とか言いながら歩いた。
ふと、善逸が何かを思いつき、猫撫で声でナマエを「ねえねえ」と呼ぶ。


「熱中症って、ゆっくり言ってみて」
「なんで」
「なんででも! 」
「えー」


また何か変なことでも企んでいるのではないか、と渋るナマエ。善逸は「お願いお願い! 」と、甘えたように金色の頭を彼女の背中に擦り寄せる。


「もう善逸暑いってば! 」
「熱中症ってゆーっくり言ってくれよぉ」
「はいはいわかったから」


承諾すると嬉しそうに笑う恋人を半ば呆れたように見ながらも、内心「可愛いな」と思ってしまうのだからナマエもナマエであった。


「えーと、熱中症……ねっちゅうしよう? これでいいの? 」
「えへへ」
「なに気持ち悪い顔して」
「だって、ナマエがチュウしようって」


何を言っているのだろう、と思ったが、すぐにそういうことかとわかったナマエ。


「あーなるほどね」
「えへへへへ」


本当に顔が溶けているんじゃないかというくらいに頬を緩める善逸。そんな善逸をじっと見つめ、おもむろにナマエはキスをした。啄むように唇を寄せたあと、離れる前にペロリと舐める。


「っ! 」
「映画なに観ようかねぇ」


そして何事もなかったように歩くナマエ。驚いた善逸の思考と身体が停止する。しばらくしてハッと周りを見渡し人がいないことを確認すると、言葉になっていない声を発しながら駆け足でナマエを追いかけた。


「ちょ、え、ナマエっ」
「チュウしたかったんでしょ? 」
「あ、はい、うん、いや、そうなんですが」
「じゃあいいじゃない」


ちょっとした出来心だったのに。ナマエは意味に気づくと照れるか怒るかのどちらかだろうと踏んでいたというのに。思いがけない結果に善逸のキャパはオーバーしていた。だというのにあっけらかんとした彼女。悔しいし恥ずかしいし。動揺が隠せない善逸は真っ赤な顔をアイスを持っていない方の手で覆って深く溜息をついた。


「……家に着いたら覚悟しといてよ」
「いっぱいチュウしましょうねー」
「だから! 俺にも格好つけさせてよぉ! 」




僕らのホットサマー
(ドロドロに溶けてしまおう)
2020/07/31