日曜日のこもりうた


昼下がりはどうにも眠くなる。平日でもそうなのだから、休日なら尚更だ。
今日は恵も私も任務も課題もなく、久しぶりにゆっくり過ごせるからと恵の部屋にお邪魔させてもらって二人でまったり過ごそうということになった。どこかに出かけようかという話も出たけれど、特別出かけたいところもなかったのでそれなら、と思い切って一日だらけて過ごそうと二人で決めた。
お昼ご飯はコンビニで適当にサラダとサンドイッチを買って食べた。一緒に購入したペットボトルの新作ドリンクは飲みかけのまま二人分並んでローテーブルの上に並んでいる。午後は私はローテーブルの前に座ってまったりゲームをし、恵はベッドに横になって文庫本を読んでいる。

ふいに、背中が重くなった。恵が肩に頭を乗せて、私に抱き着くような形で寄りかかってきたのだ。腰に回った腕に力は入っていない。抱きしめられるというより、寄りかかられているという状態。対戦式のゲームじゃなくてよかった。きっとアクションゲームだったら恵のこと邪魔って思っちゃいそうだから。


「…眠いの?」
「ん、ちょっと」
「それならベッドで横になったほうがいいよ」
「なまえが嫌じゃないならここがいい」
「いいの?」
「落ち着くから」

本当かなぁって疑いながらもまた私はゲームの世界に身を浸す。ロールプレイングゲームは止め時が分からない。ハマってしまうと最後まで終わらせたくなってしまう。

恵が背後にいることが気にならなくなって来た頃だった。恵が今度は私の背中にぐりぐりと顔を擦り付け始めた。どこかで見たなぁって考えて、思い出した。犬が甘えたいときにする行動だ。かわいい。今すぐ構い倒したくなるくらいかわいい。けど、ゲームもちょうど楽しいところだったので、恵にされるがままになりながらまだゲームを続けた。


「…なまえ」
「ん?」
「そろそろ俺のこと見て」


腰に回った腕にきゅ、と力が込められた。もうどうにも抗えなくて、ゲームをスリープ状態にしてローテーブルに伏せた。ついでにペットボトルを取ろうとしたけれど、あと少し届かない。


「恵、ペットボトル届かない」
「ん、」
「ちょっとだけ腕緩めて」
「やだ」


まるで子供みたいな返答に思わず笑い声が零れてしまう。「笑うなよ」と言った恵が、私の代わりに伸ばした手でペットボトルを取った。はい、と渡されて、それを飲む。私が飲み物を飲んでいる間に首筋に横からちゅ、と音を立てて恵が唇を寄せた。「笑った罰」と言っていたので、私が笑ったことが不服だったらしい。


「恵、前からぎゅってして欲しい」
「いーよ」

ようやく緩んだ腕の中から立ち上がると、「おいで」と恵が両腕を拡げる。吸い込まれるようにその腕の中に納まった。あったかくてホッとする。好きが溢れだしそうで困る。そんなことを考えていたら、指で私の前髪を掻き分けて額にキスが落とされた。くっついて、すぐ離れた。見上げると、恵と目が合って、今度は唇にキスが落とされた。今度は、すぐ離れてくれなかった。


リクエストありがとうございました!