「明日は来られないけどちゃんと勉強してね、宿儺」
「するか」
「宿題やっていかないとまた居残りになるよ」
「ならなまえが見張っていればよかろう」

悠仁がお昼にと用意してくれたサンドイッチを二人で食べながら、明日のことを宿儺と話す。宿儺と宿題を一緒にやりたいのは山々だけど、明日は友達に合コンに誘われたのだ。そういう場所に誘われたのは初めてだから、例えそれが人数合わせだったとしても嬉しい。


「どこに行くんだ」
「ご、……友達とカラオケ」
「偽りはお前のためにならんぞ」
「……嘘は言ってないもん」
「で、誰とどこに行くんだ?」
「友達と合コンでカラオケ」
「……アホか」


サンドイッチの残りの一口を口の中に放り込み、咀嚼しながら私を侮蔑の目で見る。同じように私も手にしていたサンドイッチを小さく食べた。バレてしまったらこうなると分かっていたから黙っていたし、行くなと言われることは目に見えていた。それでも、バレなければいいと思っていた。その反面、隠せるわけもないとも思っていた。


「行くなとは言わんが分かっているだろうな」
「わかんない」
「あーめんど。なら行くな」
「結局行くなって言ってるじゃん」
「行く理由は分からん」
「友達との付き合いとかあるでしょ?」
「そんなことで壊れる友情など不要だな」
「……宿儺にはわかんないよ」


思わず零れた正直な気持ちに宿儺はまた眉を顰める。そんな顔をさせたいわけじゃないのに。どうして私は上手にできないんだろう。会話をしながらもようやくサンドイッチを食べ終わり、お皿を持ってキッチンに向かう。お湯を沸かしてから皿を洗う。食後はカフェオレにしようというのは、サンドイッチを食べる前から決めていた。宿儺はいつもブラックだけど、今日はカフェオレをいれてみようか。食器を洗い終え、お湯が沸くのを待っていると宿儺もこちらへやってきた。まだ不機嫌さを表面に浮かべているから、思わず身構えてしまう。


「合コンに来る男がどんな男か分かっているのか」
「分かってるよ?」
「ヤりたいだけの男が来るのだぞ?本当に分かっているのか?」
「そんな人ばっかりじゃないかもしれないじゃん」
「甘ちゃんが」


基本的に私をバカにしている宿儺がまた私を罵倒するための言葉を吐き出す。こうなったら話は延々と平行線を辿ることになる。っていうか、最初からずっと平行線だったな。私と宿儺はお互い歩み寄ることを知らないから仕方ない。


「なにかあっても俺は助けんからな」
「別に助けてもらおうだなんて思ってないもん」

売り言葉に買い言葉。歩み寄れない私たちは交差できない。チッと舌打ちして、宿儺がキッチンから立ち去る。取り残された私は沸いたお湯と用意した二つのマグカップを前に、ため息を吐くしかなかった。