適量の愛をください


*TABOOで「もしも宿儺と付き合っていたら」設定です。



「なんで呼び出されたか分かるよね?」

ある日、五条先生に悠仁とわたしが呼び出された。なんで呼び出されたか分からない悠仁はキョトンとして立ち尽くす。心当たりのありまくるわたしは、気まずくて二人と目が合わせられない。


「全然わかんないんだけど。なんで?!」
「見られちゃってんだよね、悠仁」
「どこで?誰に?!」
「夜中に女子寮居るところとなまえの部屋に入っていくところ」


二人の視線がわたしに降り注ぐ。五条悟もアイマスク越しに絶対見てるでしょ。そんなに見ないで、反省してるから。手に汗をかく。こんなに汗かくことあるかってくらい。特に悠仁には申し訳なくて、顔向けられない。悠仁に黙って宿儺と会ってたことがバレるなんて。


「悠仁は悪くないです」
「うん、じゃあなまえ説明して。宿儺の匂いさせてることもついでに説明して」
「……全部分かってるんでしょ」
「やだなぁ、全然知らないよ。宿儺と逢瀬重ねてるとか」
「どういうこと?」


一から全部説明しないと解放されないだろう雰囲気を察して説明する覚悟を決めた。実は宿儺と恋人同士であること(どうやって恋人同士になったかは割愛した)、悠仁が眠ったあとにその身体を宿儺が乗っ取ってわたしに会いに来てくれていたこと。


「呪いの王も人の子なんだねぇ」
「貴様バカにしているのか」
「やだなぁ、バカになんかしてないよ。怒ってるんだよ、僕は」
「見上げていい許可はしてないが?」

いつの間にか悠仁と入れ替わっていた宿儺が、五条悟とにらみ合う。アイマスクに手を掛けようとする五条悟の腕を掴んで、「やめて」と告げた。二人分、6つの目がわたしを見ていた。いや、悠仁の中の悠仁もきっと中から見てるだろうから、三人分?ややこしいなぁ。


「別になにも僕は別れろとか言ってるわけじゃないよ」
「じゃあ何だ」
「二度となまえのまえに現れるなって思ってる」
「馬鹿馬鹿しい。それをなまえが望んでいるとでも思っているのか」
「思ってようが思ってなかろうが関係ないよね。呪いの王と恋愛なんて許せるはずがない」


五条悟は座ったまま、わたしと宿儺は立ったまま冷戦状態が続く。手が出ないだけマシなのだろうか。この中で一番弱いわたしにはどうするのが最善なのかの判断ができない。こんな時に限って悠仁は宿儺と代わってくれないし。


「ならはっきり聞くよ。二人でなにしてたの?」
「契りを交わしていたに決まっているだろう?なんならなまえがどんな声でよがるのか教えてやろうか?」
「別に聞きたくないけど。僕のほうが絶対気持ちよくしてあげられるし」
「……五条悟とはしない」
「と言ってるが?」
「難攻不落を落としてこその楽しみがあるでしょ」
「落とせるものなら落としてみろ。なまえが貴様に靡くはずもない」
「うん、ないない」


結局話も進まないし、五条悟は何が言いたいか分からないし、宿儺も売り言葉に買い言葉で喧嘩買う気満々だし、で、わたしはこの場に居ることが本当に居た堪れない。なので、「結局、五条悟はどうしたいの?」と本音を漏らしてしまう。


「どうしていって、こうしたいよね」

そう言って立っているわたしの腕を急に引っ張るから、よろけて座っている五条悟の上に座ってしまう。そのままわたしを後ろから抱きしめて、宿儺に向かって「これ僕のだから」とにっこりと微笑んだ。恐る恐る宿儺の顔を見れば、眉間に皺が寄っていて、明らかに不機嫌を呈している。あぁ早くここから逃げたい。

結局その後、30分。わたしは二人に引っ張り合いをされた。笑い話になるんだろうか。最終的に悠仁が宿儺と入れ替わることによって、話が終わった。結論は出ていないし、結局、宿儺は今夜もわたしの元に来るだろう。ただ、いつもと違うのは、五条悟まで「今夜は僕もなまえの部屋に行くね」と言っていたこと。悠仁に「先生、夜に生徒の部屋に行くのはダメだろ」って窘められてたからちょっとざまあみろ、って思ったけどね。