今日は朝からツイてなかった。
占いは最下位だったし、両親は喧嘩してて朝ごはんを食べそびれるし、前髪は上手につくれなかった。そのせいで悠仁と宿儺に置いて行かれたし、遅刻ギリギリだったせいで先生から放課後頼まれごともされてしまった。

放課後、一人ぼっちの教室で先生から押し付けられた配布物のホチキスを留める。グラウンドからは部活の生徒の元気な声が聞こえてきて、更に一人ぼっちな自分の寂しさが募る。宿儺はとっくに帰ってしまった。きっと今頃家でゴロゴロしてゲームしてるんだろうな。あーー本当に今日はツイてない。


「なまえ?」
「悠仁?どしたの?」
「宿儺が弁当箱忘れたつーから取りに来たんだけど、なにしてんの?」
「聞いてよ〜!今日全然ついてなくて」

悠仁が教室に現れた時、救世主だと思った。特別助けを求めているわけではなかったけれど、本当に心細かったから。悠仁に居残りしていることを伝えると、悠仁は「手伝うよ!何したらいい?」と言ってくれた。手伝ってくれるだろうな、って下心は正直あった。予想通りの答えなのに、二言返事でキラキラの笑顔を向けられると、なんだか浄化されたような気持ちになるのはきっと気のせいじゃないと思う。

二人で作業をしたら、あっという間にホチキス留めは終わった。教室の窓際に寄って、戸締りが出来ていることを確認する。私は右から、悠仁は左から。ちょうど中間地点で、二人が出会う。私がわざとカーテンに包まって隠れたふりをする。すると悠仁が「なまえ〜どこ?」とわざとらしく探し始める。私は黙ってカーテンに隠れたまま、悠仁に見つけて貰うのを待った。圧倒的茶番なのに、悠仁はいつも付き合ってくれる。私はそんな悠仁が大好きだ。


「なまえ〜」
「ここだよ」
「みーつけた!」


カーテン越しに悠仁が私を抱きしめる。筋肉バカなのに、こういう時に私を抱きしめる腕は優しくて、大切にされてるんだなってことが間接的に伝わってくる。直接好きって悠仁はいつも行ってくれるけど、こうして間接的にも伝えてくれる。私はそんな悠仁が大好き。


「そろそろ出て来いよ〜」
「え〜」
「早くなまえの顔見たいんだけど!俺、なまえの笑ってる顔だーいすき!」
「私もだよ」


悠仁に未だにカーテン越しに抱きしめられながらも、カーテンから顔だけ外に出す。そこには、ふは!って大きな口を開けて笑う悠仁が居た。

ねぇ、悠仁、知ってた?
私ね、どんなに嫌なことがあっても、悠仁がそうして隣で笑ってくれたら、それだけで今日はいい日になっちゃうの。どんな嫌なことも全部吹き飛んじゃうの。だから、ずっと一緒に居てね。他の誰かのものに、なったりしないで。