現代パロ




大晦日をナマエは、少し前に恋人から婚約者となった竈門炭治郎の実家で過ごした。彼と彼の母と、それから5人の妹や弟と晩ご飯に鍋を囲み、蕎麦を食べた。それから紅白を観て、年越しの瞬間はみんなで「あけましておめでとうございます」と、かしこまって挨拶をした。


「やっぱり、素敵なご家族だね」


ようやくナマエと炭治郎が2人になったのは寝る時。畳の部屋に布団を並べて敷いてくれていた。天井を見ていたナマエは、もぞりと彼の方を向き直し、小声で話す。


「うん、そうなんだ」


家族を褒められた時、自分はこんなに真っ直ぐな言葉で肯定できるだろうか、とナマエは考える。きっと照れ臭くてできない。それができる炭治郎が羨ましく、そしてとてもとても素敵だと思う。


「私、すごく好き」
「それは俺も含まれてるかな? 」
「もちろん」


ふふふ、と息が漏れるように笑い合う。


「ナマエ。そっちに行ってもいい? 」
「うん」


一つの布団で身を寄せ合った。顔にかかった髪を炭治郎が耳にかけてくれる。そして、そのままふわりと口づけた。あ、と炭治郎。


「俺の家の匂いがする」
「ほんと? 」
「シャンプーかな」


じんわりと胸の奥が温かくなる。この匂いがこの先自分の匂いに混ざっていくこと。これから、誕生日を祝う人、台風や雪の日に心配する人、旅先でお土産を買う人が増えること。大晦日にここで過ごすことが当たり前になっていくこと。そのことのなんと嬉しいことか。


「私も素敵なお嫁さんになれるかな」
「ナマエはずっと素敵だよ」


きっと今夜見る夢は、覚えてなくても幸せな夢だ。どうかこの優しい人もそうであってほしいと、願う。




年の瀬、あなたと、ここで
(どうぞこれからもよろしくお願いします)
2020.12.31