dolch


テレビの有料放送で見たかった映画がやるから一緒に見ようと、言ったのはなまえの方からだった。なのに、半分くらい見たところで「眠くなってきちゃった」となまえは俺の肩に寄りかかる。幸せの重みと言うには軽すぎるなまえを、自分の膝の上に招き入れる。


「寝るならベッドにしなよ」
「ここがいい。一人のベッド冷たい」
「ここで寝ても俺は運ばないよ」
「ん〜〜」

完全になまえが寝てしまわないようにツンツンと頬をつつく。画面の中の映画はすべてを知った主人公が動き出しそうという一番面白くなるタイミング。今、ベッドに運ぶのも自分が寝るのもタイミングが悪すぎる。けど、こうなったなまえはなかなか言うことを聞いてくれない。
いくつもの選択肢の中から一番ベターであると思う選択肢を選んだ。ソファの背もたれに畳んで置いてあったブランケットを引っ掴んで、適当になまえの上に掛ける。適当にかけすぎて、足に届いてなかったブランケットをもぞもぞ動いて足のほうまで運ぶ。起き上がればいいのにそれすらめんどいのかよ。


「悟は眠くないの?」
「映画見たいし」
「ふーん」
「なまえは寝てていいよ」
「ねぇ、悟」
「なーに?」
「好きだよ」

へらりと笑ってなまえはまたブランケットに包まってテレビの方に顔を向ける。なんだよ、すげぇかわいいじゃん。そう思って膝の上に置かれた頭をそっと撫でる。しばらくして「悟の手気持ちいいね」とこちらを見て手を伸ばすなまえ。少しだけ前かがみになると、首に手を回して来たからそのまま身体を抱き起こして抱きしめた。


「眠いんじゃなかったの?」
「それは建前」
「本音は?」
「悟に抱いて欲しいなぁって」

そう言うと顔を隠すように俺の胸に頭をぐりぐり押し付けてくる。「馬鹿だねぇ、なまえ」とまんざらでもない返事をして、腰を抱えて俺の上になまえを跨らせる。「重くない?」「ぜーんぜん」そんなやり取りもまどろっこしい。テレビを消して、首に回されていた手を解いた。そのまま指先、手のひら、手首と順序だてて口付ける。じれったそうに俺を見つめるなまえ。どうして欲しいのかなんて分かってるけど、もっと情熱的に誘って欲しくてもったいぶりながら、指先を絡めて手を繋いだ。

「ねぇちゅーは?」

しびれを切らしたなまえが自分からキスを強請る。「ちゅーして欲しいの?」なんて余裕な表情しながら、内心はなまえをめちゃくちゃに抱くことでいっぱいだった。「ベッドでいっぱいちゅーして?」と照れながら言うなまえ。降参、今日は俺の負け。なまえをお姫様だっこして、ベッドルームの扉を開いた。