これが私たちのラブストーリー

「甚爾くん、お風呂入っちゃって〜」

食事を終え、わたしが食器を片付けていると途端に甚爾くんは気が抜けたようにゴロゴロしだす。洗い物をしながら、甚爾くんに声を掛けるけどどうにもこうにも動く様子はない。まぁそれも仕方ないか、と思ってしまう私はとことん甚爾くんに甘いのだと思う。

「冷蔵庫にビールあるよ」
「それ先に言えよ」
「お風呂上りにどうぞ〜って言うつもりだったの」

さっきまでの態度から一転、甚爾くんは体を起こして私のいるキッチンへと歩みよる。冷蔵庫に手を掛け、「なまえは?」と声をかけてくれる。「洗い物終わったら飲む!」と返事を返すが、「洗い物後にすればよくね?」と私の手はまだ泡だらけなのに水道を止めた。


「こういうのは先に終わらせておきたいの」
「俺はなまえと飲みてぇの」

片手で水道の蛇口を抑えながらも、私を後ろから抱きしめる甚爾さん。ぐりぐりと腰を押し付け、その逞しい腕に抱かれれば、もう私の選択肢は一つだけになってしまう。形だけ「甚爾さん、」と言葉を零してみるけれど、逆に「このままここでやっちまうか?」と煽られるだけだった。


「手の泡だけ落とさせて?」
「ほらよ」

水道の蛇口を押さえつけていた甚爾さんの手が離れて、私はようやく手の平の泡を落とすことを許された。が、煽った仕返しが私の身に降り注ぐ。ちゅ、と後ろから私のうなじに唇を落とした甚爾さんは、私が未だ手を動かせないのをいいことに、私の胸に手を置く。やわやわと胸を揉まれ、一番敏感な部分を探られる。頭では拒否したいのに、身体は簡単に甚爾さんを受け入れる。


「ッあン」
「早く手洗えよ、なまえ」
「ねぇ甚爾さん、待って」
「やだね」

私の否定の言葉は彼の行動に火を着けるだけ。私を弄ぶように、耳元に息を吹きかけたあと、耳の形を模るように舌が私の耳を這う。「わかったから、」と降伏宣言するけれど、甚爾さんの動きは止まらない。さわさわと腹部をまさぐって、服の中に手を入れたかと思うと、その手はそのまま上に上がっていき私の敏感な部分に触れる。


「甚爾さん、お願いだから手を洗わせて?」
「そんなん勝手にやれよ」
「だってぇ」
「んなことが俺を止める理由にはなんねぇよ」

どうやっても止まってくれそうにない甚爾さん。もうこうなったら、と泡だらけの手で甚爾さんの手を掴んだ。泡だけになったお互いの手。ようやく止まった甚爾さんはチッと舌打ちして、私の身体から手のひらを離した。


「なまえ、一緒に風呂はいろーぜ」
「あぁもう分かったから」
「そんな言い方はねぇんじゃねぇの?」


そう言った甚爾さんは私の返答が気に入らなかったらしく、私を肩に抱えてバスルームへと向かう。二人で入るにはちょっとせまいお風呂。ぴったりくっついて入ってギリギリなのになぁ。でももうこうなったら諦めるしかなさそう。そう思ってちょっとした仕返しに手のひらの泡を甚爾さんのTシャツに擦り付けた。

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